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中国駐在員報告

2014年8月 経済
駐在員 : 野村芳一


5月28日から天津航空による静岡天津間のチャーター便が月・火・水・金・土の週5便運航している。中国からの観光客だけを対象とするインバウンドチャーターではあるが、搭乗率も平均90%以上を確保しており、大変に好調である。静岡空港の免税店では、天津便の運航日には、これまでにない混雑ぶりで、売り上げも大きく伸びているという。天津航空は、現在、この路線の定期便化への準備を進めているが、当面はインバウンドが中心になると予想される。

 今回の天津航空の運行については、いくつかの背景があると思う。最大のものは、中国からの訪日観光客の絶対数が伸びているということだ。日本政府観光局の報告によると、今年6月の中国からの訪日観光客数は、前年同月日76.7%増、1月から6月の合計数は、昨年同期比で88.2%も増加している。昨年夏からの増加傾向がずっと続いており、中国の旅行社によると来年はさらに増えることが予想されるという。これは、中国人の海外渡航先が台湾、韓国、東南アジアから日本に移りつつあること、また、日本の良さを実際に体験した方が再度訪日する、いわゆるリピーターの増加が見込まれるためである。

 このような大きな潮流はあるものの、中国からの航空便に対する首都圏の空港の受け入れは、限界がある。また、政治的側面から中国の三大国営航空会社(中国国際航空、中国南方航空、中国東方航空)が日本への新規路線を増加させる行動はとりにくい状況にもある。さらに中国政府は、民間企業がより活動しやすい環境づくりに努めており、特に航空業界については、LCC(格安航空会社)を育てていこうという姿勢をはっきり打ち出している。実際のところ、最近、日本への新規路線の運行を始めた中国の航空会社は、春秋航空、吉祥航空という民間航空会社である。また、天津航空は、中国第四位の航空会社で民間企業の海南航空のグループ会社である。

 一方、日本と中国を結ぶ航空路線は、依然上海線が中心である。航空時刻表を見てみると上海(浦東、虹橋)と成田・羽田を結ぶデイリー便は16便あるのに対して、北京と成田・羽田を結ぶデイリー便は、10便に過ぎない。同様に、上海(浦東)‐関空は14便に対して、北京‐関空はわずか3便しかない。このほか上海浦東空港は、静岡空港を含む12の地方空港との路線を有している。上海は中国の経済の中心、海外との交流窓口として発展してきたが、路線網としては随分偏っている。

 ある航空会社によると、中国の航空会社にとって、利益を大きく見込めるのは、上海‐北京線と日本線だという。距離だけを見てみると、上海から長崎の距離は、上海から武漢の距離とほとんど変わらない。1時間半位で移動できる。因みに天津−静岡の距離は、天津−深圳の距離と同じ位である。「中国は広い」と同時に「日本と中国は近い」と思うのは、私だけではないだろう。

 中国国内の交通事情もこれまでとは大きく変わりつつある。鉄道網が発展して、主要な都市間は高速鉄道で結ばれてきている。高速鉄道を使った方が、航空機よりも、移動時間が計算でき(中国の航空機がよく遅れることは、知られている)、料金も安いケースが出てきている。航空会社は、高速鉄道との競合する国内線より、国際線に重点を移していることは十分予想できる。

 以上が静岡天津便就航の背景だが、その他に重要なことがある。今回の静岡天津便を利用する旅行商品を造成し、旅行者の集客をしているのは、実は北京の旅行会社である。チャーター便に乗って静岡空港に降り立つ人々もほとんどが北京からの観光客である。
現在、天津空港で建設中の第2ターミナルビルは、8月末に完成し、地下鉄2号線が乗り入れる計画である。この地下鉄と北京〜天津高速鉄道との乗り継ぎで、北京南駅から天津空港までの所要時間は約1時間になるという。また、北京南駅には、天津空港用の旅客ターミナルが5月に完成し、そこで航空券の購入やチェックインが可能となっている。

 2013年の北京空港の旅客数は延べ8371万2000人で、ほぼ飽和状態となっている。同年に天津空港を使った北京の旅客は、延べ45万人だったが、今年、北京〜天津の旅客の流れを円滑にすることで、北京空港を利用すると想定される旅客のうち、約140万人が天津空港に流れるとの見通しである。北京空港の飽和状態を緩和するため、天津空港の利用拡大を図っているのである。

 このようなことから、静岡天津便は実質的には、静岡北京便と言ってもよい。今後、中国政府により、北京、天津、河北省が首都圏として一体的に開発される計画があることから、本県と中国首都圏との様々な交流の拡大が期待されるのである。


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