東南アジア駐在員報告
2014年11月 経済 駐在員 : 吉住理恵子
近年、シンガポール政府は、外国人雇用についての規制を強化している。
今年1月1日から、EP (Employment Pass:管理・専門職向け雇用許可書)申請の給与水準が月額3,000シンガポールドル(以下「Sドル」)から3,300Sドルとなった。11年当初に2,500Sドルだった水準が、3年の間に3割以上上昇したことになる。
また、8月1日からは、シンガポールで外国人を雇う前にまずシンガポール人への求人情報公表を義務づける新たな制度(the Fair Consideration Framework:FCF)が始まった。これはEPを申請する前に,その職に対する労働条件と同等の条件で、シンガポール人に対する求人広告をシンガポール労働力開発庁(Singapore Workforce Development Agency)が運営するJob Bank(求人募集サイト)に,最低14日間掲載することを義務付けるもので、従業員数が25人以下の企業による求人、または待遇が月収1万2,000Sドル以上は例外となる。
一方、シンガポールの人材開発省(Ministry of Manpower:MOM)が9月に発表した失業率は1.9%で、うち国民のみの失業率は2.9%、国民と永住権保持者を合わせた失業率も2.8%で、6月期からほぼ横ばいの状態である。雇用者側としては、もともと数が多くないシンガポール人の採用を優先しなければならないことから、優秀な人材の獲得が一層厳しくなることが懸念されている。
中技能、低技能向け就業許可証(S-PASS、WP: Work Permit)を保有する労働者に対する外国人雇用税も7月から引き上げられており、賃金の上昇が企業にとって負担増となっている。
流入する外国人労働者の数は制限傾向が続いており、業種別に割り当てられた外国人雇用限度率の引き下げ(2012年)により日本人スタッフを減らさなければならなくなった日系のサービス業や飲食業などの現場では、現地採用者の確保が困難、雇用できても十分なサービス水準に達するまでの教育期間が必要なことが営業上のネックとなるケースもでている。
政府による国民優先の姿勢はしばらく変わりそうになく、売り手市場は、さらに加速するとの見方もあり、企業にとって厳しい状況が続きそうだ。
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