東南アジア駐在員報告
2012年12月 社会・時事 駐在員 : 長谷川 卓
11月26日、シンガポールの公共交通機関を運営するSMRT社に勤務する中国人バス運転手約100人が、シンガポール人、マレーシア人運転手との給与格差を不満として、乗務を拒否して社員寮に立てこもった。
ストレーツタイムズ紙によればSMRAT社は、中国人運転手の給与は月額S$1,075(75,250円)、マレーシア人S$1,400(98,000円)、シンガポール人S$1,625(113,750円)と国籍により格差を設けている。※S$1=70円で換算
政府は、不平等な給与待遇への不満が理由であると認識を示した上で、今回のストライキは違法であり、厳正な処分を行うと発表。29日、ストライキのリーダー格と見られる4人が逮捕された。同日朝のラジオトーク番組では、国民から同情的な意見も寄せられたが、シンガポール人の運転手を増やすために給与を引き上げるべきとの意見が多数を占めていた。
近年、シンガポールが急速な経済発展を遂げた理由の一つには、安価な外国人労働力の利用が挙げられるが、それにしてもこの国の肉体労働への対価は低い。雑貨、衣類、日用品などの物価水準がほぼ日本と同じと感じる中、公共交通料金が非常に安い理由も人件費の抑制にあったわけだ。
政府は昨年5月の総選挙以降、生産性の向上により経済成長を維持し、外国人労働者の受入れを制限する方向に政策を転換しつつあるが、これまで外国人が担ってきた単純肉体労働に代わる生産性向上のための投資にシンガポール企業が対応できるのか、注目される。
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