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中国駐在員報告

2014年9月 政治
駐在員 : 井口 真彦


人民日報の1面トップに「戸籍制度改革全面実施」の文字が躍ったのは7月31日である。従来、農村と都市とで厳格に隔てられていた戸籍制度を廃止し、戸籍を一本化する方針を発表したのである。2面には、本件に関する記者インタビューや解説の記事、8面には、国務院の「戸籍制度改革の一層の推進に関する意見」(以下、「意見」という。)全文が掲載された。
 発展著しい上海や杭州など、大都市の高層ビルや地下鉄の工事、路上のごみ清掃や収集、工場における単純作業など、都会人が敬遠する仕事を低賃金で担い、大都市の底辺を支えているのが、農村から都市への出稼ぎ労働者「農民工」である。
 尖閣諸島国有化に端を発した中国各地での反日デモに参加した中国人の多くは、その都市の住民ではなく、農民工だったと言われている。反日デモが、社会に不満を持つ労働者の不満のはけ口でもあったと言われる所以である。
 中国では、これまで都市と農村の戸籍が区別され、原則として移動できない「都市・農村二元戸籍制度」が採用されてきた。中国では、2011年に建国以降初めて都市人口が農村人口を上回った。2013年末の総人口13.6億人のうち、都市常住人口が7.3億人である。しかし、この都市常住人口は、農村から都市に移住して6か月以上を経て常住人口と認定されても、都市戸籍を与えられず、農村戸籍のままの人口が2.3億人いると言われている。彼らには、子女の教育、医療、年金、公共住宅への入居など、市民としての権利や社会保障を享受できないといった、事実上の様々なデメリットがある。これは、国家が提供する福利厚生は、原則として戸籍を有する地域において提供されるものであり、任意に戸籍地以外に居住する者は、必要な福利は自己手当てすべきという考え方に基づいている。
 胡錦濤国家主席時代、2012年11月の共産党大会で、2020年の国内総生産と都市住民・農民の一人当たり収入を2010年比で2倍とする目標が示された。成長率が鈍化する中でこの目標を達成するためには、中低所得者層の持続的な底上げが必要であり、そのためには、都市と農村を分断する戸籍制度改革が避けて通れない。これは、都市住民と農民の所得格差の原因が、「都市・農村二元戸籍制度」に象徴される、都市と農村との制度的分断に由来するところが大きいためである。
 これまでも、有識者が戸籍制度改革の推進、農民工の都市住民化の促進を提言したとのニュースなども見てきたが、戸籍制度の抜本的な改革には、習近平が支持基盤とする既得権益層の痛みを伴うものも多く、早期の実現は困難ではないかと思っていた。
 今回の決定は、これまで農村戸籍者の都市への移住を厳しく制限していた方針を転換するもので、これにより1958年に「戸籍登記条例」が打ち出されて以来、半世紀以上続いた現行の戸籍制度が大きく変わるものである。
 「意見」では、2020年までに約1億人の農業移転人口(農民の都市部への転籍)とその他常住人口の都市部での定住を実現させる目標を打ち出している。この大規模な人口移動は各地で50兆元(約827兆円)規模の投資と消費を促すとみられ、今後の経済成長を支える原動力になるとみられる。
 「意見」によると、人口50〜100万人の中規模都市では戸籍制限を徐々に開放し、100万〜300万人の大規模都市は各地の状況に合わせた条件を設定して、適度に人口流入を抑制する。そして、北京や上海など人口500万人以上の超大都市では人口規模を厳しく抑え込むとしている。
 一方で、農民工の3分の2が都市戸籍の取得を望んでいないという情報もある。また、新規の農民工を受け入れない方針が明確化された上海などの大都市は、どのようにして流入を規制するのだろうかという疑問も湧いてくる。建国以来最大のタブーとも言える戸籍制度にメスを入れる今回の戸籍制度の改革が、他の都市化政策と相まって都市化が推進され、2020年までに目標を達成できれば、習近平政権の最大の成果とも言えるものとなる。一方で、今後も様々な課題が出てくることが予想される。改革の行方を注視して行きたい。


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