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韓国駐在員報告

2015年3月 経済
駐在員 : 松村 昭宏


 韓国と中国が2015年2月15日に仮署名した自由貿易協定(FTA)で、韓国は製造業の主力輸出品で譲歩する代わりに農水産業界への打撃を最小限に抑えた。韓国が弱い部分はある程度守ったが、強い部分では期待していた大きな利益を得られなかったということだ。産業通商資源部が同日ホームページで公表した韓中FTAの協定文によると、中国は品目ベースで91%(7,428品目)、輸入額ベースで85%(1,417億ドル=約16兆8,300億円)の関税を20年以内に撤廃する。

 一方、韓国は品目で2%(1万1,272品目)、輸入額で91%(736億ドル)の関税を同期間内に撤廃する。関税撤廃対象外の品目が多いため、品目、輸入額で3年以内に90%以上の関税を撤廃するとした韓米FTAや韓国・欧州連合(EU)FTAに比べ、自由化率が低い。公開された協定文は2014年11月10日の交渉妥結後、双方の法的検討を経て仮署名したもので、妥結時に発表された内容とほぼ同じだ。

 製造業を見ると、自動車分野では両国共に自国の産業を保護するため、大半の品目を関税撤廃対象外または中長期的な撤廃対象とし、中国は乗用車のほかハンドルやクラッチなどの主要部品を関税撤廃対象外とし、一部のバスやトラックは10〜15年かけて関税を撤廃する。韓国は乗用車やトラック、乗合自動車などの完成車を関税撤廃対象から外し、中国から輸入する主な自動車部品の大半を長期的な撤廃対象とした。電機・電子分野では、中国は大型家電製品や2次電池、有機ELパネルなど競争力が劣る品目を長期的な関税撤廃対象または撤廃対象外とした。

 韓国はモーターや変圧器など主な重電機を中長期的な関税撤廃対象として保護する。鉄鋼分野で、中国は韓国企業が中国の現地工場で使用する冷延鋼板、ステンレス熱延鋼板、汎用製品の厚板などの関税を撤廃する。韓国は中小・中堅企業を保護するため、フェロマンガンなどの合金鉄を長期的な関税撤廃対象とした。また、石油化学分野では、中国はイオン交換樹脂や高吸水性樹脂、ポリウレタンなどの先端・高付加価値製品や自国内での供給が不足しているエチレン、プロピレンなどの基礎原料の関税を撤廃する。韓国は酢酸エチルをはじめとする中小企業の生産品や対中貿易で赤字幅が大きい酢酸などを撤廃対象外とする一方、大企業が生産する合成樹脂や合成ゴムの関税を撤廃する。

 農畜産物は韓中FTA交渉で韓国が最も気を配った分野だ。コメは交渉対象から外され、トウガラシ、ニンニク、牛肉、豚肉、リンゴ、ミカン、ナシなど韓国の農畜産物の3分の1に当たる548品目が関税撤廃対象から除外された。キムチなどは関税を一部削減する。一方、中国は農産物品目の91%の関税を撤廃する。水産物も、韓国の自由化率は品目ベースで86%、輸入額ベースで36%にとどまる。これに対し、中国の自由化率は品目で99%、輸入額では100%で、事実上、完全に市場を開放した。


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