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中国駐在員報告2003年3月 駐在員レポート 中国建設業の実情と中国建設業界との交流について 1 中国建設業の概況
中国統計年鑑によると2001年の中国国内の建築業企業数は45,893社で、その内訳は内資企業44,997社、外資企業896社(香港・マカオ・台湾を含む)である。建築業に従事している職員の数は約2,110万人、建築業総産値は約1兆5,360億元となっており、改革開放政策が始まった頃の1980年と比べて、企業数で約7倍、従業員数で約3倍、総生産額で約53.5倍となっている。
また、「建築業企業資格管理規定」が2001年7月1日から施行された。同法では、建築業企業の登録資本、純資産、技術装備、過去の工事実績等に基づき建築業企業の資格が「施行総請負」「専門請負」「労務下請」の三つの序列に分けられ、「施行総請負」資格を取得した企業はプロジェクトの総請負又は主要プロジェクトの施行を請け負うことができ、請け負ったプロジェクトを全て自社または他の建築業企業に再請負させることが出来る。「専門請負」資格を取得した企業は施工総請負企業から専門工事の下請け、又は規定に合った工事を自社で請負うことが出来るほか、請け負ったプロジェクトまたは労務作業を他の建築業企業に再請負させることが出来る。「労務下請」資格を取得した企業は施工総請負企業、専門請負企業から労務作業を請負うことが出来る。さらに、各資格は、条件によって若干の等級に分類されている。 以上見てきたように、中国においては、建設業界の体質の近代化が図られつつあるが、まだまだ古い体質から抜け出せておらず、下記のような問題があると言われている。 A 地方保護主義と業界保護主義が地域によって深刻で、地方指導者が入札で不正を働かせることもある。 B 法整備が完全でなく、法執行も徹底していない。事業主、建設会社、下請け、材料商の間の債務が複雑である。 C 約半分の建築企業は郷鎮企業で、農村余剰労働力の再就業先になっており、人員過剰気味で技術レベルも低い。(資料出処:建築ネット世界) 3 外資企業の状況
日系企業も建設業では三井建設、清水建設、大成建設、大林組、竹中工務店、戸田建設、熊谷組、不動産関係では大和ハウス工業、フジタ、大東建託といった大半の大手の建設業者が進出している。 大手建設業者の進出形態は、中国側パートナーと合弁で現地法人を立上げて建設業を営む企業もあるが、大半は現地法人を立上げず、中国に進出した日系企業の工場などの建設を日本国内で受注し、その後建設するケースが大半を占めており、中国企業や政府機関からの受注は、国際入札となる土木工事を除きほとんど無いのが現状である。建設工事毎に許可を取得するため費用は現地企業に発注する場合と比べて割高になるが、現地企業に発注した場合、前途金が必要であったり、工期も遅れがちで、費用の追加要求が多く、アフターサービスやメンテナンスサービスが無い等問題が多く、日本でつきあいのある建設業社に工事を委託するケースが多いからである。 しかし、中国のWTOに加盟を契機に建設関連の法改正が行われ、外資100%の独資企業設立も可能となった一方で、建設会社は技術者の数などに応じて特級、1〜3級にランク付けされ、2003年10月をタイムリミットに、登録が義務付けられることになった。つまり、国際入札以外の案件は、登録していない企業は工事を請け負うことが出来なくなる制度に変更となり、日本の建設業は、現地に法人を設立し、一定の技術者を確保しなければ中国国内での応札も特命受注も不可能となるため、現在、現地法人を設立するかどうか判断を迫られている。
その後、2002年12月1日に「外商投資建築業企業管理規定」が施行され、加盟時の約束を前倒しして、合弁企業等の内国民待遇と外資100%の企業設立が可能となり、WTOの方針である、「内国民待遇」「透明度」「公平な競争」等の明確化が図られた。 同管理規定では外商投資建築企業を「外資建築企業」「中外合弁経営建築企業」「中外合作経営建築業企業」に分け、中国内で行う合法的な経営活動及び合法的権益は、中国の法律、法規、規則による保護を受けると規定されている。また、企業設立及び資格の申請と審査認可の手順を定めるとともに、外資建築業企業(独資)の工事請負範囲を次のとおり定めている。
A国際金融機関の資金援助で、かつ借款協議に基づき実施された国際入札で与えられる建設プロジェクト B外資が50%以上の中外共同プロジェクト、及び外資が50%を下回るが、技術が難しくて中国の建築企業が独自で実施できないため、省・自治区・直轄市人民政府の建設行政主管部門の認可を受けた中外共同建設プロジェクト C中国が投資するが技術が難しくて中国の建築企業が独自で実施できない建設プロジェクトは、省・自治区・直轄市人民政府の建設行政主管部門の認可を受ければ、中外建築企業が共同で請け負うことが出来る
静岡県と友好提携関係にある浙江省は、経済成長を遂げる中国の中でもトップクラスの省であり、また経済面においては「静岡県・浙江省経済交流促進機構」を設置して活発な交流を行っている。静岡県内の建設業が中国へ進出するに当っては、どういう形態で進出するのか、また、順調に受注が受けられるのか十分に事前調査を実施することが重要である。静岡県と友好交流関係にある、浙江省の建設業界との交流をまず行い、技術支援やビジネスの可能性を調査・研究していくことは、今後の展開を考える上での一つの有効な手段であると思われる。 建築業企業資格管理規定(抜粋) 中華人民共和国国務院令 第87号 部長 兪正声 2001年4月18日 第一章 総則 第一条 建築活動の監督管理を強化、建築市場の秩序を維持、工事の品質を保証する為、「中華人民共和国建築法」、「建築工事品質管理条例」に基づき、本規定を制定する。第二条 中華人民共和国国内で建築業企業資格を申請、建築業企業資格管理を実施する場合、本規定を適用する。本規定の建築業企業は土木工事、建築工事、線路設備据付工事、内装工事など新築、改造活動を行う企業を指す。 第三条 建築業企業がもつ登録資本、純資産、技術者、技術装備と過去にある工事実績等の条件に合わせて、資格を申請し、審査をへて、相応の等級資格証明を取得後、初めて資格等級許可範囲内の建築業務を行うことが出来る。 第四条 国務院建設行政主管部門が全国建築業企業資格を一本化管理する。国務院鉄道、交通、水利、情報産業、民航等関係部門が国務院建設行政主管部門に協力して関係資格類別建築業企業資格を管理する。省、自治区、直轄市人民政府の建設行政主管部門は本行政区域内の建築業企業資格を一本化管理する。省、自治区、直轄市人民政府交通、水利、通信、民航等関係部門が同級建設行政主管部門に協力して関係資格類別建築業企業資格を管理する。 第二章 資格分類と分級 第五条 建築業企業資格は@施工総請負、A専門請負、B労務下請けの三つの序列に分ける。@施工総請負資格を取得した企業はプロジェクトの総請負または主体プロジェクトの施工請負を実施できる。施工総請負企業は請け負ったプロジェクトをすべて自社で施工または非主体工程あるいは労務作業を相応専門請負資格あるいは労務請負資格をもつ他の建築業企業に再請負してもらうことが出来る。A専門請負資格を取得した企業は施工総請負企業から専門工事を下請けまたは規定に合った工事を請け負うことが出来る。専門請負施工総請負企業は請け負ったプロジェクトをすべて自社で施工または労務作業を相応労務請負資格をもつ他の建築業企業に再請負することが出来る。B労務下請け資格を取得した企業は施工総請負、専門請負会社から労務作業を請け負うことが出来る。施工総請負、専門請負と労務下請け序列は工事性質と技術特徴によって若干の資格類別に分ける。各資質類別は規定の条件によって若干の等級に分ける。建築業企業資格等級標準は国務院建設行政主管部門が国務院関係部門と共同で制定する。中華人民共和国入札法(抜粋) 総則 第二条 中華人民共和国内で行う入札募集並び入札活動に本法律を適用する。 第三条 中華人民共和国内で以下の工事建設及びプロジェクトの測量、設計、施工、監督及び工事建設にかかわる重用設備、材料の買い付けは入札募集をしなければならない。 (一) 大型インフラ施設、公用事業等社会公衆利益、公衆安全にかかわるプロジェクト (二) 全部または部分的に国有資金が投資するまたは国家融資を使用するプロジェクト (三) 国際組織または外国政府の貸し付け、援助資金を使用するプロジェクト 第四条 いかなる会社や個人は入札を募集すべきプロジェクトを分散またはその他のいかなる方法を使って入札の募集を逃避してはならない。 第五条 入札募集並び入札活動は公開、公平、公正と誠実信用の原則を遵守する。 第六条 法にしたがって入札募集するプロジェクトは、その入札募集活動が地域また部門の制限を受けない。いかなる会社や個人が本地区、本部門以外の法人または個人の入札活動を違法に制限または排斥してはならない。いかなる方法でも入札募集並び入札活動を干渉してはならない。 第七条 入札募集並び入札活動とその当事者は法に基づいた監督を受けなければならない。関係する行政監督部門は法に基づき入札募集並び入札活動を監督し、違法行為を処罰する。入札募集並び入札活動の行政監督及び関係する部門の具体的な職務範囲は国務院の規定に従う。 2000年1月1日施行
外商投資建築業企業管理規定(抜粋) 第1章 総則第1条 対外開放を一層拡大し、外国投資者による建築業企業の投資に対する管理を規範化するため、「中華人民共和国建築法」「中華人民共和国入札法」「中華人民共和国中外合弁企業法」「中華人民共和国外資企業法」「建設工事品質管理条例」等の法律、行政法規に基づき本規定を制定する。 第2条 中華人民共和国国内において外商投資建築業企業を設立し、建築業企業の資格を申請し、外商投資建築業企業の監督管理を実施する際、本規定を適用する。本規定にいう外商投資建築業企業とは、中国の法律、法規の規定に基づき、中華人民共和国国内で投資して設立した外資建築業企業、中外合弁経営建築業企業及び中外合作経営建築業企業をさす。 第3条 外国投資者が中華人民共和国国内で外商投資建築業企業を設立し、並びに建築業を営むには、法により対外貿易経済行政主管部門の公布する外商投資企業認可証書を取得し、国家工商行政管理局に登録登記し、かつ、建築行政主管部門の公布する建築業企業資格証書を取得しなければならない。 第4条 外商投資建築業企業は、中華人民共和国国内で建築活動を行う場合、中国の法律、法規、規則を遵守しなければならない。外商投資建築企業が中華人民共和国国内で行う合法的な経営活動及び合法的権益は、中国の法律、法規、規則による保護を受ける。 第5条 国務院の対外貿易経済行政主管部門は、外商投資建築業企業の設立の管理責任を負い、国務院建築行政主管部門は、外商投資建築企業の資格の管理責任を負う。省、自治区、直轄市人民政府の対外貿易経済行政主管部門は、授権を受けた範囲内で外商投資建築業企業の設立の管理責任を負い、省、自治区、直轄市人民政府の建設行政主管部門は、本規定に従い同行政区域内の外商投資建築業企業の資格の管理責任を負う。 第2章 企業設立及び資格の申請と審査認可―省略― 第3章 工事請負範囲 第15条 外資建築企業はその資格等級の許可された範囲内で以下に掲げる工事のみを請け負う。 (1) 全てが外国投資、外国寄付金、外国投資及び寄付金により建設する工事 (2) 国際金融機関の資金援助で、かつ借款協議に基づき実施された国際入札で与えられる建設プロジェクト (3) 外資が50%以上の中外共同建設プロジェクト、及び外資が50%を下回るが、技術が難しくて中国の建築企業が独自で実施できないため、省、自治区、直轄市人民政府の建設行政主管部門の認可を受けた中外共同建設プロジェクト (4) 中国が投資するが、技術が難しくて中国の建築企業が独自で実施できない建設プロジェクトは、省、自治区、直轄市人民政府の建設行政主管部門の認可を受ければ、中外建築企業が共同で請け負うことが出来る。 第16条 中外合弁経営の建築業企業、中外合作経営の建築業企業はその資格等級の許可された範囲内で工事を請け負わなければならない。 第4章 管理監督―省略― 第5章 附則―一部省略― 第25条 本規定は2002年12月1日から施行する。 |
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