台湾駐在員報告
2014年10月 行政 駐在員 : 宮崎悌三
トピックスで何度か話題として取り上げた食品の安全性の問題であるが、今度は食用油で問題が発覚した。
本来は、廃油を再利用した本来では食用ではない原料が、食用油メーカーに流れ、食用油に加工されたあと、食品メーカーに出荷されていたことが判明した。さらに、問題の食用油を含んだ食品は、食品大手や飲食店など、台湾の1,344社に出回った(台湾経済部まとめ)という。
街を歩くと良く目に入るコンビニエンスストア、餃子チェーン店、名の知れた大手食品、コーヒーチェーン店、ファーストフード店など、日常的に食品を買い求めたり、食べたりしている店の名前が次から次へとテレビの画面に登場し、「問題の油を使っていたため、返品・返金をする」という報道が、世間を賑わせた。
問題が発覚した時期が、ちょうど中秋節(2014年は、9月8日)の時期と重なっていたことも、被害を大きくさせた。中秋節は、春節や端午節と並ぶ祝日で、家族や友人、職場、恋人それぞれが集ってこの日を祝う。日本でも有名となった月餅(げっぺい)などを贈り合うのもこのときである。事務所に程近い月餅などの中華風お菓子を販売するある店には、この時期、店の1ブロック先まで贈答の品を買い求める長蛇の列が出来る。その時期に合せて、食品メーカー各社は、贈答品用の食品の増産をするのだが、問題の油が使用された食品は、全て有償での返品を受け付けると同時に、まだ販売していない問題商品も廃棄処分しなければならなくなった。台湾経済部のとりまとめによると、食品産業の生産額の減少幅は、68億元(約245億円)を超える見通しとなったそうである。
廃油から問題の原料を提供した食用油メーカーの工場には、現地地方政府が立入り検査を過去4年間で6回にわたり実施していたが、今回発覚した廃油を再利用した食用油の存在については、まったく把握していなかった。
また、台湾にはGMP(適正生産規範)制度による食品の安全・安心を認証する制度があるが、問題の食用油を使用した食品に、GMP認証マークがつけられていたことで、GMP制度の是非の議論を呼ぶなど、昨年から立続けに起きた食品の安全性にまつわる事件に、台湾の市民からは、当局の対応のまずさを指摘する声が強まっている。
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