東南アジア駐在員報告
2023年9月 社会・時事 駐在員 : 竹田 敏彦
8月下旬にテレビ中継されたリー・シェンロン首相の施策方針演説を視聴した。独立記念日のある8月には、各所で国旗がはためき、大規模なパレードが開催されるなど、国中が祭りの雰囲気に包まれる。パレードに続いて8月下旬に実施される首相のテレビ演説は、生活に直結する施策について語られるため、国民の注目を集める行事となっている。
首相はまず初めに、世界的な課題が増加しており、国内では雇用確保、住宅供給、生活費高騰が政府の対応すべき挑戦項目であると述べた。続いて、国民の生活不安に対応するための施策として、「50〜60代の人々への金銭的なサポート」、「新しい公営住宅施策」、「失業者支援」、「高齢者に優しい環境づくり」等のトピックが紹介された。この中から「50〜60代の人々への金銭的なサポート」について説明する。
リー首相は1973年以前に生まれた50代以上の人々を「ヤング・シニア」という新しい呼称で呼び、1950年代以前に生まれた世代と比較して国の経済成長の恩恵を受けつつも、30〜40代の若い世代と比べて生涯年収が少なく、老後に不安を抱える人々が多いと紹介した。そうした中低所得層の人々に対して、年金積立のために年間1,000ドル(約10万円)の支援が行われるほか、年金が一定額に達していない人には最大1,500ドル、また医療費支援として最大1,500ドルが支給される。政府はこれらの施策を実施するために70億ドル(7,000億円)の追加予算を計上する予定だ。
日本でも就職氷河期世代に対する就職支援が話題となっているが、シンガポールでも経済的な恩恵を受けられなかった特定世代に向けた施策を実施するところが興味深い。
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