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東南アジア駐在員報告
2012年4月 経済 駐在員 : 長谷川卓
3月20日、静岡県からの訪問団に同行して、昨年10月の大洪水により全域が冠水したタイ・アユタヤ市近郊のロジャナ工業団地内日系企業工場を見学する機会を得た。
10月初めに上流から水が押し寄せてくるとの情報を得た同社では、工場周囲の塀及び入場門に高さ150cmの土嚢を積み上げた。また、工場内の金型や工作機械を水に濡らさないようビニールで覆いをするとともに、床に置いた備品や工具を作業テーブル上に移動するなどの浸水対策を講じた。
10月6日に始まった浸水は、一晩のうちに想定外の2m50cmに達し、努力も空しく工場1階部分のほぼすべてが冠水した。
水は、11月上旬から徐々に引き始めたが、途中、日本の国土交通省から派遣された排水ポンプが工業団地内の5か所に設置されてから、急速に引き、12月上旬には完全に引いた。
工業団地内への立入禁止措置の解除後から復旧作業を開始。3月20日現在、工場全体のうち約20%の1700uが復旧して操業。約9000人いた従業員のうち派遣社員1500人は一時休止の状況が続いているが、正社員約7500人の雇用は継続している。工場閉鎖期間中は復旧作業の他、部品生産を支援するため取引先工場へ社員を派遣したり、代替生産を行った日本本社の工場に約250人を派遣して雇用を守った。
訪問の最後に同社タイ人スタッフが作成した復旧作業のドキュメンタリービデオを視聴した。水中からの金型引き揚げ作業や水が引いた後の清掃作業に懸命に取り組むタイ人従業員とそれを陣頭指揮する日本人社員の姿を見ていると、BGMが「地上の星」だったことから、プロジェクトXの名ゼリフ「男たちは泣いた。」が頭に浮かんだ。が、実は同社従業員は女性が約8割を占めるため、「男女ともに泣いた。」が正しい。
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