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北米駐在員報告

2002年8月 社会・時事
駐在員 : 松下 育蔵


    ・「イスラムは、なぜアメリカを狙うのか」
    NHKの元支局長から、「イスラムはなぜアメリカを狙うのか」について、話を聞いた。 以下に元支局長の話しをまとめる。
    今日アメリカではテロ報道が氾濫している状態であるが、その中に欠けている視点として「どのようにしたら、この悲劇を繰り返さなくてすむか」ということが挙げられる。アメリカは今、武力で対テロ戦争に臨んでいるが、それだけでは根本的な解決にはならないことが分かっている。
    先ず2つのイスラム教徒に関する注目すべき事実を述べたい。
    第1の経験: 1972年に東ヨーロッパ兼中東の移動特派員としてユーゴスラビアに取材にいった際に謎の殺人事件が起こった。後に、その原因が明かされたところ、あるイスラム教徒が自分の3代前の祖父の敵討ちとして殺人を行ったという。イスラム圏では一般的に7代前までさかのぼって先祖のことを知っているという。このことを通してイスラム圏は全く違う時間の尺度をもって生活していることを学んだ。
    第2の経験: 1980年、イラン・ホメイニ革命の取材と現状把握のためにイランに行った。パーレビ国王が追放され、ホメイニ師が革命を起こしていた。そのような中、9月22日金曜日午後3時、イラン・イラク戦争が勃発。記者生命を分けるとも言われる戦争取材に臨むことになる。NHKの日本人、現地人を含む取材陣を集めて、生きて帰ることと、48時間後の通信再開に向けて衛星画像を準備することを言い渡す。この時、ある民間放送の記者も同じ状況におかれていた。彼の方も記者生命を懸けて衛星画像を準備していたが、実際48時間後の衛星放送を見てみると、彼の映像は、音が途切れ途切れになり画像も途中でなくなってしまった。NHKの放送の方はといえば、初めてのイラン・イラク戦争の映像として、世界を駆け巡った。後にその民間放送のことを聞いたところ、その記者が昔罵倒したことがあった現地職員が衛星映像を送る際に、音声のケーブルを故意に抜いたという。
    イスラム教徒にとって、人前で恥をかかされることほどの侮辱はなく、必ず復讐するということを聞いた。
    それでは、なぜアメリカだけが狙われるのだろうか。先ず挙げられる理由として、アメリカが「冷戦のツケを払っていない」ということである。アメリカの中東での行動を振り返ってみるとその意味が分かってくる。1979年12月27日、ロシアがアフガニスタンに侵攻。この事件はクリスマスを祝っていた欧米諸国を怒らせた。特にアメリカのカーター大統領に至っては、6か月前の6月18日に米ソが、ウィーン会議において核兵器の上限設定の条約をかわした直後であり、その怒りは特に大きかった。カーターは、イスラム圏に「ロシアの侵攻はイスラム教に対する冒涜である。これに憤慨するものは義勇兵としてアフガニスタンに集合せよ」と呼びかけた。この時に義勇兵としてアフガンに集まってきた者の中にはオサマ・ビン・ラディンらもいた。これらの義勇兵はその後10年間にわたってアメリカのために代理戦争を闘い、そして勝利を収めた。しかし、戦争が終わる頃には世界情勢もかなり変わってしまい、これらの兵士達が自国に戻ると感謝・歓迎されるどころか、「過激派」というレッテルを貼られ、何もできない状況になっていた。
    ただでさえ復讐心の強いイスラム教徒がここまでの仕打ちを受けたら、次に何が起こるかは知れている。9.11事件は起こるべくして起こった、といっても言い過ぎではない。
    9.11事件後のアメリカの行動を見ていると、全く過去の過ちを繰り返しているようだ。今回は、アフガン北部同盟軍に武器や金を渡してタリバン・アルカイダとの代理戦争を行わせた。それは北部同盟軍の勝利に終わったが、またもやアメリカは充分に感謝の意を表すわけでもなく、かなりの怒りを買っているようである。
    アメリカの「自分達は正しいことをしている」という自信は、日本という国から見るとうらやましいと感じられることも多い。しかし、アメリカは、この世界の中で自分達と全く違う考え方をする文化があるということを理解しない限り、違う時間の尺度をもち、恥をかくことを一番嫌う復讐心の強いイスラムに近い将来また必ず攻撃されるであろう。この「違い」を理解できれば、次の攻撃を防ぐことも可能かもしれない。



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