中国駐在員報告
2015年4月 社会・時事 駐在員 : 野村芳一
2月の春節、3月中旬以降の花見のシーズンの中国人観光客の多さが話題になっている。JNTO(日本政府観光局)の調査では、2014年の1月、2月の訪日観光客の合計数は前年同期のほぼ2倍、2015年は2014年のほぼ2倍というように倍々ゲームとなっている。驚くべき増加率である。
また、2月だけを見ても前年同月比159.8%増の359,100人で、中国市場として初めて30万人を突破するとともに、1月の韓国市場(358,100人)を上回り、全市場を通じた月間過去最高の記録を更新したという。
これらの結果を裏付けるように、中国の旅行社をヒアリングしてみると、商売繁盛で猫の手も借りたいといったところであった春節前の忙しさが、いまなお続いているようだ。特に宿泊施設とバスの確保に苦労をしているという。この様子では、例年少し数字の落ちる5月、6月も、送客数は高水準を維持する可能性が高く、そのまま7月の繁忙期に突入するかもしれない。
このような状況がいつまで続くかについて、疑問を持つ意見があることも事実である。しかし、私は中国の現地にいる駐在員として、中国経済の成長率が7%程度の成長率が継続する限り、極めて楽観的に見ている。
その理由の第一は、中国の市場が確実に広がっているということである。特に内陸部の市場は、まだこれからだ。先日、江西省(浙江省の南西部、広東省の北部に位置する)の国内旅行を主要商品とする国有系有力旅行社を訪問した際には、今年から日本へ送客を本格的に始めることとなり、周辺地域から1万人送るのが目標だ、という話を聞いた。既に日本への送客実績がある旅行社の社長は、静岡へのチャーター便を企画しているという。また、湖北省、四川省の複数の旅行社は、日本への団体用航空券が足りないと嘆いていた。4月以降、中国の航空会社が日本への新路線を次々に開設する予定であることも、それが背景にあるものと思う。
理由の第二は、これは訪日外国人旅行者全般に言えることだが、日本を一度訪れた観光客は、日本の観光地としての魅力に触れて、再度訪れてみたいと思う人が多いことだ。国土交通省が昨年行った日本を出国する外国人へのアンケート調査によると、日本を訪問した中国人の54.6%がまた必ず来たいと答えているという。実際に我々が旅行社に話を聞いてみても、日本を始めて訪れた中国人がリピーターになる確率は、非常に高いという。年に何回も日本を訪れる人もいるそうだ。
はじめに団体ツアーに参加した人は、ツアーに飽き足らなくなると個人旅行に移行していく。上海総領事館によれば、今年1月に日本が中国人個人観光客に対するビザ発給要件を緩和して以降、訪日客が激増。1月だけで個人旅行客へのビザ発給数は5万7473件と、前年同月の3倍に上ったという。
これまで富士山静岡空港を利用する中国人の旅行客は団体旅行客が中心であったが、個人旅行客も増えている。実際に、富士山静岡空港から静岡駅行きのバスに日本に慣れていない様子の中国人が乗っていたり、富士山静岡空港から島田駅行きのバスが、個人旅行客の乗客が多く、全員が乗り切れないというようなこれまでになかった事態も起きている。今後も中国人の個人旅行が増えていくと思われ、受け入れ側としても、適切な対応が必要となってくるだろう。
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