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東南アジア駐在員報告
2001年5月 政治 駐在員 : 岩城徹雄
フィリピンのマニラでは、エストラーダ前大統領の逮捕に反発した群衆が、5月1日にマラカニアン宮殿(大統領府)周辺で警官隊、国軍と衝突し4名の犠牲者が出る騒乱状態となった。アロヨ大統領は、戒厳令の2段階前にあたる反乱状態を宣言し、反乱を煽った容疑でエストラーダ派のエンリレ上院議員(元国防相)を逮捕し、同じ容疑で他の議員らにも逮捕状を出し行方を追っている。
反乱状態は7日に解除され平静を取り戻しているが、今回の騒乱は、貧困層を中心とするエストラーダ氏支持派の国民に不満がつのっていること、政府、議会内でもアロヨ派、エストラーダ派の勢力対立があることなどが要因に挙げられている。今月14日には上院下院、首長などの中間選挙が行われる予定で、それまでアロヨ大統領に有利とされてきた選挙戦の予想も前大統領逮捕で厳しい情勢に変わっている。暴動で逮捕された市民を釈放したり、エストラーダ氏を逮捕先に訪ね会談するなど、アロヨ大統領もソフトな展開を見せているが、選挙結果如何では政局の混迷も深まることが予想され、予断を許さない状況が続いている。
一方、インドネシアのジャカルタでは、ワヒド大統領の弾劾に対する国会の二回目の覚書の審議をめぐって、4月29日から5月1日にかけて厳戒態勢がとられた。弾劾の重要なプロセスとなる大統領への覚書を送付するか否かを決定する国会を翌日に控えた4月29日に、大統領支持派のイスラム団体が共同礼拝を開いたが、この数日前から全国から支持者が続々と集まり、支持者の一部にはジャカルタ入りを前に戦闘訓練をしたグループもあったため、礼拝が大規模な暴動に発展したり反大統領勢力と衝突したりするのではないかとの観測がなされ、国軍も厳重な警備にあたった。
国会は大統領に対し1か月以内の政務改善を求める2回目の覚書を送付し、大統領はいっそう苦しい立場に追い込まれた。辞任の意向のない大統領は権限委譲などによりメガワティ副大統領との関係修復を図り、副大統領率いる第1党の闘争民主党との妥協を探っていると伝えられている。
結果的に大きな暴動には至らなかったが、共同礼拝の数日前に筆者がジャカルタ郊外の工業団地に展開する県内企業の現地法人に問い合わせたところ、次のような状況であった。
・郊外の工場では操業を休止するところはなさそうだが、国会周辺や大通りに面するビルに入居する企業は国会開催当日を休むことを考えているようだ。
・98年のジャカルタ暴動の教訓もあり、日系企業は不測の事態に備えて、不用な外出の取りやめ、航空券、現金、非常食の用意、携帯電話などでの連絡体制の確認などを行っている。
当事務所においても、ジャカルタからシンガポールへの退避というケースを想定し、連絡先をジャカルタ周辺の県関係企業に改めて伝えるとともに、ホテルのリストの再チェックを行い、万が一に備えた。
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