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中国駐在員報告
2013年10月 政治 駐在員 : 井口 真彦
1979年に中国で始まった、夫婦一組には子供一人が望ましいとする「一人っ子政策」については、日本でも知らない人はいない。しかし、こちらで暮らしていて出会う一人っ子世代の中国人には、兄弟がいる場合が意外に多い。実は多くの例外があり、人口問題の専門家には「1.5人っ子政策」と呼ぶ人もある。夫婦ともに一人っ子の場合、農村部の夫婦で第1子が女子か障害がある場合、また少数民族の場合などは第2子を持つことが認められている。
今年8月、「一人っ子政策」を所管する国家衛生計画出産委員会が、同政策について適切な時期に見直し案を出す意向を明らかにしたとの報道があった。同委員会は計画出産政策を基本的な国策として堅持しなければならないと重ねて述べつつも、国民の出産への希望、社会の経済発展、人口構成の変化などの要因にも考慮する必要があるとした。
中国では、30年以上にわたる人口抑制策により高齢化が急激に進み、昨年、労働力人口が初めて減少に転じ、実は労働力不足に直面している。
多くの例外が設けられてきたように、「一人っ子政策」は徐々に見直されてきてはいるものの、抜本的な見直しがなされない原因として指摘されるのが、政策を所管する部署の保身の問題である。つまり、違反者が支払わされる平均年収の3〜10倍とされる社会扶養費(実質的な罰金)の制度と絡み、国家衛生計画出産委員会をトップとし、地方政府に連なる縦割りの関係組織が既得権益を手放さないのである。
しかし、今年9月、中国国家審計署(会計検査院に相当)が重慶市など9省市で社会扶養費の会計検査を実施した結果、調査した全45県で違反支出があり、総額が16億2,700万元に上ったと報道され、また、テレビのニュースでも社会扶養費の徴収基準が統一されておらず自由裁量権が大きいことなどを批判する報道がなされていた。
同政策の担当部署の責任を公然と追求し、報道する状況から考えると、抜本的な見直しの機運が高まっており、近いうちにある程度大きな改革が実現するのではないかと感じられる。但し、例外的に第2子を産むことを認められている多くの人が自ら1人しか子供を産まない選択をしていることもまた事実であり、政府の舵取りの手腕が試されるところでもある。
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