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台湾駐在員報告
2013年8月 経済 駐在員 : 宮崎悌三
台湾と中国の交流が一段と進んでいる。6月21日、台湾の対中窓口機関である海峡交流基金会(海基会)と中国側の海峡両岸関係協会(海協会)の第9回トップ会談が開かれ、海基会の林中森理事長と海協会の陳徳銘会長が、サービス分野の市場を相互に開放する「サービス貿易協定」に調印した。
この「サービス貿易協定」は中台間の自由貿易協定に相当する経済協力枠組協定(ECFA)の後続協議であり、中国側は電子商取引や出版、運輸、金融、医療、電信、旅行業など80項目、台湾側は金融、医療、電信、社会福祉、美容、旅行業など64項目の開放を決めた。
しかし、台湾では出版・印刷をはじめ、旅行業や美容産業などが大きな打撃を受け、「台湾に中国マネーが押し寄せ、中台の一体化が進む。」と危惧。総統府国策顧問であり台湾大塊文化(出版社)の会長でもある郝明義氏は、7月26日に「両岸サービス貿易協定」の影響調査結果報告書を発表し、「多くの業者は対等的開放に同意するが、協議に先立って政府が業者の意見を聴取しないことに納得できない。」と発言。また、調査結果報告書において、「最も重要な発見は、中国側が印刷業の開放に“台湾図書の輸入審査手続きを簡素化”という条件を付けたことである。」としている。郝会長は、その背景として、「中国では印刷、出版、発行、小売が一貫化されており、中国585軒の出版社はすべて国営企業であるのに対し、ほとんどが中小企業である台湾の出版社にとって、まったくかなわない相手となる。」ことを指摘している。
その一方で、開放項目数では、ECFAに続いて台湾に有利であり、商機拡大とみる台湾の財界人も多い。これまで製造業が中心だった台湾企業も、電子商取引などでの中国進出に向けたチャンスの拡大が期待され、台湾側の海基会では「双方ともに特定の産業が一定程度影響を受けるが、台湾側が受ける衝撃の方が小さい。」としている。
馬総統は、この協定が台湾のサービス業に悪影響を及ぼすのではないかとの懸念に対して、「台湾のサービス業は強い。協定は台湾にとって弊害よりも利益の方が大きい。自由化と区域経済の統合は政府の不変の政策で、両岸サービス貿易協定は、その始まりの一つに過ぎない。」とした。
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