台湾駐在員報告
2021年5月 経済 駐在員 : 宮崎 悌三
台湾では、ここ1、2年、住宅市場が過熱気味とも言える活況を呈している。
原因として指摘されるのは、第一に、台湾当局が、主に民間企業に対して中国大陸から台湾への回帰投資を誘引する様々な施策をとったことから、多くの資金が台湾に流入したこと、第二に、低金利により銀行からの借り入れの負担感が軽減されたこと等から、市場の活況を支えているというものだ。
さらに、築30年以上の老朽化した建築物の建替え時や都市の景観と機能を向上させるための建替え時に適用される建ぺい率優遇等の法令も、市場の活況を後押ししている。
今年第1四半期(1〜3月)の住宅着工数は過去2番目に高くなっており、また、新築住宅の販売価格は、前年と比べて上昇している。
価格上昇の原因としては、強い実需に加え、原材料費や人件費等の上昇が挙げられる。建設現場での人手不足は深刻で、外国人労働者への就業規制緩和を台湾当局で検討しているとの報道もある。
住宅市場活況の一面には、購入者が自らの住宅としてではなく、転売によって利益を上げようとする投機的な動きもあり、台湾当局は、短期的な投機を対象に高い所得税率を課す抑制策を打ち出しているが、効果は限定的という不動産専門家の見方もある。
台北市内では、1坪当たり100万元(約390万円)以上で販売される新築住宅はもう珍しくなくなった。年間平均所得64.1万元(約250万円)の市民からしてみると、マイホームはますます遠い存在になってしまったのかもしれない。
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