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中国駐在員報告
2013年4月 政治 駐在員 : 野村芳一
中華人民共和国第12期全国人民代表大会第1回会議が3月5日から17日までの13日間にわたり開催され、胡錦濤国家主席の後任に習近平共産党総書記、温家宝首相の後任に李克強副首相を選出し、中国の新体制がスタートした。全国人民代表大会は、憲法において中国の最高権力機関であり、立法府として位置づけられている。
習近平総書記は、陝西省出身、59歳、父は元副首相、精華大学化学工程学部卒、福建省・浙江省・上海市のトップを歴任。
李克強首相は、安徽省出身、57歳、共産主義青年団(共青団)出身、北京大学経済学博士課程修了、共青団第一書記、河南省トップを歴任。
習主席は就任演説で、「中華民族の偉大な復興」である「中国の夢」実現に向けて、「国家の富強、民族の復興、人民の幸福」を達成する必要性を強調した。
さらに、「われわれの人民共和国は今日、世界の東方に高くそびえ立っている」として建国から60年以上にわたる成果を誇る一方、「(国民が)心を一つに力を合わせる『興国の魂』『強国の魂』」の重要性を指摘。「愛国主義は、中華民族を固く団結させる精神的な力だ」と述べ、愛国主義を鼓舞した。
また、李克強首相が大会終了後に行った記者会見での発言の要旨については、以下のとおりである。
1 内政
(1)第一に経済の持続的発展。平均7%の成長。第二は民生の改善、第三は社会公正の促進。収入分配制度や社会保障制度の改革。
(2)大気汚染問題解決に対する強い決意と具体的行動。
(3)都市化の推進。バラック1000万戸以上の改造。農業の現代化。
(4)新たな政府系建造物建設禁止。人員削減、公費による接待・海外出張、車購入の経費削減。
(5)政府の許認可1700件余を3分の1以上削減。
(6)労働矯正制度の改革、年内に方針。(労働矯正制度とは、公安当局が裁判など司法手続きを経ずに矯正を目的に容疑者を拘束し、最長で4年間、強制労働させる行政処罰。内外から「中国人権侵害の象徴」と批判されている。)
2 外交
(1)アジア太平洋地域で米国と新しいタイプの大国関係を構築。
(2)中ロ両国の実務協力や地域・国際問題での協調。
(3)平和的な発展の継続。国家主権と領土の防衛。発展途上の大国として応分の国際義務を負う。世界の平和と繁栄のため、各国とともに努力。
全体的に特に新味もなく、前政権の政策の継続性を確認している点が多いようである。貧富の格差拡大や環境問題の深刻化で政府に対する国民の不満が増大している中で、これまでできなかった既得権にどれだけ切り込んでいけるかが、習体制の本気度を測る物差しになるのではないだろうか。そのような意味で現在行われている公費での接待の節約がいつまで続くのか気になるところである。地方政府の現場では、そのうちすぐ、元通りになるというような期待もあるようだ
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