韓国駐在員報告



2024年7月 行政
駐在員 : 高橋 誠


静岡県は日本国内でも県民一人当たりのごみ排出量が少ないが、日本自体は世界的にみてリサイクル率が低いと言われている。その大きな要因の一つが、生ごみの処理である。日本では家庭から出る生ごみのリサイクル率は6%程度であるが、ここ韓国は、何と97%になる。この差はどこから生じるのだろうか。韓国の集合住宅の場合、通常、1階などにゴミ捨て場が設置されており、主に「一般ごみ」「生(飲食物)ごみ」「資源(再活用)ごみ」に分けられている。「一般ごみ」は日本のように「燃えるか燃えないか」でなく、いわば「再活用できないゴミ」の事を指し、区や市ごとに指定された従量制ごみ袋を買って、それに入れて捨てる。資源ごみは、透明のペットボトル、色付きのペットボトル、発泡スチロール、段ボールや紙ごみ、瓶、缶などに細かく分類して捨てる。多少の違いはあるがここまでは日本と似ているともいえる。しかし、「生ごみ」だけは大きく異なる。
「生ごみ」は、2013年から重量に応じて各家庭が負担する従量制の課金制度になった。生ごみを捨てる際には、個人ID(住民登録番号や外国人登録番号。日本でいうマイナンバー)と結びつけられた専用の「飲食物ごみ(生ごみ)従量制カード」が必要となる。このカードはマンションの管理室などで購入できるが、購入に際しては全国共通のRFID(飲食物ごみ管理システム)ウェブサイトで世帯ごとに登録する必要がある。登録に際しては、氏名、携帯電話番号、Eメールアドレスなどの個人情報を入力する必要があり、韓国では携帯電話番号が個人ID(住民登録番号や外国人登録番号。日本でいうマイナンバー)と原則結び付けられているため、これにより捨てた人が特定される。こうして登録されたカードを生ごみ専用のRFID機器にタッチすると自動でゴミ箱の蓋が開きそこに生ごみを捨てるのだ。
閉じるボタンを押すと生ゴミの重量が計測され、課金額が算出される。1kgあたりの金額は自治体ごとに異なり、例えば仁川市延寿区は63ウォン、ソウル市永登浦区は130ウォンだ。算出された生ゴミの課金額は後で他の共益費とともに管理費としてマンションから請求されるという仕組みだ。従量制のため、なるべく生ごみを減らそうというきっかけにもなっている。
こうして集められた生ごみは飼料や堆肥として再活用されているという。
ここまで書くと、完璧な仕組みに見える。実際私もそのように最初は思っていたが、現実はそう簡単ではないようだ。韓国の生ごみは飼料とするため貝殻、たまねぎやにんにく等の皮、肉や魚の骨、野菜の根などは入れてはならない。収集された生ごみは資源化施設に運ばれ、不純物を取り除き、高温殺菌や乾燥、粉砕の過程まで経て粉状のリサイクル飼料になる。しかし、これをえさにして育った豚の豚肉には、食べ物のかすのにおいなどがしみ込んでしまう場合もあるようで、価格が落ちてしまう。このため、リサイクル飼料を買って育てようという農家は4%程度で、あとは無料で配布されている。堆肥にしても、耕作面積の減少で十分な利用が期待できないし、バイオガス燃料としての活用もまだ施設不足などで難しいという。
まだまだ課題は多いが、この仕組み、日本政府や自治体・企業等が研究する価値は十分にありそうな気がする。韓国でも新しい技術やアイディアが生まれる余地がありそうだ。

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