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東南アジア駐在員報告
2000年11月 社会・時事 駐在員 : 岩城徹雄
シンガポール航空機事故に国民も大きな関心
10月31日深夜に起きたシンガポール航空(SIA)SQ006便の事故は、日本人1人を含む80人以上の犠牲者を出す惨事となった。事故原因は滑走路の誤認という説が強まっているが、これまで高い安全性などで評価を得てきた同航空初の人身事故となっただけに、政府も国を挙げての対応を表明している。ゴー・チョクトン首相は事故後発表した声明で、非常なショックを受けたことや犠牲者への哀悼などとともに、SIA、運輸通信情報技術省、外務省ほか関係省庁に対し早急な対策を取るよう指示したと述べた。
SIAは、航空機の更新を早く行い常に新しい機体で運行することにより、機体の平均使用年数は5年7か月と世界一とされており、安全性には特に配慮を続けてきたため、世界の航空業界でも人気の上位に位置づけられている。在シンガポールの駐在員でも「乗るならSQ」と言う人も多い。SIAは事故前には、対前期比93%増となる好調な9月期中間決算や、エアバス社にスーパージャンボを25機発注すると発表したばかりで、順調さを印象づけていた矢先の事故であった。
地元紙には、全身やけどを負った18歳のSIAスチュワーデスの治療室での写真とともに、乗務員は自らの危険も顧みず乗客の避難誘導に当たり、賞賛の声が多く寄せられている、と台北からのレポートを掲載している。一方で、SIAの対応に不満を持った遺族が記者会見場で幹部に詰め寄るという一幕もあり、事故の対応の難しさを覗かせている。
世界一、二を争う港湾施設や利便性の高いチャンギ国際空港などとともに、SIAは、シンガポールがアジアの人や物の流れの中心をなすために重要な役割を担っているとの認識があるためか、国民の関心も高く、他人事とは思えないような雰囲気が広がっている。
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