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中国駐在員報告2008年8月 経済 2008年上半期の中国各地のGDP成長率が公表される 2008年上半期のGDP成長率等が、国務院統計局や各省・直轄市の人民政府から相次ぎ公表された。その結果、中国経済の躍進を主導的に牽引してきた上海市のGDP成長率(10.3%)が、中国全体のそれ(10.4%)を僅かに下回った。このニュースは、世界中に報道されたようであるが、上海市以外のデータなど詳細が報道されなかったので、今回、当事務所で上海市以外のデータを確認することにした。 その結果の一覧表は別添の資料のとおりであるが、驚くことに、上海市(2007年:13.3%→2008年上半期:10.3%)だけでなく、広東省(同14.5%→10.7%)、浙江省(同14.5%→11.4%)など、上海市とともに中国経済を牽引してきた地域も軒並み、成長率が落ち始めている。逆に、それらをしり目に、昨年以上に高成長を示しているのは、東北地方の吉林省(同16.1%→16.5%)や直轄市の天津市(同15.1%→16.3%)などとなっている。ちなみに四川省(同14.2%→9.1%)は大地震の影響を被むり、成長率が大きく下落している。 一体これは、どうしたことであろうか。地元経済誌エコノミスト等の分析では、これまで中国経済発展の原動力になってきた労働集約型の製造企業が人件費の高騰で業績が悪化したり、中国国外へ輸出する企業が最近の国際経済の落ち込みの影響を受け輸出額を減らしたこと等を、経済の状況悪化の理由に挙げることが多い。さらに、上海市の落ち込みの理由として、それらとともに、工業投資が大きく落ち込んだことが成長率低下の主要因となったようである。 他方、成長率が上昇した地域を見ると、これまで中国経済の発展の象徴であった中国沿岸部の各省・直轄市から北部及び中西部などの内陸部へ外国投資が移転し始めたような状況であることと、沿岸部地域では、特に天津市の高成長率が目立っていることが、今年上半期の特徴である。 中国政府は、これまでの経済成長が過熱しすぎる傾向があるとして、株式や不動産をはじめ、過熱している投資分野について、政策的に規制をかけ続けている。また、労働集約型産業などのローテク分野の投資からハイテク分野への投資を促すために、国外からの投資に対する優遇策を見直したりしている。そのような状況の中で、公表された今年上半期のGDP成長率が、前年比で落ちたとはいえ、四川省以外は全て10%を超えており、今後も高度成長は続くものと考えられる。 昨年、天津市の経済開発区に取材に行った時、区の責任者が、「1980年代は広東省深圳(シンセン)市の時代であり、1990年代は上海市浦東の時代であったが、21世紀は天津市の時代である。今後、中国の中で最も急激に成長していく地域は天津市なので期待してもらいたい。」と胸を張っていたことが、昨日のことのように思い出された。 これまでは、改革・開放経済の波に乗って、一気に駆け抜けてきたような経済状況であったが、国際経済のシステムに密接に結びついた中国経済が、今後、どのような変動を見せていくのか、注視していきたい。
出典: 1.2007年のデータ 中華人民共和国国家統計局 2.2008年のデータ (1)国のデータ:中華人民共和国国家統計局 (2)そのほか :各直轄市及び各省人民政府 注:全国及びその他のデータは、それぞれ調整中のものであり、全体として整合性が取れない部分がある。 |
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