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中国駐在員報告
2012年2月 社会・時事 駐在員 : 野村芳一
2月上旬に上海総領事館に確認した上海総領事館管内の査証発給件数の速報値によると、上海総領事館管内の査証発給件数は、2011年1月から12月までの合計は、2010年に比べ30%を超える大きな減少となっている。
この落ち込みは、東日本大震災の影響が大きいことは言うまでも無いが、12月だけで比べると反対に2割を超える増加となっているという。また、10月から12月の3か月間で比べると、すべての月で2009年、2010年の実績を上回っており、今後の明るい見通しが予想される。
しかしながら、一方JNTO(日本政府観光局)上海事務所が1月に行った上海大手旅行会社へのヒアリングでは、訪日観光客が増えていると回答したのは1社のみで、大半の旅行社はよくて前年並みと答えたという。思ったほど回復していないというのが実態であろう。また、ヒアリングでは、個人旅行の取扱いが多い旅行会社から、震災後の傾向として、個人旅行の割合が大きく増加したというものがあったという。
この傾向は、総領事館の査証発給の内訳からも伺われる。というのは、2010年と2011年の査証発給件数の内訳で、団体観光査証が50%を超える大きな減少であるのに対して、個人観光査証は、1.5倍以上の増加となっているということだ。2011年の実績では、個人観光は、すでに観光客の4分の1の規模になっている可能性がある。この主な要因は、昨年実施された個人観光査証の規制緩和(沖縄マルチビザ新設など)と考えられるが、今後もこの増加傾向は続いていくものと思われる。
現在、震災以後の中国からの観光客の落ち込みを回復しようと、日本向け団体旅行では旅行代金の設定を安くしている傾向が強く、安売り合戦になっているとの指摘もある。また、上海の旅行会社、消費者は、価格設定に非常に敏感であるという声も聞く。ただ、このような価格競争が激しくなっていくことは、観光産業全体によい結果をもたらすとは考え難い。
静岡の観光全般をPRすることは、大切であるが、これからは、今後一層増加する個人旅行や料金設定の比較的高いインセンティブツアー(企業の社員への報奨旅行)向けの情報を効果のある方法で流すことも重要となるのではないかと考えている。
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