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中国駐在員報告

2007年5月 経済
駐在員 : 若田部 孝


全国一斉に高速化された鉄道路線とそれに伴う航空路線への影響


4月18日から全国一斉に鉄道路線の高速化が開始された。
この高速化は、「6次鉄路大提速」計画に基づき、国内各主要駅を結ぶ幹線路線を中心に高速化するものである。
今回は、これまで、1997年、1998年、2000年、2001年、2004年に行われた路線の高速化の集大成といえるものであり、主要路線は時速200キロで走行し、その一部区間では250キロで走行される。
日本から導入された「はやて」ベースの高速車両も時速200キロ以上で初めて営業運転に入った。各車両に動力源を持つ新しい列車を「動車組」というが、日本の「はやて」型の他、フランスの「アルストム」型なども使用され、例えば北京・上海間では従来よりも所要時間が2時間短縮され10時間となった。
「今回の路線の高速化により、輸送能力では旅客で18%、貨物で12%それぞれ増強された。これだけの大規模な高速化は、世界の鉄道発展史上、空前の出来事である。」と中国鉄道省は公表している。

1 中国の高速鉄道の愛称
      高速化された列車は「動車組」といわれており、その頭文字の発音「Dong」により、「D列車」と呼ばれている。
      カナダの「ボンバルディア」型ベースの車両は「CRH1」、日本の「はやて」型は「CRH2」、ドイツのジーメンス型は「CRH3」、フランスの「アルストム」型は「CRH5」となっており、時速200キロ以上の高速路線に投入された日本とフランスのベース車両については、「和諧号」(日本語で調和の意味)と命名された。

2 高速鉄道の料金
      D列車の1等(軟座)の料金は、2等の20%増しの金額となっており、例えば、北京・上海間の場合、1等では543元(日本円で約8,400円)、2等では452元(約7,000円)となっている。
      この料金に関して、顧客からは従来の特急寝台の499元(約7,700円)と比べれば高いとの不満も出ており、チケット販売も当初の予測を下回っている。
      これについて、中国鉄道省のスポークスマンは、記者会見で「社会の影響に注意している。マーケットの状況を見て、今後値下げを考慮する。」としている。
3 短縮される運行時間
      中国鉄道省が発表した主な列車の運行時間の短縮状況は次のとおりである。なお、下記の表は上海起点の路線について記載している。

    区   間
    所要時間
    短縮時間
    改正前
    改正後
    上海〜北京11時間589時間592時間01
    上海〜南京2時間171時間5819
    上海〜杭州1時間501時間2426分 
    上海南〜長沙18時間227時間3110時間51
    上海南〜南昌12時間255時間087時間17
    上海南〜重慶41時間5129時間1812時間33
    上海〜広州(香港九龍)25時間4619時間545時間52
    上海〜ラサ49時間3948時間5247
    上海〜ウルムチ47時間1342時間294時間44

 4 航空路線との競合
   鉄道路線の高速化は民間航空会社にも影響を与えることになった。 新聞に公表された4月22日の中国民用航空総局の談話は、次のとおりであった。
      「鉄道輸送側の高速化は、航空輸送側も高速化させることになる。民間航空各社は、まずドル箱路線の北京・上海線の更なる高速化のための改善を行うこととなろう。改善されれば、北京市内の中心地から上海市の中心地まで、3時間以内に到達可能であろう。」

(1)高速鉄道と航空路線
   統計によると、1,000キロ以上の区間の旅客輸送の総量では、航空輸送側の市場占有率は、1985年が7%で、現在は35%まで増加した。それに対し、鉄道輸送側のそれは、1985年が93%だが、現在は65%まで低下した。航空輸送側は、特に遠くの旅客輸送において優位性を示している。
   
(2)中国東方航空、上海航空等航空各社のコメント概要
   「例えば、北京・上海間の路線で比較してみると、鉄道が高速化しても同路線では10時間かかり、飛行機ならば、飛行時間が1時間40分ですむ。この輸送時間の差は、航空輸送側に絶対的優位性をもたらしている。また、同路線には、航空便が1日40便もあり、鉄道よりも予定を組みやすく柔軟性がある。そのため、今回の鉄道輸送の高速化は、民用航空各社に対する脅威とはならない。」
   さらに続けて次のようにコメントしている。
   「北京・上海間の航空旅客の約6割がビジネス客である。これらの旅客は、価格よりも、到着時間の短さ、確実性、出発時間の柔軟性などを優先的に考慮している。」


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