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中国駐在員報告

2013年7月 社会・時事
駐在員 : 野村芳一


    中国で「高齢者権益保障法」が改正され、7月1日より施行されたが、その内容が話題になっている。なぜならば、この法律中に「家族は、高齢者の精神状態にも配慮し高齢者を冷遇してはならず、別居している場合には、頻繁に高齢者を訪問し、雇用主は、その訪問のための休暇を保障しなければならない。」という規定があるためだ。
    条文は、文字通り高齢者と離れて生活している子供が、頻繁(そもそも、この言葉自体曖昧)に帰省し、顔を見せなかった場合、法律に違反することを意味する。家族の内情によって、左右されるようなことを法律で定めなければならないのか、という点がインターネットやメディアで議論されている。また、中国において、現実に子供が故郷の親の面倒を見ないという状況が、どの程度なのだろうかという疑問も出てくる。

      今回の改正の経緯は、概ね次のとおりのようだ。中国では、1999年に高齢者(60歳以上)が全人口の10%を超え、2010年末には、その総数は1.78億人(13.26%)で、2025年には3億人、2033年には4億人を突破すると推計されている。
    このようなことから、1996年には、高齢化社会の到来に向けて、高齢者の権利の擁護、社会保障や高齢者サービス事業の推進等を定めた旧高齢者権益保障法が施行された。
    その中では、高齢者の扶養は主として家庭の責任で、家族がその世話をすることとされていた。その後、経済成長や一人っ子政策で出生率が低下することで、高齢者が急増する一方、出稼ぎ労働等により、一人暮らしの高齢者世帯や高齢者の夫婦世帯が増加し、家庭が介護等老人の世話をする機能は次第に弱まらざるを得なかった。
    同時に、家庭に代わって地域社会や高齢者施設で高齢者を支援する各種のサービスが実施されるようになった。こうした社会状況の変化に応じた高齢者の生活保障制度を法律として確立することが必要とされ、今回の改正が行われたという。
    したがって、本来の改正の主旨は、高齢者の生活を家庭だけでなく、家庭、地域社会、高齢者施設で連携して支援していくというもので、どちらかというと、家庭の負担を減らしていく方向であると言える。
      ところが、子供の帰省を法的な義務とすることを付け加えたことから、今回のような議論が巻き起こったのである。社会的な状況の変化ももちろんだが、子供が年老いた親の面倒を見るといったこれまでの価値観が絶対的なものとして通用しなくなっている状況もあるのだろう。
    インターネット上では、様々な議論が展開され、新法の支持者は、子供の帰省の義務化は、親の精神的需要を満たす基本的な権利だと主張し、反対者はその実行性を疑問視している。
    また、「頻繁に帰省」の頻繁の基準とは何か、基準に合致するか否かをいかに判断すべきか、という点について、あるネットユーザーは、「新法は、実質的な問題を解決できない。法律で頻繁に帰省することを義務付けても、真の親孝行にはならない」と否定的だが、一部のネットユーザーは新法を歓迎し、その成果に期待して、「少なくとも親孝行の法的基準が設けられ、若者の高齢者重視を促せる」と指摘しているという。
      驚いたことに、法律の施行日と同じ日に注目すべき判決が下された。江蘇省・無錫に住む77歳の一人暮らし女性が、自分に対して冷たい娘夫婦を4月に提訴していたが、人民法院は、暮らしの面倒と、家賃や医療費の負担を娘夫婦に求めた女性の訴えを認め、娘夫妻に2カ月に1回母親を訪ねること、旧正月など重要な祝日のうち最低2つの祝日にも訪ねて行くことを命令したというものだ。
      中国の高齢化について、先進国では1人当たりGDPが1万ドルを超えてから高齢化社会に入ったのに比べ、中国では1人当たりGDPが5,000ドル(2011年)程度とまだ低く、豊かになる前に高齢化する「未富先老」現象が日々顕著になっていると指摘されている。高齢化問題が経済や社会に大きな負担と圧力をもたらしているとも言われている。
    さらに、都市部と農村部の格差についても農村の若年労働者が都市に大量流入した結果、農村の高齢化スピードは都市より速くなり、深刻な高齢化問題に直面しているという。
      ところが、一時帰国した時に感じる静岡の街の中の高齢者の多さに比べ、上海やその他の中国の都市からは、そのような感覚になることはない。高齢化が現実に差し迫っていることがほとんど感じられないのだ。これは、光が当たっている部分を見ているだけで、中国全体を正しくとらえるためには、日本とは違ったその多面性をよく理解しておかなければならないと思っている。


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