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台湾駐在員報告
2013年10月 政治 駐在員 : 宮崎悌三
台湾には、複数の政党があるが、これまで、国民党と民進党の二つの政党が政権を争ってきた。
現在は、与党が国民党、野党は民進党で、直接選挙で選ばれる総統は、与党国民党の馬英九氏である。その馬総統の人気が低迷している。
台湾のテレビ局の調査によると、馬総統に対する満足度は、就任以来最低の11%に落込み、不満足度は68%に達した。この割合は、3人に2人が、馬総統に対し不満足とした非常に高い数字である。汚職まみれとなって民意が離れた陳水扁前総統(民進党)の最低ラインだった10%に肉薄している。
この低い数字へ拍車を掛けたのは、同じ国民党員である王金平 立法院長(国会議長に相当)に対する党籍剥奪処分である。
この事件は、野党立法委員(国会議員の相当)が絡む刑事裁判をめぐって、王院長が検察に働きかけたとされる司法介入疑惑に対し、国民党が王院長の党籍剥奪を決定。しかし、王院長は裁判所から党籍維持の仮処分を認められ、院長の地位も保ったというものである。
背景には、馬総統と王院長の国民党内での主導権争いがあるものと見られ、野党議員からも幅広い人気がある王院長に対する、馬総統の手法と重過ぎる処分に、国会が空転している。
世論も不祥事に関わったとされる王院長に対する反感は広まるどころか同情を集め、かえって馬総統への反感が広がり、馬総統にとっては、皮肉な結果となっている。国民党寄りの大手紙のアンケート調査においても、王院長の処分について、「重すぎる」とした回答は67%に達し、「適切」と回答した19%を大きく上回った。29日には、台北市内で市民団体による馬政権への抗議デモが行われ、当日予定されていた国民党大会が延期された。
このような状況のなか、与党国民党からも、国民党主席を務める馬総統では来年末の統一地方選挙に悪影響を及ぼすと懸念の輪が広がっている。
さらに、司法介入疑惑を調べた最高検察特捜チームが電話を盗聴していたことへの妥当性についても調査が入ることになり、特捜チームの報告を受けて、王院長に辞任を迫った馬総統への風当たりは更に強まっている。
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