東南アジア駐在員報告
2017年2月 経済 駐在員 : 芦澤裕之
狭い国土いっぱいに都市開発が進むシンガポールは、農地面積が小さく、食料供給の大半を輸入に依存しているが、鶏卵の自給率は約26%と比較的高く、政府は30%への自給率向上を目標としている。
このような状況にあっても、約3年前に私がシンガポールに着任した際には、生食用卵はシンガポール産やマレーシア産にはなく、卵かけごはんやすき焼きを食べる際には、日本からの輸入品に頼るしかない状況だった。日本産卵の価格は日本国内と比べて3〜4倍もするため、我が家ではしばらく卵の生食から遠ざかっていたが、最近、シンガポール産の生食たまご(正確には低温殺菌卵)が広く出回るようになり、大好物の卵かけごはんを朝食に食べられるようになった。
この卵を生産しているのは、シンガポールに3つある鶏卵農場の1つである。12月下旬に機会があって農場見学をさせていただいたが、機械化された清潔な農場で、50万羽のニワトリを飼育し、1日40万個の卵が生産されていた。生食用卵は、日本人好みの黄身の色となるよう餌の配合がされているが、販売先は日系スーパーだけでなく、ローカルの大手スーパーやレストランなどにも広がっているとのことであった。
JETROの調べによれば、シンガポールの日本料理店は2016年1月時点で1,400店余りあるとされており、日本食を楽しむ裾野は着実に広がってきている。こうした状況は輸出拡大を目指す日本食品にとっては追い風であるが、一方で今回の鶏卵のように、現地産の安価な代替食品が出てくるケースもある。輸送にかかるコストアップ分に見合う付加価値を提供できるか否かが、今後の県産食品の輸出拡大のテーマとなるだろう。
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