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中国駐在員報告
2011年9月 社会・時事 駐在員 : 野村芳一
中国国家インターネット情報弁公室は、8月末までに全国のニュースサイト、ポータルサイトの統制を強化する通達を出した。
浙江省温州市で起きた高速鉄道事故で、鉄道省に対する批判がネットで噴出したことから、共産党の宣伝部門は、国内メディアに対し、独自取材で「真相」を追究することを禁止し、事故報道では国営通信社・新華社の原稿だけを使うよう各メディアに指示した。ところが、これに従わない番組や紙面を作った、テレビの報道担当プロデューサーや新聞紙の編集幹部が停職処分を受けたり、解任されたりする事例が起きていた。
こうした事態を受けて党宣伝部幹部は、8月9日、メディアを管轄する部門の幹部を集めた会議で「走基層、転作風、改文風」(末端へ行き、やり方を転換し、作風を改める)というキャンペーンを開始するよう指示したため、人民日報など党機関紙は一面で特集記事を連載し、大衆紙も同じタイトルで企画記事の掲載を始めている。
今回の通達は、ネットメディアについても、現場で調査や取材を続けることや、民衆の生活に密着した問題を報じること、また、サイトの目立つ位置に党・政府の方針を掲載することなどを指示。さらに、ネットメディアに従事する職員の訓練、評価制度を整備することも求めている。
このようなメディア統制は、政府への批判を和らげるという意味で一定の効果は得られると思うが、政府にとっての根本的な解決にはならないだろう。というのも、「微博」などのミニブログは、問題のある情報を管理者が削除する前に、瞬時に多くの人に広がってしまうことが大きな特徴であること、及び、中国においても政府系以外のメディアについては広告収入が経営を支えており、政府の思惑といったものよりも、いかに読者や視聴者を惹きつける記事、番組を作るかがメディア自体の存続のために重要となっているからである。
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