中国駐在員報告

2001年6月　政治
駐在員：外山敬三

・2001年アジア太平洋経済協力会議（ＡＰＥＣ）開催に向けた準備状況
上海では、10月のAPECの非公式首脳会議に先駆けて開催される「第１回貿易担当大臣会議（６月６日～７日）」に向け、その準備作業に追われている。
今回のAPECは「新世紀、新挑戦」のスローガンのもと、中国の改革開放と経済発展の成果を世界に向けてアピールする絶好の機会と位置付け、国をあげて取り組んでいる。
上海を会場として選択したのは、上海は太平洋に面した国際的な港町であるとともに中国の経済・金融の中心であり、中国の改革開放や経済成長の度合いを海外にピーアールするのに最も適しているとの判断からである。
開催に向けての準備状況は以下のとおりである。
　○ 会議場等の建設
・メーン会場となる「上海科学技術館」の建設及び市内環境改善、道路の改修、緑化の推進、ビルのライトアップ等関連施設整備に80億人民元を投資し、ほぼ計画どおり目標を達成している。
・「上海科学技術館」は敷地面積68,000㎡、総工費15億人民元をかけて建設され、この建物の主題は「自然、人、科学技術」で、「天地」「生命」「知恵」「創造」「未来」の5つの主要展示館等で構成されている。
○急ピッチに進む道路改修等
・ 5月末完成に向け市内182本の道路の改修を行っている。そのうち23本は大規模改修で改修面積は24万平方メートルに及ぶ。毎日朝4時頃から突貫工事で改修を行っており、大規模改修の場合は道路を全面閉鎖して行っている。
・主要道路に面した建物は壁の塗り替えや、平らな屋根を三角の屋根に付け替え、景観を良くしている。またしゃれた公衆トイレを随所に作っている。
・会場周辺の密集した人家は立ち退かせて、外環状線沿いに建設しているアパートに転居させ、跡地を緑地に変更している。
　○ タクシー会社の準備状況
・上海市内大手4社のタクシー会社はAPECに備えて、ベンツやキャデラック等の高級車を含め、2,000台の新車を導入した。
・運転手に最低100の英語の会話ができるよう教育訓練を実施しているほか、質の高いサービスや安全運転に関するマニュアルを作成し、サービス向上に努めている。
　○ 上海市内操車場の全面改修
・市内主要路線上に点在する57箇所の公共バス操車場は様式や機能が統一されておらず、また長年修理されることもなく錆が出て、景観上あまり良くなかった。
・ APEC開催に向けて、上海市公共交通旅客運送管理局で調査研究を行い、また各方面の意見を聞いて全面的に改修することとした。
・新しい操車場は、カラーの鋼板で作られ、屋根は青色で両側の壁は白く、窓も八の字型で、周辺の景観に馴染むように大・中・小の3種類の規格で設計されている。
　○ 外国語サービスホットラインの開設
・海外からのお客に、外国語で生活・観光サービスを提供するホットラインを4月7日に開設した。
・このサービスは、食事、買物、ホテル、娯楽施設等で言葉の問題でトラブルとなった時、携帯電話で191を呼び出すと、英語または日本語で応対してくれる仕組みになっている。
・ 191対応の携帯電話は空港や一部ホテルで借りることができ、レンタル料は通話料を除いて1日100元（1,500円）である。
○ボランティアの養成
・ APEC開催に向けボランティア1万人を養成する予定である。
・まず指導者として、海外経験や国際交流活動経験のあるボランティア400人を養成し、その指導者を中心に、残りのボランティアを養成している。
　　　○その他
・「APECを歓迎し、礼儀正しい市民になろう、サービス業会に新風を巻き起こそう、大都市としての風格をかもしだそう」という市文明委員会の呼びかけに応え、上海市内は歓迎ムードが盛り上がっている。
・地区によってはAPECハンドブックを作成したり、「真の市民マナーとは」と題した市民参加の大討論会を開催したり、英語のスピーチコンテストを実施したりしている。

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