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台湾駐在員報告
2014年2月 行政 駐在員 : 宮崎悌三
台湾は、別名『フォルモサ』とも言われ、16世紀半ばに台湾沖を航海したポルトガル船の乗組員が、島の美しさに感動して発したポルトガル語が元になっているとされている。
今、美しい島の現実を突きつけるドキュメンタリー映画『看見台湾』(空から見た台湾)が、話題となっている。内容は、台湾を空から撮影しただけの90分の映画であるが、封切されてから1月半の間に、1億6千万元(約5億6千万円)を売上げ、60万人の観客を動員した。ドキュメンタリー映画としては異例の記録である。
この映画は、台湾の映画祭で記録映画部門の金賞に輝き、台湾政府の高官を始め有識者などから、この映画に対する様々なコメントが発せられ、反響は瞬く間に台湾内に広がり、政府機関や学校での上映を推薦される映画となった。
500年前のポルトガル船の乗組員が感動した美しい山河や海岸の一部は今も残され、働き者の農家の方々が丹精を込めて育てている農作物が整然と並ぶ田畑が広がっている一方、山間部や河川の無秩序な開発、風水害で大きく崩れた山の斜面、どす黒い河川やコンクリートに固められた海岸など、失われていく豊かな自然が、映像としてありのまま切り取られている。痛めつけられた台湾の自然を目にし、涙を流す観客は多いという。
台湾政府や地方政府は、この映画で喚起された環境保護に対する世論の盛り上がりを背景に、世界的なIT関連ハイテク企業が持つ2つの工場に関して、工場排水を不法に河川に垂れ流していたとして、操業停止を命令したほか、無許可で山間部を開発していた民宿経営者を摘発するなど、環境を破壊している悪質な企業の取り締まりに動き出した。
さらに、新北市政府では、環境への取組みを情報公開するなどし、環境に配慮している企業に対する投資優遇策を打ち出したほか、入札資格項目に、環境に関する取り組みを必須とするなどの施策を講じることとしている。
一方、この映画の監督である齊柏林氏は、「台湾のありのまま姿を誰もが見られる映画という形で伝えたことを評価していただけたことに喜んでいるが、台湾が直面している問題は、他の誰かではなく、誰もに責任があるということを伝えたかった」と話している。
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