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中国駐在員報告2005年2月 経済 2つのチャイナリスク
この内、長江デルタ、珠江デルタでは対中進出日系企業のチャイナリスクの1つとして電力問題があったが、少しずつではあるが改善の方向に進んでいる。浙江省の電力部門での今年の予測は昨年よりやや改善するとの見通しを示している。予測では、電力消費のピークとなる夏の最高負荷が2,300万から2,500万キロワットで、不足分は500万〜700万キロワットと予想されているが、9月以降に大型発電ユニットの供給が開始されたことにより今年末には昨年末に比べ542万キロワット増になる見込みである。 政策による電力調整と供給能力の増強により少しずつ電力に余裕が生まれて来ており、外国資本の投資会社は発電部門から送電部門へと投資先を変化させて来ている。今後は、送電部門の電気設備とサービス分野への投資に伴い、それに付随する設備メーカーが伸びる可能性がある。 また、もう1つのチャイナリスクである熟練工不足が少しずつ表面化してきている。上海の日系企業から聞き取った内容によると、「社員として人材を雇用するのではなく、技術者集団に請負いをさせてきた。しかし、その費用が昨年に比べ10%以上増加して、1人当たり月2,000元(約28,000円)の費用が必要になってきた。」とのことで、熟練技術者が少なく、賃金が上昇していることを問題にしていた。一般的に上海では外国語を話せない大卒1年目の技術者で月2,000元前後であり、外国語を話せる大卒1年目の事務で、日系企業で月2,500〜3,500元(約35,000円〜49,000円)、欧米系企業が月4,000〜5,000元(56,000円〜70,000円)である。 長江デルタ地区、珠江デルタ地区、環渤海地区の熟練工の現状を求人倍率で比較すると、下記の通りであり、長江デルタ地区の高級技師の求人倍率が他の地区2倍以上になっている。
2つのチャイナリスクのうち、電力問題は環渤海地区の大連でも表面化してきている。石炭不足による発電停止などにより出力が低下したため、1月10日から国有企業を対象としたピークシフト(昼間の電力使用の制限等により電力使用が一定時間に集中しないようにすること)、街灯の明かりを落とすなどの対策を取り始めた。それでも、長江、珠江デルタに比べれば恵まれている。 中国政府は大連などの東北地区の「中長期電力計画」を明らかにした。最も電力消費量の多い地域は大連、瀋陽を抱える遼寧省である。この地域では今年100万〜200万キロワットが不足する見通しのため、「送電網の建設」と「新資源の開発」を積極的に進めようとしている。 電力に余裕のある内モンゴルと黒龍江省から遼寧省への送電を増強するため、4本ある500キロボルト送電線を2010年末までに10本に増やすとともに豊富な石炭資源を持つ内モンゴル東部の石炭開発を強化し、鉄道や道路などの輸送力も強化する計画である。 これらの計画を実行するため、国家開発銀行は遼寧省に対して500億元以上の資金融資を決めた。 遼寧省も、80億元を瀋陽市を中心とする高速道路の建設に投入する計画で、今年の建設総延長は最長1,151キロメートルの予定である。 今後、遼寧省を中心とした東方地区は2つのチャイナリスク(電力問題と熟練技術者)にどう対応していくかにより、企業進出の状況が変化すると思われる。 |
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