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東南アジア駐在員報告
2002年8月 社会・時事 駐在員 : 岩城 徹雄
・ニュー・ウォーターの味はいかが
シンガポールとマレーシア両国間の懸案問題で、マレーシアからの水の購入価格についての交渉はシンガポールにとって厄介な問題の一つである。現在の供給協定は1961年と62年に締結され、前者は50年後の2011年、後者は100年後の2061年に失効する。現在シンガポールが1,000ガロン(3,785リットル)あたり0.014シンガポールドル(約1円)で購入しているが、マレーシアからはこれを07年までに20倍の0.28シンガポールセント(約20円)、さらに07年以降は3リンギ(約90円)に値上げしたいという提案がなされた。
シンガポールはこの提案を受け入れていないが、国内ではこの水価格問題に歩調を合わせるかのように、「ニューウォーター」とよばれる再生水のニュースが盛んに報じられている。この水は生活排水を浄化し紫外線処理などを行って飲むこともできるようにしたもの。テレビのニュースでは、ゴー・チョクトン首相自らテニスを楽しんだ後、流れる汗を拭きもせずこのニューウォーターを飲み、WTOの基準を上回る安全な水とPRに努めた様子が流された。8月9日の建国記念日(祝日)恒例のパレードには、国立競技場への来場者に無料で配られるほか、この日以外にも国内のショッピングセンターなどで試飲用のペットボトルが配られるという。残念ながら筆者はまだニューウォーターを試す機会に恵まれていない。報道では通常の水のほうが甘いという意見や、変わらないという意見など様々なようである。
当面、実際には飲用に供さず、来年1月から半導体のウェハー洗浄用として工場に供給される予定であるが、シンガポール政府首脳は、水の輸入価格はこのニューウォーターの生産価格を参考に決めるべきとか、将来的にはニューウォーターの生産でマレーシアからの輸入分を代替できるとか、強気の発言でマレーシア側を牽制している。
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