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東南アジア駐在員報告
2001年10月 経済 駐在員 : 岩城徹雄
・各国政府、航空会社を救済へ
アメリカでのテロ事件を受けて各航空会社が加入する損害保険会社は、戦争付加金として乗客1人あたり保険料を1.25米ドル値上げする、航空機外の第三者への損害を保証する第三者戦争危険責任保険の賠償額の上限を従来の20億米ドルから5千万米ドルに引き下げることとし、賠償責任保険の規約を変更した。事件前から経営難にある東南アジア各国の航空会社は一層難しい状況に追い込まれることになった。
このため、各国政府は自国の航空会社に対し、保険料の上乗せ分を乗客の運賃へ転嫁することを認可したり、賠償額の差を埋めることを保証するなど、支援策をとることとしている。
業績の伸び悩みに苦しむシンガポール航空(SIA)は、アメリカ方面への運行便にテロによる大きな影響が出ている上に、出資しているニュージーランド航空が6月期決算で赤字を出すなど、さらに厳しい状況に追い込まれている。アメリカ大陸部門の収入が全体の21%を占めることから、影響は大きなものとなることが予想される。原油価格の高騰は輸送コストの上昇につながりさらに経営を圧迫しかねない。SIAは運賃に一人当たり1.25米ドルの保険料の上乗せを決めており、シンガポール政府は賠償額の差額を補填するとしている。
マレーシア航空(MAS)も4期連続の赤字、90億リンギの負債に苦しみ、人員整理も含めた経営再建の途上にある。マレーシア政府はコスト上昇に伴う運賃値上げを認め、賠償金の差額についても政府が保証することを明らかにしている。このほかタイ、インドネシア、フィリピンでも政府が航空会社の支援を明らかにしている。
各国の航空会社でも、SIAがパキスタン発着便の運航を9月28日から停止しており、MASもカラチ(パキスタン)経由ドバイ(アラブ首長国連邦)行きの運航を停止するなど他の航空各社も中東方面など危険が予想される地域の運航停止、便数の減、飛行ルートの変更など検討を進めている。
また、船舶保険についても、保険各社は戦争危険地域の適用範囲拡大や保険料の値上げを行っており、海運業界も対応を迫られている。
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