東南アジア駐在員報告
2014年10月 社会・時事 駐在員 : 吉住理恵子
最近、シンガポールの土産物の定番として、特に女性に人気があるのが、TWGの紅茶だ。シンガポール航空の機内や高級ホテルのリフレッシュメントのコーナーでも見かけるようになり、シンガポール発の紅茶ブランドとして定着してきた観がある。
TWGティーは、スパ等を経営するザ・ウェルネス・グループ(=TWG)の経営者の一人が、フランスの高級紅茶ブランドにヒントを得て、2008年に事業を始めた同社の紅茶部門である。貿易立国であるシンガポールの地の利を生かし、世界中から茶葉を取り寄せて自社独自のブレンドを行い、店頭には100種類以上のアイテムが並ぶ。
ダージリンやアールグレイなどの定番的な紅茶や、中国の白茶、日本の緑茶などシンプルな茶葉も豊富だが、主力は華やかなフルーツや花の香りをつけたフレーバーティで、Weekend in Hong Kong, Weekend in Istanbulなど、世界各地の香りのイメージで調製されたWeekendシリーズをはじめ、Eternal Summerや、Silver Moonなど、想像力を刺激するネーミングも秀逸だ。季節ごとのコレクションも展開され、例えば9月に開催されたF1シンガポールGPの時期にはスポーツカーのイラストのラベルが付いたRace Day tea(50グラム缶×3種入約5,000円など)が2週間の期間限定で販売されていた。
リーフティーはブランドロゴやオリエンタリズム漂うイラストのついた缶に入れて売られており、ティーバックはコットン100%で高級感を損なわない。5ヶ国語併記のリーフレットが同梱され、アイスティー用のティーバックの紐は、ティーポットよりも背が高い冷茶ポットに合わせて長さが長くなっているなど、気が利いた心配りもある。飲むと味も香りもそれなりによく、見た目の発色も美しい。
歴史の浅いTWGが、数多の老舗ブランドがある世界の紅茶市場で、短期間のうちに東南アジア発のトップブランドとなったのは、まちがいなく、その見事なブランディング戦略によるものだろう。
実際には何の関係もない紅茶の老舗ブランドとの関連を想起させるラベルデザインやブランド名、創業年だと消費者の誤認を招きかねない「1837(=シンガポールで紅茶貿易が公に始まった年)」の年号を入れたラベルデザインなど、あざとさを感じる部分がなくはないが、東南アジアを始めとする世界を対象とした市場展開にあたり、学ぶべき点が多々あることも事実だ。
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