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中国駐在員報告

2013年1月 行政
駐在員 : 井口 真彦


     上海の地元紙の報道によると、最近開かれた浙江省小都市育成試験工作推進会議において、省内の27鎮が小都市(省政府が認定する常住人口50万以下の小規模都市)に昇格する見込みとのことである。浙江省は2010年から検討を始め、このたび、2年間を経て、実力があり、人口が多く、面積が広い27の鎮が小都市の候補に選ばれた。
     中国では、都市と農村の戸籍が区別され、原則として移動できない「都市・農村二元戸籍制度」が採用されている。13億人の人口は、都市戸籍約3億5千万人、農村戸籍約9億5千万人に大別されるが、農村から都市への出稼ぎ労働者「農民工」が増えている。そして、農民工からそのまま、或いは大学卒業後に都市に定住するケースなども多く、2011年末の都市人口は6億9千万人に達していると言う。しかし、上述のとおり、戸籍の移動が制限されているために、3億人以上が農村戸籍のまま都市に居住していることになる。しかもそのうちの2億5千万人が農民工だとされており、社会問題化されて久しい。
     農村戸籍のまま上海や杭州のような都市に居住することには、子女の教育、医療、年金、公共住宅への入居などの多くの福利厚生の恩恵を受けることができないといった様々なデメリットがある。これは、国家が提供する福利厚生は、原則として戸籍を有する地域において提供されるものであり、任意に戸籍地以外に居住する者は、必要な福利は自己手当てすべきという考え方に基づいている。
     11月に開催された中国共産党第18回大会における胡錦濤国家主席の中央委員会報告で、2020年の国内総生産と都市住民・農民の一人当たり収入を2010年比で2倍とする目標が示された。成長率が鈍化する中でこの目標を達成するためには、中低所得者層の持続的な底上げが必要であり、そのためには、都市と農村を分断する戸籍制度改革も避けて通れない。これは、都市住民と農民の所得格差の原因が、「都市・農村二元戸籍制度」に象徴される、都市と農村との制度的分断に由来するところが大きいためである。
     12月に開催されたあるフォーラムでは、全国人民代表大会財経委員会の副主任が、都市建設が急速に進展する一方で農村と都市の戸籍を峻別する制度がほとんど変わらず、また、工業化に比べ都市化の遅れが際立っていると批判し、戸籍制度改革を推進して、農民工の都市住民化を促すよう提言した。
     浙江省における今回の鎮の小都市へ昇格計画は、農村戸籍のまま農業以外の仕事に従事する住民について、一定期間生活した場合等に都市戸籍を取得できるとする「農民の市民化(都市住民化)」の一環であり、大きなデメリットを抱える農村戸籍住民を福利厚生の面で改善する狙いがある。
     しかしながら、戸籍制度の抜本的な改革には、習近平が支持基盤とする既得権益層の痛みを伴うものも多い。更には、上海や杭州に住む私の周りの都市戸籍を持つ中国人に聞いても、理念はともかくとして、現実的に二元戸籍制度の撤廃について賛成する人はいない。感覚的に嫌悪しているように見える。新指導部に託される課題は重いようである。


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