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北米駐在員報告

2003年3月 政治
駐在員 : 松下 育蔵


韓国の新政権誕生に揺れるワシントン(在米ジャーナリストからの情報)

    韓国の新大統領である蘆政権誕生は、ワシントンにとっては北朝鮮の核開発疑惑と同じくらいショックなこととして受け取られているそうだ。米政府は、本心ではハンナラ党の李会昌(イフェチャン)候補に大統領になってもらいたかった。そのため、大統領選挙期間中、アメリカが強い内政干渉をしていたと指摘する韓国ジャーナリストも多い。蘆候補もそうした韓国民の反米感情にうまく乗ったのも事実だ。ワシントンはそれでも、最終的には蘆氏が勝つことも予想していたはずだ。予想はしていたが、いざ実際に蘆政権が誕生したことにアメリカは失望の色を隠しきれずにいる。
    朝鮮問題専門家で国際戦略問題研究所(CSIS)パシフィック・フォーラムのブラッド・グローサーマン博士は以下のようなコメントをしている。
    「蘆氏は前任者の金大中前大統領の『北朝鮮への太陽政策』を継承し、発展させる『平和繁栄政策』を強調しているようだ。『太陽政策』といっても元来、両国がお互いの責務を果たすことが求められていた。ところが北朝鮮は口先だけで、中身となると最初から自国の果たすべき責務には言及せず、韓国側の要求を一蹴してきた。それに対して韓国側はいずれ将来、より大きな見返りがあるだろうと度量のあるところを見せ、『北朝鮮側の責務について目をつぶっていた』節がある。しかし、双方の隔たりは大きくなるばかりであった。
    北朝鮮が柔軟な反応を示したのは、金大中大統領が危機に直面した時だけだった。2000年6月、韓国総選挙の直前になって金正日主席が南北首脳会談に合意したのも、組みしやすい金大中政権にテコ入れすることにより自国(北朝鮮)の利益を守るためだった。しかも北朝鮮は首脳会談に合意し、金大中大統領をテコ入れした見返りとして巨額のカネを受け取っていたとも一般に言われている。『太陽政策』はその意味で混乱した遺産といっていいだろう。
    金大中前大統領たちは、結果オーライならいいではないかという。彼らは「太陽政策」の結果、朝鮮半島での緊張はなくなったし、韓国はサッカーのワールドカップやアジア・オリンピックも無事に開催できたというのだ。国際社会からの北の孤立状態も解消されたし(少なくとも北による核兵器危機疑惑が明るみに出る前までは)、南北離散家族の再会事業も促進され、北への外国投資も増加、南北縦断鉄道工事も開始された。
    確かに南北朝鮮の間にはかつてなかった強力な連帯感が育まれた。だがその反面、米韓同盟には緊張が生まれてしまった。これまでなかったような不信感がワシントンとソウルとの間に生じている。より深刻なのは、この両者の間に生じている不信感を北朝鮮が利用するチャンスを与えてしまったことだ。多くの韓国人は、アメリカが本当に朝鮮半島の安定に役立つのか、あるいは南北朝鮮の統一を妨げる存在なのかを問いかけている。米国内では、『太陽政策』をめぐる成果では完全に賛否が両極化していると言った方がいいかもしれない。最近米国で発表された二人の学者の共同論文では、「金大中は太陽政策を自らの政治的な立場と党の選挙戦略のために公然と意図的に使ってきたにすぎない」と結論づけている。
    韓国では、同盟国であるアメリカに評価も尊敬もされていないとの国民感情がアメリカに対する憤りとなっている。米韓同盟によって築き上げてきた成果はいっさい返り見られず、朝鮮半島が分断されているのはアメリカの戦略的利益のためであるといった感情が広がっている。
    今や米韓両国政府間の信頼関係は危うくなっている。お互いがお互いの対北朝鮮政策にダメージを与えている。この相互不信は将来的にも蓄積されるであろう。特に、蘆大統領はこれまでの前任者と違って訪米経験がないし、アメリカについてあまり理解していない。金大中前大統領がアメリカで数年過ごし、米韓関係が悪化する際には、その個人的な滞米経験が役立ったといわれる。蘆大統領にはそれがない。南北朝鮮同士の緊張は韓国の対米関係によっても左右されるだろう。もし、北が韓国との真の意味での和解を望まないのであれば、蘆大統領は厳しい現実を認識せねばならず、あるいは、その現実を引き起こしている原因として批判の矢面に立たせるスケープゴート(生け贄)を捜さねばならないだろう。その際、アメリカがそのスケープゴートにされる可能性はかなり高いと思われる。


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