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中国駐在員報告
2012年3月 経済 駐在員 : 野村芳一
世界銀行と国務院発展研究中心は2月27日、共同でまとめた「2030年の中国」と題する報告書を発表した。世界銀行総裁は、中国が産業構造の高度化など社会全体にわたる改革に取り組まなければ、今後20年にわたって経済は減速し、「中所得経済のわな」に陥るリスクがあると警告した。
報告書では、中国は過去30年間、年平均10%の高成長を維持してきたが、次の20年は年平均5〜6%に鈍化すると予測。中所得経済のわなに陥らないためには、銀行の商業化や資本市場の開放、土地改革、戸籍制度改革、高等教育の充実、省エネの推進、国民の社会保障の充実などを徹底させる必要があると提案した。なお、この会見で、会場の中国人男性が「世銀の報告は毒薬だ」などと叫び、会場外に退出させられる一幕があり、既得権を持つ強い抵抗勢力の存在も示唆している。
その他にも、中国社会科学院は2月9日発表した「国際都市青書」で2011年の成長率が一桁台の北京と上海について、「サービス産業への依存を強め、製造業の高度化を怠れば『中進国のわな』に陥る」と警告し、中国経済が曲がり角に差し掛かっている可能性を指摘している。
なお、中所得経済(中進国)のわなとは、国民1人当たりの所得が中所得になるまで急成長しながらも、その後、人口ボーナス(子供と老人が少なく、生産年齢人口が多い状態。豊富な労働力で高度経済成長が可能)の終焉や労働力不足などで競争力を失い、経済が停滞してしまうこととされている。
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