中国駐在員報告
2018年12月 社会・時事 駐在員 : 石井 亘
中国は従来から女性が働くことを尊ぶ社会であったことから、女性の就業率向上は中央政府の重要な施策の一つに位置づけられてきた。中国国家統計局が11月に発表した統計によると、2017年末に中国全体の就労者の43.5%を女性が占め、2020年までに40%とする目標を前倒しで達成した。
国家統計局では過去数年間で女性の就労状況が改善しているとしており、一例として女性技術者の増加を挙げている。2017年に国有企業等で働く女性技術者は約1,530万人でこれは2010年と比較し260万人増加していて、技術者全体の48.6%を女性が占めている。高等教育を受ける女性も増加しており、2017年の大学院生のうち女性は約128万人で大学院生全体の48.4%に当たる。大学生、短大生は女性が1,447万人で全体の52.5%を占め、毎年増加傾向にある。
一方で、家庭内暴力に苦しむ女性も多く、隠れた社会問題となっている。あるニュース会社の資料では、結婚している中国人女性のうち約30%は家庭内暴力を経験しているが、実際に被害を警察に通報することは非常に少ない。家庭内暴力の被害を警察に訴えない理由は、被害にあっている女性の権利意識が希薄であることにあり、権利意識が希薄であるのは男性上位の慣習で育ってきたことが原因であると分析されている。
中国は2016年10月に家庭内暴力に関する法律を初めて制定・施行した。同法施行後、裁判所から約2,150件の被害者保護の命令が発せられている。また、過去2年間に処理された離婚手続きのうち、15%に当たる250万件が家庭内暴力を原因とした離婚であると新華社は報じている。
最近も四川省成都市の裁判所の男性裁判官が、家庭内暴力を理由に離婚を申請した女性に対し、女性が苦しむ被害は家庭内暴力とは言えず離婚は認められない、と判決をしたことが大きな議論となった。女性の地位、権利に関して社会全体が認識を改める必要があると専門家は指摘している。
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