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東南アジア駐在員報告
2006年6月 経済 駐在員 : 獅倉 浩
去る5月18日に、インドの大財閥“タタグループ”の自動車会社タタ自動車の社長ラタン・ N・タタ氏が、西ベンガル州主席大臣ニランパム・セン氏同席のもと、西ベンガル州のシンガールに小型自動車製造工場を建設することを発表した。
ショールーム施設も含める工場建設用地は、約2.8ヘクタールで、建設コストは100億ルピー(約265億円)を超える見込み。この工場が稼動すると、2,000人の直接雇用が発生し、販売や関連サービス事業を含めると10,000人以上の雇用創出効果が期待されている。工場建設は、用地取得後直ちに着手されることになっており、西ベンガル州主席大臣によると、建設用地の取得は2〜3ヶ月のうちに可能であると見込んでいることから、タタ自動車は2008年の操業開始を予定しているということだ。
この工場で生産を予定している小型自動車は、販売予定価格が10万ルピー(約27万円)の超格安車と発表されているが、果たして本当にこの価格で販売することができるのか疑問視する声も少なくない。様々なオプションを取り付ける必要があり、結局実際の価格はもっと高くなるだろうし、少なくとも物品税(16%)、消費税(12.5%)を加える13万ルピー(約35万円)が最低の購買者価格になろうという予測が立っている。
インドにおける乗用車メーカーといえば、本県企業のスズキ鰍フ現地法人マルチ・ウドヨグが1981年の創業以来、常にトップシェアを持続しており約45%のシェアを誇っている。同社の主力車種アルトは30万ルピー(約80万円)、マルチ800は22万ルピー(約60万円)で販売されているので、タタの格安車はこれらの1/2程度の販売価格になる。また別の視点で考えると、インドでよく売れている125ccクラスのオートバイが5万ルピー(約13万円)前後で販売されているので、これらの2倍程度の価格で買えるタタの格安車は、オートバイ購買者層の一部を取り込むであろうことも考えられる。インドでは、やはり本県企業のヤマハ発動機鰍ェオートバイを製造販売しており、いずれにしても今後の動向に注目したい。
(注)インド通貨1ルピー=2.65円(5月25日現在為替)で計算した。
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