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ヨーロッパ駐在員報告
2000年2月 社会・時事 駐在員 : 森 貴志
不快語大賞に「副次的被害」
昨年のNATOによるユーゴ空爆の際、NATOが誤爆によって死亡した市民を指して使われた「副次的被害(Kollateralschaden)」が1999年の「不快語」大賞となった。
「不快語」大賞は、フランクフルト大学ドイツ語学・文学研究所のシュロッサー教授が91年からはじめたもの。毎年マスコミを賑わせた新語の中から特に評判となった「悪言」を公募し、言語学者、ジャーナリストらによる審査委員会が大賞を決定している。
今回は一般市民から約1,000件の応募があったが、そのうちこの「副次的被害」が最多票となった。この言葉は、非軍事目標の被害を示す英語の軍事専門用語「collateral damage」をそのままドイツ語に約したもの。ラテン語から派生した「Kollateral」は、ドイツでは医学などの学術用語以外ほとんど使われていない。審査委員会は、「難解な言葉で残酷な事実から視線をそらし、戦争犯罪を矮小化した」と選出理由を説明した。
一方、「20世紀の不快語」には、第二次大戦中に戦場に送られた兵士を指して使われた「人的資源(Menschenmaterial)」が選ばれた。審査委員会は、このほか、脳死者からの「臓器獲得(Organ-gewinnung)」やリストラ時の「人員処理(Personal-entsorgung)」など過去の不快語を振り返って「人間を単なる物とみなす言葉が増えている」と批判している。
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