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2001年10月 経済駐在員 : 外山敬三
・日本企業の上海投資に対する地元の反応 9月のトピックスで日本企業の投資が上海で活発に行われていると紹介したが、それに関して地元はどのように見ているのか、地元の経済紙に載った「日本製造業、大挙して中国へシフト」という記事を紹介する。 災害を取り扱った映画「日本沈没」の産業版が上映されているのであろうか。多くの日 本の製造業が中国へのシフトを進めている。東京証券取引所に上場している1143の企 業のうち、半数は、今後3年以内に生産基地を国内から移転すると表明しており、「一衣 帯水」の中国はその最優先の選択肢となっている。 このドミノ現象の様相を呈している中にあって、最初に動いたのは業績不振の電子工 業界の国際的に有名なIT関連会社である。今年の8月13日、その中のA社は、「我々は 中国市場を十分に重要視しており、中国でのコンピューターと通信機材の生産を推進す る」と発表した。またB社のスポークスマンは、「当社は中国の内陸部で携帯電話の部品 を生産し、また、DVD−ROMドライバー装置とHDD装置の日本での生産を取りやめ、 全部海外へ移転する」と話しをした。C社のスポークスマンも、「深セン工場のデジタルコ ピーと上海工場のファックス機の生産規模を拡大する」と宣言した。D社は「中国での CPU生産を拡大し、AV音響・映像設備と携帯電話の生産も海外へ移転する」と明言し ている。関係の情報によると、移転を計画している600社近くの日本企業の七割は、中国 を主要目的地としており、とりわけ、長江、珠江デルタ地域及び中国西部の中心都市で ある成都、西安等は最も魅力のある候補地となっている。 日本企業の大規模移転の原因はどこにあるのだろうか。産業界の専門家の観察と分 析によれば、主な原因は次の三つが挙げられている。 1 巨額の赤字が出ていること。たとえば、世界最大の家電メーカーであるE電器産業株 式会社は今年の第2四半期に初めて約1.6億米ドル(200億円近く)の赤字を出してお り、「家電王国」と称されている日本経営モデルでさえもブラックホールから抜け出せな いということは、日本産業界にショックを与えるのは避けられない。さらに驚いたことに は、A社、B社、C社、D社等業界大手企業は海外へ移転し、他国で生産する計画を立 てている。 2 日本での生産技術コストが高くて耐えられない。日本の経済産業部門は昨年の9月 から11月間の152の工業製品と33の産業サービスの7か国・地域での価格を比較した 結果、日本の価格はドイツの2.08倍、韓国、中国台湾省、香港地区、シンガポールの2.29〜3.83倍であった。中国大陸と比べると、工業製品の価格は1:2.49となっており、 さらに、産業サービスは1:8.44と価格差は広がっている。中国の人件費コストは日本 の30分の1であり、しかも中国で造られた製品の品質は日本と特に大きな差がなくなっ てきている。C社は深センで、新製品開発コストを40%引き下げることができた。 3 アメリカの経済が急速に下降しており、それと密接に関連している日本産業界に影響 を及ぼしている。中でも、コンピューター関連産業を中心としたアメリカ経済の衰退は、 日本の電子製品製造業の業績に波及し始め、前世紀80年代以来の「日本電子軍団天 下無敵」の神話を打ち破った。日本製品の国際的な位置は10年前から衰え始め、急速 に下落し、市場シェアが急激に縮小している。たとえば、B社のノートパソコンはアメリカ のCOMPAQ、IBMの猛攻を受け、シェアはピークの20%から14%を割り込んだ。加え て、韓国のLG、三星グループの隆起により、日本のコピー機、液晶ディスプレー、録画 機等の伝統的に力を持っている製品のシェアが縮小されつつある。たとえば、コピー機 のシェアは全世界の70.6%から40.7%に急激に低下し、カラー液晶ディスプレーのシェ アも当初の100%近くからほぼ半分に減少した。 以上のような要因で、日本製造業の国際競争力が弱まり、日本産業空洞化の危機が 起きている。過去の栄光を失い、バブルがはじけてから、窮地に陥っている日本企業に は逃亡の道しか残されていないのであろうか。当然のことながら、このエコノミックアニマ ルである日本はすぐに倒れることはない。「百足は倒れない」「腐ってもタイ」のたとえで ある。この日本企業の本土からの大撤退、大逃亡は、中国製造業に大きなビジネスチャ ンスをもたらしている。上海、蘇州、寧波、深セン、東莞、成都、西安等では、投資の誘致 活動を拡大しており、そのうち、対日誘致は重要な地位に位置付けられている。上海は すでに全国より一歩先に歩き出して、今年の上半期に導入された外資導入のうち、日本 からの投資は50%を占めている。関係者は、2001年度日本電子製品メーカー、とりわけ 電子部品メーカーの営業成績の不振に伴い、日本投資者が中国に会社を設立するケー スはまだまだ増えると見込んでおり、我々は産業計画によって対応する態勢を整えて対 応すべきである。こうしてみると、日本製造企業の中国へのシフトは「日本沈没」でな く、中国市場を狙った経済活動とみるべきである。 [作者:張冠城](「上海経済報」 2001年9月4日)
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