中国駐在員報告



2007年2月 社会・時事
駐在員 : 小杉 長生


    3年前、中国に赴任するに当たり、勧められた予防接種は4種類、A型肝炎、B型肝炎、破傷風及び狂犬病であった。私は狂犬病を除く3つの予防接種を行った。第1の理由は、狂犬病は犬に気をつければいい、第2の理由は、中国の生活レベルは低いので、そもそも飼犬は少ないだろうと思ったからである。
    上海に赴任して驚いたことに、日本と同じように、夕方ペットを連れて散歩している人が多数いる。また、宿舎の近くにはペットショップもいくつかあることがわかった。これならば、狂犬病があっても不思議はないと思った。
    昨年12月、日本に一時帰国した際、テレビ報道でフィリピンから帰国した2人の日本人が狂犬病にかかったことを知り、上海に戻った後、中国の狂犬病について少し調べてみた。
    中国衛生部の発表によると、2005年の中国における感染症による死者数の1位は結核、2位は狂犬病、3位はHIVで、狂犬病の死亡者数は2,545人で、全死亡者の19%を占めている。

    2002年からの死者数の推移
    2002年
    2003年
    2004年
    2005年
    1位
    狂犬病1,159人
    狂犬病1,980人
    狂犬病2,651人
    肺結核6,713人
    2位
    肺結核1,073人
    肺結核1,106人
    肺結核1,435人
    狂犬病2,545人
    3位
    肝炎 1,051人
    肝炎 1,063人
    肝炎 1,059人
    HIV 1,316人
    (出典 中国衛生部)


      ※2005年の肺結核死者数の急増は、耐抗生菌が原因ではないかと日系医療会社では推測している。
      
    中国の法定感染症による死亡率は、高い順に狂犬病100%、ヒト高病原性鳥インフルエンザ71.43%、ペスト30%、HIV23.41%、新生児破傷風11.08%である。
    狂犬病死者数の増加理由は、

    1. 農村部の番犬、都市部のペット犬の増加
    2. 犬の予防接種を受けるために必要な養犬証等の費用が2,000元と高価のため、予防接種を行っていない。
    3. 狂犬病の死亡率の高さの認知度が低いため、人間への予防接種や咬まれた後の処置(抗血清剤の投与)がされていない。

    狂犬病の対策として、中国政府は2006年10月「狂犬病暴露後処置工作規範(試行)」を定め、動物に噛まれた時の処置原則を定めた。
    処置内容は、次のとおり。

    レベル1:動物に舐められたり、擦り寄られた程度の接触なら、特に処置の必要はない。
    レベル2:出血がない程度に噛まれ、引っ掻き傷などがある場合は、傷口を洗った後に、狂犬病の予防接種を受ける。
    レベル3:傷口を動物によって舐められ、動物の体液によって汚染された場合は、狂犬病の予防接種のほかに、抗血清剤の投与
    を行う。

    また、2006年12月、国家薬監局から緊急通知が出された。その内容は「各地域は2006年12月7日から2007年6月末日までに、狂犬病ワクチンの整備をし、7月末日までにその結果を国家薬監局と中国衛生部に報告する。」ことである。

    日付別一覧 地域別一覧 分野別一覧

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