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東南アジア駐在員報告
2011年2月 社会・時事 駐在員 : 長谷川 卓
1月発表の2010年センサス(国勢調査)によると、人口の約75%を占める中華系シンガポール人の使用言語に変化が起きていることが分かった。30年前には約80%が、家庭での使用言語を先祖の出身地方語(dialect:広東語、海南語、潮州語、福建語等)と回答したが、今回は英語が最も多く、次いで中国語(Mandarin:北京語)、地方語の使用割合は20%に下がった。
多民族国家シンガポールの公用語は、英語、中国語(北京語)、マレー語、タミル語だが、義務教育では英語が使用されてきたことから、民族間の意思疎通を図る必要がある社会活動や学校、職場等での使用言語は英語となる場合が多い。地方語の使用割合が下がったのは、1979年に始まった「Speak Mandarin Campaign(中国語を話そうキャンペーン)」により、多数派の中華系の使用言語が英語と中国語(北京語)に集約された結果といえる。
ほぼ全国民が英語を話し、国内多数派の中華系が、先祖の母国の標準語でもある中国語(北京語)を話せる現状は、経済発展優先の国づくりを進めるシンガポールにとっては、理想の状況ともいえるが、言語の衰退は伝統文化の衰退にも繋がるとして、一部知識人は地方語復権を主張している。
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