中国駐在員報告
2022年8月 社会・時事 駐在員 : 浅原 敏治
7月17日、知人の紹介で、上海市の弓道サークル「上海正鵠会(せいこくかい)」の稽古場を見学した。このサークルに所属するただ1人の日本人の野間彰さんに案内していただいた。稽古場は、上海市浦東新区の商業施設の中にあり、床は板敷でアーチェリーの稽古場と兼用となっていた。会場の奧に弓道の的とアーチェリーの的が並んで設置されているほか、場内に10本ほどの弓や矢、弓道に関する書物が置かれていた。これらはすべて野間さんが日本からハンドキャリーで運んできたそうだ。
上海正鵠会は、2014年に会員数4人から始まり、年々増加して現在は約80人が会員となっている。会では毎週末、この稽古場のほかに公立学校のアーチェリーの練習場を借りて活動を続けている。中国の方々が弓道に関心を持つようになったきっかけを伺ったところ、「ツルネ」という、高校の弓道部を舞台にした日本のアニメーションを見た中国人が関心を持つようになったのでは、とのことであった。
野間さんは、中国各地で青少年に向けた弓道の講習を行っており、弓道を通じて日本と中国の交流が生まれるよう取り組まれてきた。これまで北京や浙江省、四川省、広東省などで講習会を開催し、78人が受講しているが、このうち45人が初段以上であった。
上海正鵠会では、毎年12月31日に会員と108本の矢を射るイベントを行っており、稽古場の壁に多くの穴が開いた的と、新年を祝う会員の寄せ書きが展示されていた。こうしたイベントを通じて、日本の文化を楽しんでいる様子が感じられた。会員の中国人は皆、日本が好きで、機会があれば日本に旅行して、日本の方々と交流したいと思っているそうだ。弓道サークルは、本県と友好提携している浙江省の杭州市と寧波市にもあり、会員は杭州市が20人、寧波市が12人とのことである。野間さんは杭州市と寧波市の弓道サークルとも繋がりをお持ちで、本県と浙江省との弓道を通じた交流の機会があれば、協力できるとのお言葉をいただいた。日中相互の渡航が再開された際には、弓道をはじめとした文化交流に当事務所も積極的に関わっていきたい。
野間さんによれば、運動部に弓道部がある中学校、高校は、全国的にそれほど多くない中、静岡県は弓道部を設置する学校が比較的多く、弓道場も充実していることから、経験者が多いのではないかとのことであった。
実際、最近お話した新しく静岡県から上海に赴任された方も経験者で、この弓道サークルに強い関心を持っていた。「弓道」を通じた新たな交流に期待するとともに、今後の可能性を感じた。
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