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東南アジア駐在員報告
2010年12月 経済 駐在員 : 長谷川卓
【シンガポール】
11月18日、通産省の発表によると、2010年第3四半期の実質GDP成長率(対前年同期比)(以下、本原稿において「成長率」と記す。)は、10.6%増となり、第1四半期16.9%増、過去最高を記録した第2四半期19.5%増から伸びが鈍化した。「最近の世界景気の先行き不透明感を反映するとともに、昨年下期から今年上期にかけての金融危機後の不景気の反動が一巡して、本来の成長率に戻ってきたため」と専門家は分析する。
建設業は、国内の大型プロジェクトがほぼ完了したことからやや縮小。ホテル・飲食サービス業や娯楽産業を含むその他のサービス業は好調に推移。カジノ総合リゾートが好調だったことが背景にあると見られる。
2010年の通年の成長率予測を15%増とする一方、2011年の成長率は4〜6%にとどまると予測。債務危機再燃によるユーロ安の進展で対欧州貿易の鈍化が懸念され、経済成長は緩やかなものになると見ている。
【タイ】
11月22日、国家経済開発委員会(NESDB)発表によると、2010年第3四半期の成長率は6.7%増となり、第1四半期12.0%増、第2四半期9.2%増から減速した。国内外の需要減が要因とみられる。
また、好調な観光業と例年製造業が年末にかけて伸びることから、2010年通年の成長率予測は7.9%増とした。一方、2011年の通年成長率は3.5%〜4.5%増と低めの予測だが、世界経済の減速、バーツ高による輸出減少が主因とされている。
【マレーシア】
11月22日、中央銀行発表によると、2010年第3四半期の成長率は5.3%増と市場予想をやや下回り、アジア全般と同じく成長鈍化傾向を示した。
記者発表を行った同行総裁は、「外的需要の状況から判断して、今年下半期及び2011年第1四半期の成長は減速するとみているが、内需(輸出)によって成長は依然として力強く、2011年下半期に再び上向くだろう。」と述べた。
【インドネシア】
11月5日、中央統計局の発表によると、2010年第3四半期の成長率は5.8%増と、予想に反して前期に比べ伸びが鈍化した。しかしながら、専門家は「インドネシアは内需主導の経済であり、国内のファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)は底堅い。」と指摘しており、2010年通年の成長率は6%増に達すると予測している。
また、ジャカルタ・ジャパン・クラブ(JJC)が行ったインドネシア展開日系企業の2010年下期の業況見通し調査でも、多くの日系企業が所得水準の上昇に伴う民間消費の堅調が続くと予想しており、多くの業種が業況の上向きや好況の持続を期待している。
【ベトナム】
統計総局の発表によると、2010年第3四半期の成長率は7.16%増となり、第1四半期5.83%増、第2四半期の6.4%増を上回り、順調な伸びを示している。
政府は、2010年通年の成長率の目標値を、年初の6.5%から8月末現在、6.7%に引き上げた。また、2011年の経済運営について、マクロ経済のさらなる安定に努めることでさらに高い経済成長を目指す方針を示し、成長率の目標値を7.5%とした。
【フィリピン】
8月26日、政府は2010年第2四半期の成長率を7.9%増と発表した。エルニーニョの影響を受けて、農林水産業は低水準だったが、工業20.2%増、サービス業10.8%増と好調だったことが要因となっている。
11月20日、中央銀行の発表によれば、企業の景況感を判断する業況判断指数(ビジネス信頼感指数、CI)が、調査を開始した2001年以降で最も高い数値50.6を記録した。在外フィリピン人労働者からの送金が堅調に増加していること、海外からの資本流入が活発であること、クリスマス期の支出増などが要因と考えられる。
9月28日、アジア開発銀行は、2010年通年の成長率を5.0%増と予測している。
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