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委員会会議録

委員会補足文書

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令和5年11月地域公共交通対策特別委員会
株式会社野村総合研究所 コンサルティング事業本部アーバンイノベーションコンサルティング部 部長 若菜高博氏、シニアコンサルタント 川手魁氏、コンサルタント 倉林翼氏 【 意見陳述 】 発言日: 11/21/2023 会派名:


○若菜参考人
 野村総合研究所の若菜と申します。アーバンコンサルティング部の部長をしておりまして、運輸・物流、それから住宅・不動産業界を担当しております。今、御紹介にあずかりましたとおり、地域の公共交通の問題が、全国的に非常に大きな課題になってきておりまして、弊社としても、この分野での研究、それから解決案の提言を積極的に行っております。今回50分というお時間をいただきまして、誠にありがとうございます。少しでも皆様のお役に立てればと思っていますので、よろしくお願いいたします。
 では、早速ですが、中身の御説明に入ってまいりたいと思います。
 まず、簡単に弊社の御紹介をさせていただければと思います。
 ページをめくっていただいて、3ページになります。
 野村総合研究所はシンクタンクコンサルティング会社として活動しておりますが、当部は、3ページの真ん中にありますとおり、コンサルティングの部署が13個ありますが、その中の一翼を担っておりまして、先ほど申したとおり、運輸・物流、それから住宅・不動産の業界を担当しております。
 4ページを御覧いただければと思います。昨今では、都市、地方の交通課題の解決に向けて、新しいモビリティの導入支援を手がけております。
 左側の事例でございますが、経済産業省のスマートモビリティチャレンジという事業に、2018年以来ずっと携わっておりまして、今年度も様々な地域でこういうスマートモビリティの実証、それから社会実装を手がけております。
 また、公共分野だけではなくて、民間企業のモビリティサービスの御支援もさせていただいておりまして、例えばJR東日本のモビリティ変革コンソーシアム事業も2019年から2022年度までお手伝いさせていただいておりました。自動運転バスであるとか、フューチャーモビリティというところでのPoC、実証事業と実装化を御支援させていただいております。
 例えば、この大船渡線。震災のときに線路がなくなってしまったエリアですけれども、ここでレベル4のバス、無人のバスの実証事業をさせていただいたり、横浜市でのAI運行バスの実証実験をさせていただいたりと、このような実績があるところでございます。
 5ページですけれども、コロナ禍では、人の移動が大きく制約されて、公共交通事業者の経営が大きく傷みました。その中で人手が足りない、経営が立ち行かないという問題が各地で噴出してきたわけでございますが、弊社としても持続可能な地域公共交通の在り方を研究提言してきた実績、研究事例がございます。
 例えば、この3つを取り上げさせていただきますと、「コロナ禍と人口減少を踏まえた持続可能な地域公共交通とは」や、「次世代へつなぐ地域公共交通とは」など、地域公共交通は、単に収益面だけではない、多面的な価値がございますので、そういう多面的な価値とはというところで研究提言をさせていただきました。
 その一つの結果として、6ページにあるように、地図から消えるローカル線ということで、ローカル線の存廃問題は、地域にとっても、経営している公共交通事業者にとっても、非常に大きな問題でございますので、こういう地域交通における将来像であるとか、まちづくりの在り方を提言する本を、新書として出版させていただいて、一定の反響を得ているところでございます。
 こういう研究結果を踏まえて、今日は一つ意見として御提言申し上げたいと思っております。よろしくお願いいたします。

○倉林参考人
 続いて、第2章で、地域公共交通再構築の潮流ということでお話をさせていただきます。
 今回、かなり総論的なテーマでお話をするということでございますので、昨今の公共交通見直しの動きが、マクロ環境の中でどういう傾向の中でこの問題が生じてきたのかという、少し大きなお話からできればと思っております。
 8ページ目でございますけれども、これはよくマスコミでも報道されている日本の人口推移のグラフです。これを3大都市圏と3大都市圏以外、並びに静岡県で表したものでございます。日本の人口が増加から減少に転じたのが2005年でございますけれども、それまで一部の中山間地域では過疎化が問題になっておりましたが、それ以外の地域では人口増加社会という中で、新しいインフラをつくる、できるだけ大量輸送を行うという中で、インフラ整備が進んでおりました。これが2005年から、3大都市圏以外のところでは、人口も減少に転じ始めまして、過渡期ということで、一部の地域で路線バスであるとか、そういった従来の公共交通は成り立たない時代に入ってきたと理解しております。
 さらに、2020年から先は、三大都市圏であっても、人口減少に転じていくというところでございますので、昨今、人手不足の話がかなり問題になっておりますけれども、この大きな人口減少という流れ自体は、あらがえない傾向でございますので、従来、公共交通の再構築というのは、一部の中山間地域の課題であるとされていたところが、コロナ禍もあって、三大都市圏も含めて全国規模の課題に拡大しているというのが、大きな背景であると捉えております。
 続いて、9ページ目でございますけれども、そこに加えて、単純に人口が減るだけではなくて、人口の分布が変わっていく。それから、公共交通のある意味競合でもあります自家用車の移動が便利になってきていると、この大きなトレンドもあると思っております。
 左側に2004年、右側に2019年の図を載せておりますが、横軸は、単位面積当たりの学生人口で、一定のエリアに学生がどれだけ密集して住んでいるかという軸でございます。縦軸は道路改良率で、道路がどれぐらい便利になったかというところで線を引いております。中に書いてある数字は、当てはまる都道府県の数でございまして、左側の2004年ですと、この右下の青い箱に入ってるところが10都道府県ありますけれども、学生の人口が多くて、道路改良が進んでいない。つまり運転のできない学生が多く住んでいらっしゃって、かつ自家用車の移動がまだまだ不便な地域もあるということですので、公共交通に対する需要が大きかった都道府県が10程度あった。逆に左上の、学生が少なくて、道路改良が進んでいる都道府県というのが10程度あったというところでございます。
 それが、この15年の間で道路整備もかなり進行いたしまして、かつ人口減少以上に少子高齢化が進んでまいりましたので、右側の絵にありますとおり、学生が多く、道路改良率が少ないという右下の象限が6都道府県に減り、左上の学生が少なく道路改良率が高いところが18に増えてきた。すなわち公共交通を利用する方々が、もう構造的に減ってきてしまっているというのが、この間の大きな動きであると考えております。
 静岡県につきましては、各図の中でひし形で表示しておりますけれども、もともと比較的若い方々の人口も多い県でございますので、位置としては右上、道路改良も進んでいるというところでございますので、静岡市であるとか浜松市であるとか政令指定都市レベルのところであれば、今も公共交通を使って通学されている方が多くいらっしゃる一方で、中山間地域に行きますと、この間、道路改良などもかなり進んできておりますので、自家用車の移動がより便利になって、自家用車を運転できる方であれば、バスを使うよりも自家用車で自ら移動される方が増えてきたという位置づけにある県と理解しております。
 続いて、10ページ目でございますけれども、こうした環境の変化を踏まえて、この間、どのような変化が生じてきたのかを、横軸、縦軸の2軸で表現したものでございます。横軸が公共交通の需要で、先ほど申したような学生が多いかどうかであるとか、そもそも人口の絶対数が多いかどうか、それから自家用車の保有率が高いかどうか、そういったもろもろの変数によって決定するものでございますけれども、左半分が公共交通の需要の大きな大都市、中核都市、右側が小さな地方都市、中山間地域。また、縦軸が公共交通の供給で、これは人員、車両いろいろな供給がありますけれども、主に人員に着目いたしまして、豊富かそれとも不足していたのかと、この4つの箱で捉えると、公共交通の状況は分かりやすいかと思っております。コロナ禍の前ぐらいまでですと、静岡市、浜松市などの大都市圏は、左上の箱になるかと思っておりまして、需要が大きく、供給も豊富である。すなわち、複数の民間事業者が収益事業として公共交通を運営してきた。また鉄道やバス、それぞれが競争する中で、例えば、速度をアップさせるであるとか、静鉄も新しい車両を入れてますけれども、そうしたサービスの改善が民間の競争の中で進んでいく時代だったと理解しております。
 また、右上ですが、それ以外の郡部のようなところになりますと、これまでも既に公共交通の需要は小さかったですけれども、一方で、人員なども含めて供給は豊富にございますので、利用者が減っていけば、もともと鉄道だったところをバスに転換して、さらに路線バスの利用者が減ればコミュニティバスに転換して、さらにコミュニティバスの利用者も減れば、それをタクシーなどに転換していくという形で、柔軟に需要の減少に応じて車両サイズを変えるなど、新しい交通の導入が可能であったと理解をしております。これは言い換えると、受皿となる交通事業者がいらっしゃったからこそできていたというところだと考えております。
 それが、大都市圏、郡部、それぞれ人口減少、それから2024年問題をはじめとする人手不足の問題によって、下側の箱に移ってきたというのが、ここ5年ぐらいの動きかと思っております。
 したがいまして、今、静岡市や浜松市の大都市の中でも、バスや鉄道の人手不足という問題が出てきている。それから、資材価格も高騰する中で、民間の収益事業としては、この先、維持困難な路線が増加してくるものと考えております。
 また、右下の中山間地域につきましては、これまでであれば、受皿となるようなタクシー事業者などがいらっしゃったところが、そうした人手もさらに不足していく中で、公共交通を需要の減少に応じて新しい体系に変えようにも、受皿が全く見つからないという新しい問題が出てきたと考えております。
 また大事なのが、右下の2点目になりますけれども、これは人手不足という問題は公共交通だけではなくて、病院であるとか商店であるとか、ほかの生活サービスにも共通の問題でございますので、この受皿が見つからないという問題は、交通だけではなくて、ほかの生活サービスも含めて考えていく必要があると捉えています。
 続いて11ページ目でございますが、そうした動きを踏まえて、具体的な取組としてどういうものが行われてきたのかを簡単に整理しております。
 従来、公共交通の再構築というと、この右上のところです。需要は減ってきているが、人も含めて供給はまだ何とか受皿があったという中で検討されてきましたので、例えば1980年代の国鉄民営化の際のバス転換、それから1990年代、2000年代に路線バスのコミュニティバス化はかなり進んできましたが、これもいずれも地元で受皿があるからこそできていた再構築の事例だと捉えております。
 一方で、近年、取組事例として出てきているのは、下側のお話になりますので、人手も足りない、車両も足りない中で、どのように公共交通を持続可能にしていくのかという観点で、単に車両を小さくすればいいという話ではなくて、新しい技術や法規制の緩和も受けながら、少ない人で、少ない車両の中で、より便利なサービスを提供していくためにはどうしたらいいのかという取組に内容が変わってきたと見ております。
 左下の大都市の取組ですと、いわゆるMaaSアプリというような、経路検索や予約などができるようなアプリを利用者の皆様に使っていただくことで、例えば今はバスが混んでいるから自転車で移動しようとか、逆に電車で移動したほうがより早く移動できるから電車を使おうとか、そういった形で需給の最適化を行う取組。それから、静岡市でもタクシーの相乗り化の実証実験がございましたけれども、そういった取組だとか、東京で言うとオフピーク定期券導入並びに都市部でも自動運転バスの実証実験、ライドシェアの議論なども始まってるところですが、これはいずれも従来であれば、民間事業として競争原理の中にできていた地域で、どのように人手不足の中でやっていくのかという大きな問題への答えと考えております。
 また、右下の地方都市、中山間地域になりますと、より需要も小さい中でやっていかなければいけませんので、デマンド交通化であるとか、そもそも二種免許を持つ方以外が運行を行うような自家用有償の旅客運送化、それから、ほかの生活サービスとの連携。これは例えば移動販売車両とバスをくっつける取組だったりとか、医療MaaSと呼んでますけれども、検査機器を車に乗せて、地域の集会所まで来て、そこで高齢者の方のオンライン診療を行うサービスとか、そうした交通以外の生活サービスとの連携といった取組も始まっているところでございます。
 続いて、12ページ目でございますけれども、こうした取組の例を後ほど詳しく御紹介しますが、大事なのは、この新しい取組をどういった目的で導入していくのかというところに尽きるかなと思っております。
 我々が公共交通の再構築を検討する際に、12ページに記載の3つの円で御説明をすることがよくあるのですけれども、地域の方から公共交通に対する期待といったときに、この1番の利便性と、2番の事業性、3番のシンボル性、この3つを期待されることがよくあると思っております。
 1番の利便性というのは、いわゆる速く、安く、使いやすい公共交通があるほうがいいよねという期待でございます。
 2番の事業性というのは、そうした公共交通が、できるだけ収支率が高い状態、収入の中で賄えている状態。これが地域の方々からすると理想的な状態であるということです。
 右下の3番、シンボル性。これは特に鉄道の議論で聞かれるところですけれども、公共交通というのは単なる移動手段ではなくて、地域の宝であったり、観光資源であるという観点。つまり利便性と事業性では測れない価値があるのではないかということでございます。
 いずれも地域の方から期待が大きいところでございますので、理想としては、この3つが重なる真ん中の領域、こういう公共交通が実現できれば、皆さん御満足いただけるんですけれども、人口密度の低い地方、特に例えば静岡県でいうと伊豆半島の西岸であったり、それから大井川鉄道の北部の辺りだったりでは、この1、2、3をいずれも満たすような公共交通というのは、新しい取組を踏まえても、正直なかなか存在しないのが実情でございます。
 そうした中で、この1番の利便性、2番の事業性、3番のシンボル性、この中のどこに重きを置くのかという議論を地域の中で進めていく必要があるかと思っています。
 幾つか例を記載させていただいておりますけれども、左上に利便性と事業性を高める取組例とありますが、これは例えば、鉄道が持つシンボル性は議論の中で少し優先順位を劣後させて、利便性と事業性に重きを置いて、ドアtoドアのデマンドバスに転換する取組が入るかと思っています。
 あるいは、右上の利便性とシンボル性を高める取組。これは事業性をある意味犠牲にすることになりますので、福島県の只見線のように、ローカル線を上下分離にして、公的資金も投入しながら、地域の観光資源として鉄道を守っていくという取組。あるいは最近の観光地でグリーンスローモビリティという形で、ゆっくり走るゴルフカートのようなものを導入するということがありまして、正直、事業性は余り高くないんですけれども、観光地の、ある意味、観光資源としても使えますし、近距離の移動で観光客の方にとって使いやすいモビリティを導入するという取組だと理解をしております。
 いずれにしても、各地域の中で、この円の中で、どこに落としどころを見つけていくのかというのが、今、全国的に行われている議論だと理解をしております。

○川手参考人
 では、続いて3章、13ページ以降の内容になります。今、御紹介したとおり、地方の公共交通の再編については、様々な手法がある中で、先ほど冒頭に紹介した、スマートモビリティチャレンジの内容も含めて、実際にどんな事例があるのか、あるいはその取組の全体像がどういったものなのかを御紹介させていただければと思っております。
 14ページの図でございますが、少し文字の多い資料で恐縮ですけれども、こちらは今まで行われてきたスマートモビリティチャレンジをはじめ、様々行われてきた公共交通改革の取組について、一覧化したものです。
 スマートモビリティというと、どうもやはり技術がすごく先行して、いわゆる自動運転だったり、AIの活用みたいなところが取り沙汰されるところではありますが、ここでは、スマートモビリティの定義を、地方公共交通をよくするために技術を活用するいろいろな手段といったところで、少し広めに捉えております。
 大きく分類してみると、取組の方向性としては3つ挙げられるのではないかと考えております。
 1つは、一番左の青い箱にあるとおり、個別のモビリティを改善するといったところで、まさにバスのデマンド化であったり、あるいは自家用有償への転換であったり、あるいは価格を、都度払いからダイナミックプライシングを入れてみたりといったところが当てはまるものと認識をしております。
 2つ目が、複数モビリティの掛け合わせと書いておりますけれども、こちらは大きく2つの方向性があると思っていまして、1つが車両統合と書いておりますけれども、端的に言うと稼働率の低い車同士、車両の数を統合することによって、質を維持しながらコストを低減する取組になっていくというところです。
 もう1つが、サービスの統合といったところで、基本的には一定程度利用があるような都市部になってくると思っておりますけれども、それぞれのモビリティで別個に存在している機能をまとめていくことによって利便性を高めていくといった取組になっていくというものでございます。
 最後、一番右の異業種との連携でありますけれども、これも収支であったり、サービスの内容を、交通単体で考えるのではなくて、周辺の目的地となるような、例えば商業であったり観光であったり、あるいは医療・福祉であったり、もっと言うと、物を運んでくる物流であったりとか、こういったところと一体で考えることによって、一つはそれぞれの収益をより向上させていくという左側の移動先との連携といった考え方になりますし、右で言うと、そもそも維持が難しくなってくるような地域について、移動サービスと目的者のサービスを別個に運営するのではなくて、一挙に運営することによって、それぞれの維持可能性を高めていこうといった取組が見られてきているというのが全体像でございます。
 主に地方公共交通の再編となると、やはり一番左の個別モビリティの改善で、これから車両サイズを抑えていくであったりとか、あるいは自動運転を試してみるみたいな形で、ここにフォーカスが当たることが多い一方で、後段で紹介する地域に関しては、この複数モビリティの掛け合わせであったり、あるいは異業種との連携といった形で、いかに交通の目的自体を捉え直すことによって、本質的に、その車両サイズを変えるとか以上にまちづくり全体の中で、どういったサービスが必要なのかといったことを深く検討している事例が多いものと認識しております。
 まず、こちらのページを目次的に使いながら、後段の事例についても簡単に御紹介させていただこうと思いますので、少し頭の片隅に置いていただきたいと思っております。
 続く15ページ以降は、具体的なスマートモビリティチャレンジの採択地域も含めて、先行事例の御紹介をしているものになります。
 15ページが福井県永平寺町でございまして、まさにここはえちぜん鉄道の沿線地域でございます。近助タクシーといって、これは誤字ではなくて、近くを支えるで近助タクシーなんですけれども、平たく言うと自家用有償車になっております。
 先ほどのページの組み合わせで言うと、こちらの地域は自家用有償車をデマンド型で運行して、かつそれを定額制にしている取組になりまして、これまでコミュニティバスを基本で運行していたところを、そこを補完する手段、接続する手段として、この近助タクシーを運営しているといったところになっております。ですので、この運行主体は地元の住民、いわゆるミドルシニアの皆様が運転手となって、車両は町で用意した車両を使って、このサービスを運営しているというのが全体像になります。
 サービスだけで言うと、すごくシンプルになっているけれども、特徴的なのが16ページに示している利用者のグラフでございます。利用者数をグラフの縦軸に取っていて、横軸が時系列を取っているものですけれども、真ん中の点線以降、左と右で、左が定時定路線の運行をしていたとき、右側がフルデマンドと書いておりますけれども、まさに現行のとおり、ドアtoドアでの運行を始めた時期になっております。ここの時点でかなり利用者数が増えているけれども、さらに特徴的なのが青色から緑色になっているところ、これが無償運行から有償運行に切り替えた時点になっております。
 一般的にモビリティサービスの実証実験であったり実装のときは、有償化のハードルはかなり大きくて、自家用車をメインで使ってきた方に有償のサービスを使っていただくのがなかなか難しい現状がある中で、永平寺町の場合は有償化によって利用者数がかなり伸びたというところがございました。
 実際の声を伺うと、無償運行の中で、このサービスの認知度だったり活用が広まって、これは便利だというような認識が高齢者の皆様に広がった中で、こんないいサービスを、しかも運転手がみんな知り合いの皆様ですので、ただでやってもらうのは非常に申し訳ないという声が生じて、有償化の中でもさらに実際にこれは少しお金を払ってでも使いたいという声が増えて、緑色にあるように利用者が増えたという事例があったというところでございます。
 ここまでが実際の流れでございます。
 こういったシステムをつくるとなると、やはり一つ大きな壁として当たるのが運行システムをどうするんだという問題で、よくあるのが実際に事業者のシステムやアプリを使って、年間数千万単位で運営するような形が結構あるけれども、実は永平寺町の場合、裏でエクセルとメールでやっています。
 これはひとえに需要が月間で300人程度、平たく言うと日に十数人で、こういった簡易なシステムでも運営可能だというところで、実は実証実験では、システムを使ったりしていたけれども、実装運行の際には、こういったシステム側をダウンサイジングすることで、なるべくコストをかけずに運行するといったことを実現しているというのが、17ページの内容でございます。
 さらに1点加えると、18ページですけれども、進め方も非常に丁寧であったのが、この永平寺町の取組のいいところなのかなと思っています。事の経緯というのは、トヨタ自動車からデマンドタクシーをやらないかという提案を頂いたところから始まっている一方で、これを単純にデマンドタクシーやりましょうといったところではなくて、先ほど申したように、この地域でやるにはミドルシニアの方を運転主体にした方がいいのではないかという検討を加えながら、そういった内容も含めて住民の皆様に、運行主体がプロではなくてミドルシニアの方ですが、といったところも含めて住民説明会をやったり、あるいは有償化の前にしっかり1年弱、無償運行の期間を設けることによって、利用を浸透させていく。その中でも繰り返し公共交通会議で、しっかりここの議論を重ねながら、先ほどのシステムのダウンサイジングも含めて、地域に合った形を模索していったところが非常に優れている点なのかなと我々は認識をしております。
 ここまでが永平寺町の事例でございましたが、次はもう少しさらに地域としてはいわゆる中山間地域に近い事例の御紹介をさせていただければと思っております。
 19ページの事例は、北海道の上士幌町という町です。ここは国鉄士幌線という路線がもともと通っていたところでして、そこが廃止になって以降、公共交通の話題が常に付きまとっている地域でございます。
 ここは平たく言うと、取組を断面で見てしまうと、単純にデマンドバスの取組になっていますが、後ほど少し御紹介させていただきますが、実はかなり多岐にわたる取組をやっている町でございまして、無人運転であったりとか、あるいはさらに言うと、決済までの一元化であったり、貨客混載みたいなところも取り組まれているところで、先ほどで言うまさに交通の掛け合わせ、異業種連携といったところまで踏み込んでいる事例の一つになっているところでございます。
 やはり大きなテーマとしてあったのは、もともと定時定路線のバスが入っている中で、ただ町のつくりが、本当に一部の地域にしか人が住んでいなくて、実際3人しか住んでいない集落があるような町で、なかなか定時定路線型のバスを常に運行するのは厳しいという事情があったというところでございます。
 一方でデマンドバスへ切り替えようとしても、高齢者の皆様のためにコールセンターを設置して、赤字拡大するといった実情もあるといったところで、思い切ってタブレットによる予約システムを構築して、補助金等も使いながら、住民の皆様にこれを配っていったというのが一つ大きな点になっております。
 下の20ページを御覧いただければと思いますけれども、単純に全てをデマンド化するのではなくて、沿線の人口密度が特に大きい市街地のバスは残しつつ、特に人口密度が小さい、いわゆる郊外線と言っているものでございますけれども、ここをデマンドバスで統合することによって、変遷したところでございます。
 利用者にとっては、利用可能な日程がこれまで以上に増えるといったメリットがありつつ、かつ先ほど申したとおり、定時定路線で運行するより、必要なときだけ運行する形になりますので、コスト削減を両立した事例になっております。
 続いて、21ページでございますけれども、先ほど言っていましたタブレットです。これを単純に交通の予約だけに使うのではなくて、実は非常に多岐にわたって使っているのがもう一つ特徴になっております。
 具体的に申しますと、給食券の精算業務です。高齢者の皆様の給食サービスでありますけれども、この精算であったり、あるいは緊急情報、町のイベントといった情報発信にも使っているといったところで、このタブレットを軸に公共交通サービスだけではなくて、町のサービス全体に有効活用しているというところになります。
 こういった基盤をうまく活用することで、少し枠の大きな話に急に広がってしまって恐縮ですけれども、22ページでございまして、上士幌町の目指す姿というところです。3年後を見据えてこんな姿を描いています。
 今、申したところは、左側の人流の下のところのデマンドバスが基本的にメインになっていますが、ここで集められたデータも用いながら、一部の定時定路線で走っている、いわゆるこの上士幌町の中では町中を走っているバスを自動化するような取組をしていたりとか、あるいはシェアモビリティ、いわゆるカーシェアを配置して、デマンドバスよりさらにミクロな交通を担わせるであったりとか、あとは冒頭申し上げた貨客混載についても、このデマンドバスの空いてるスペースをうまく使って、どこの時間、どこのルートが空いているのかを分析しながら、このデマンドバスを貨客混載していくみたいに、これは人流と物流を兼ね合わせた姿といったところも目指しているのが上士幌町様の姿でございます。
 23ページ目以降は、少し閑話休題というか、話が別の方向に行くんですけれども、これまで日本国内の地に足のついた取組を御紹介してきましたが、一方で今、海外でどういう技術革新が起こっているのかについても、最新の動向を御紹介できればと思っています。
 中国の事例を幾つか載せていますが、当然法規制も違いますし、自動運転の安全規制の考え方は全然違いますので、これがそのまま日本に入ってくるかどうかは別の論点としてありますが、一方で自動運転車両の開発であったり、そういったものは今世界の中で予想以上に速いスピードで進んでおりますので、今後5年、10年の中で、こうした中国だとかアメリカの車両が、黒船のような形で日本にやってくるという可能性も、正直否定できないと見ております。
 23ページ目で、中国のWeRideというバスを事例として載せていますけれども、中国は非常に交通量が多いですが、そうした幹線道路の中を、ほぼ人手を介さずに、時速30キロ程度で自動運転するレベルまで、現状技術的には達しているところでございます。
 こちらの左側に運営会社と書いていますけれども、ルノーだとか日産、三菱といった、日本も含む自動車連合も参画しておりますので、将来的にこうした自動車を日本の自動運転車両として導入を図っていく可能性もなきにしもあらずという状態でございます。
 ただ、24ページ目になりますと、自動運転のバスではなくて、いわゆるロボタクと言われる自動運転のタクシーにつきましても、今、中国国内ですと特区のような形で自動運転できる形になっております。いわゆるレベル4の自動運転についても、一部の市では今実証されている状態で、弊社が視察してきたものはレベル2、場合によっては人手が介入するものですけれども、これも先ほどと同様で、幹線道路の中でも、基本的には人手をほぼ介さずに自動運転で運行できるレベルまで技術的には達している状況でございます。
 25ページは御参考までに、そういう自動運転の車がどういう道路を走ってるのかというところで、幹線道路かつ歩行者や自転車もいるようなところを自動運転車両が走行できる形に技術的には進歩してきているということでございます。
 続いて、26ページ目ですけれども、少し変わった視点で、モビリティというと人を運ぶだけではなくて、物流の観点もあるかと思うんですけれども、ドローン配送についても、この5年程度でかなり技術革新が進んできておりまして、日本でも先ほどの上士幌町で実証実験が行われていますが、まずこの中国の事例ですと、宅配便をドローンで配送するというのが今、社会的にももう商業化されている形でございます。お昼の時間帯に、こういった実証実験を行っている地域に行くと、ドローンでお昼御飯を飲食店から近くのビルやマンションに運ぶということが普通に使われている状況になってきております。
 これまた日本と法規制も少し違ったりしますので、ドローンの大きさが日本よりも大きかったりですとか、そういった違いはありますが、こうした技術革新を使いながら、必ずしも人手で全て物を運んでいくということだけではなくて、ドローン配送のようなものを組み合わせることによって、例えば日本の場合、中山間地域で今、宅配便のネットワークを維持するのは困難になっているという問題もありますので、解決策の一つとして、こういったものもあるんだろうと考えております。
ここまで最新の動向ということで、国内それから海外の事例を御紹介してきましたが、特に今回御関心の強いところとして、その中で県としてどのような役割を果たしていくべきなのかというところもあるかと思いますので、そちらについても考えをまとめております。
 28ページ目で、先ほどの図を基に、都道府県に対する期待を書いております。基本的には各基礎自治体の中で、公共交通の再構築を行っていくというのが日本国内の動きではございますけれども、一方で広域ということで、県、都道府県の力も借りないと、取組を進めることは難しい領域も多々あるかと考えております。
 まず、左下の、いわゆる静岡市や浜松市などの大都市圏ですけれども、こういったところですと、複数の交通事業者、それから商業施設だとか病院、生活サービス事業者がいらっしゃいますので、その間の調整というのは、基礎自治体、あるいは民間事業者単独ではなかなか進めきれないというところは多分にあるかと思っております。
 具体的には、例えばMaaSの乗り放題チケットのようなもので乗ったときに、その収益をどのように配分していくのかというルールづくりであったり、あるいはそのチケットをスマートフォンなどで表示するときに、どのようなアプリケーションをつくるのか、それを例えば静鉄は静鉄だけのアプリにするのか、それとも静岡市全体で一つのアプリにするのか。そういった広域の調整は、ぜひ都道府県の力も発揮していくところかなと思っております。
 また、右下の郡部など中山間地域につきましては、そもそもこういう新しい取組をやろうにも、人手が足りない。そういう新しいものに関心を持って実際に推進していく人手が、役場の中でも足りないという問題がありますので、そういう各地域の中で、公共交通の再構築を主導できるような人材を育成することが大きな課題かと思っております。
 例えば、人材育成のプログラムということで、シンポジウムを開かれる都道府県もありますし、人材の派遣交流もありますし、場合によっては先ほどのスマートモビリティチャレンジのような国の事業、それから都道府県の事業として補助、委託を行っていくということもあろうかと思っております。
 また、特に中山間地域の場合ですと、公共交通の運行領域と生活圏が一致していないという問題がありますので、例えば地元の集落からスーパーに行こうとすると、そのスーパーが隣町ということもありますので、そういう市町村域を越えた形で、先ほどのデマンドバスや新しい公共交通を導入する際には、基礎自治体ではなくて、県の調整も必要になってくるかと思っております。
 続いて、29ページ、先ほど申した静岡市や浜松市など都市圏で、今どういう問題が起こっているのかを絵にしたものでございます。
 左側、現状と書いていますが、今、民間事業者あるいは基礎自治体を中心に、いろいろ新しい取組が進んだ結果として、利用者からすると少し使いにくい状態になっていると考えております。
 例えば鉄道であれば、JR東海の新幹線は専用の予約サイトがあって、そこからバスに乗り換えようとすると、バスの運行情報は別のホームページや別のアプリを見てくださいという形になりますし、さらにバスから一番末端のところで、コミュニティバスだとか、自家用有償だとか、タクシーだとか、いろいろなサービスがありますけれども、そこに乗り換えようとすると、今度、電話予約をしてくださいという形になります。もともと一気通貫で利用できるのが理想だったところを、現状は別々のアプリで予約をして、さらに電話も使わなければいけないとなると、地域の方もそうですし、来訪者の方からすると非常に使いづらい状態になっている。本来、MaaSアプリなどで検索も予約も決済もできて、鉄道から路線バス、さらにはタクシーだとかデマンドバス、こういったものをあまり負担をすることなく利用できるので、自家用車並みに便利になりますよねというのが理想像だったんですが、そこの間で現状、ギャップが生まれていると考えております。
 そうすると、30ページ目のところで、都市部においても、都道府県に対する期待は多分にあるかと思っておりまして、上にインターフェースと書いてますが、アプリなどの検索や予約の手段を事業者や行政区域をまたいでどのように統一をしていくのか。最近、九州ですと、九州広域で九州MaaSということで、一つのアプリをつくろうとしていますけれども、そういった取組は都道府県のお力を借りないとできないところかなと思っております。
 真ん中のサービスというところで言うと、そういう新しいモビリティの導入を、やはり事業者間で調整しなければいけないので、そこも県のお力は必要です。
 最後、一番下、データとありますけれども、そういう統合したサービスをつくろうとすると、乗車の状況だとか、それから収支の状況だとか、そういったいろいろなデータを裏でつなげなければいけませんので、ここは最近、国もモビリティのデータ連携ということでいろいろな構想を出していますが、それを各都道府県の中で、実際にデータとして整備してつなげていくというところ。これは民間事業者で行うにも限界がありますので、都道府県の指導力が発揮される部分かと思っております。
 今はまさに取組の体制、役割をお話させていただきましたけれども、ここから先は、どういうふうにそれを進めていくのかといったところに少し論点を絞ってお話をできればと思っております。
 32ページが、大きく取組のステップをまとめているところでございます。これは先ほどの上士幌町であったり、あるいは永平寺町で共通しているところでありますけれども、やはり取組がうまく進む地域で共通しているのは、このステップ1と3のところが非常に重点的に行われているところかなと認識をしております。
 当然、2番のところで先ほど申したような先行事例というのは、地域に不足しているものをどうやって充足するのかという手段の一例として非常に参考にできるところは多いと思っている一方で、そのまま自分の地域に当てはまるわけでは当然なくて、町の規模も違えば住民の皆様の移動パターンも違えば、生活パターンも違うといったところで、町にとっての構想であったりゴールというのは一体何なのか。それを踏まえたときに、今、ほかの既存の取組を自分たちの町に合わせる、あるいは進化させるにはどういった改善が必要なのかを継続的に取り組んでいくところが非常に重要になると思っております。
 ここは、当然、各自治体の皆様、いわゆる市町村の皆様が検討する部分も当然あると思いつつ、やはり大きなイメージであったりビジョンみたいなものを、県の皆様が発信していくことは非常に重要なところかと思っていまして、そこも少し付け加えさせていただいてるところでございます。
 その内容を具体化しているのが、この33ページのところでございます。ここはいわゆる全体像を書いていますけれども、交通課題というと、やはりよく出てくるのが、冒頭にあったように、バス会社はなかなか経営が難しくなってきているであったりとか、タクシーの運転手の確保が難しいみたいに、いわゆるこの交通に閉じた問題、課題がフォーカスされがちである一方で、やはり非常に重要なのが、その上にある地域課題を捉えていくところかと思っております。
 例えば、交通課題として捉えてしまうと、2段目にあるように、過疎地域において、病院へ公共交通で向かうのが難しくて、高齢者の皆様が医療不全になってしまったり、あるいはもう家族の送迎なしでは移動できないような状態になっているというところがある一方で、そもそもこの地域の課題が何なのかというところに立ち返ってみると、例えば、そもそも過疎化の中で、診療所の撤退が進んで空白地帯が生じてしまっているというような、より大きな課題に考えられる可能性があるかと思っています。
 そうなると、他分野の課題として掲げておりますけれども、例えば、そもそも医師不足が深刻化していることも問題ではないかという話が出てくるという中で、解決手法として考えてくると、当然モビリティサービスで考えると、例えば過疎地と、病院がある市街地をぐるぐる結ぶ自動運転バスを将来を見据えてやっていこうという話もあるかもしれませんし、一方でほかの地域に関しては、オンライン診療を拡大することによって、そもそも移動の必要性自体を少し低減させることも可能なんじゃないかといった課題の解き方もあり得るかと思っています。
 なので、いわゆるスマートモビリティを、まさに打ち出の小づちのように捉えるだけではなくて、いわゆる高齢化だったり人口減に発するような様々な課題を、あくまでも交通の側面から解くための手法であり、その他の分野とも連携した検討をするといった大きな単位でやっていくことが非常に重要かと思っております。
 今言った地域課題を図示化しているのが、34ページの内容でございます。少し内容としては複雑ではありますが、それぞれのアイコンと施設の存在確率、立地確率が50%以下になる分岐点をそれぞれプロットしているものになります。
 下のグラフを御覧いただけると、人口の予測も含めて書いておりますけれども、2015年から40年になるに至って、右側の10万人以上の都市からどんどん都市のサイズが小さくなっていくのが、これから日本で想定されているところでございます。
 こう見ていくと、一番左の1万人以下の都市が増えてくると、どういうことが起こるかというと、Bのところには、一般的な大きさの病院であったり、あるいは有料老人ホームであったり、あるいは商業であると総合スーパー、こういったものがどんどん撤退していって、もう訪問介護、あるいは小さな診療所、あるいはコンビニエンスストアみたいなところしか残らない。本当に都市機能の維持が難しくなってくる町がどんどん増えてくるといったところが、今後想像されるところでございます。
 ですので、後段紹介するように、公共交通をしっかり考えていく上では、その町の方向性として、いわゆるこの交通による接続を保つという方向性でいくのか、あるいは本当に必要最低限のところだけを残して、ほかはオンラインも活用しながら、移動に頼らないまちをつくっていくのか。その双方をしっかりてんびんにかけていくところも非常に重要なのかなと認識をしております。
 35ページ以降、イラストが多い資料になっておりますけれども、今申したとおり、地域の特徴に応じて、デジタル田園都市という言葉も今、国が盛んに行っているところではありますが、本質的な意味でどういった都市を目指していくのかを検討していく。それでこれまでの暮らしを未来へ残していくためにどういう手段が必要なのかを考えていくような視点が重要になってくると認識しております。
 この下の絵は、例えばこれまで鉄道が通っていたところに通らなくなってしまったという状況がある中で、ここを例えばBRTやバス転換をするであったりとか、あるいは診療所も撤退した中で、その建物をうまく使いながらオンライン診療を活用するとか、少しデジタルとアナログを融合したような姿を描いている絵でございます。やはり上の文章で書いているとおり、一定の人口がある地方都市では、周辺の地域であったりとか、いわゆる暮らしの拠点同士のつながりを強めていって、誰でもいつでもどこにでも行けるような町を維持していくといった方向性が基本的にはなるかなと思っていますし、それ以上に人口減少が進んでしまって、先ほどのようになかなか撤退が止められないような地域については、まさにここはデジタル技術をフル活用して、その地域単独ではなくて、周りの地域、あるいは日本全体で、その地域のサービス面を支えていくといった姿が一つモデルになっていくと、弊社としては考えております。
 今、口頭で申したところを具体的に少し書いているのが、36、37ページになっております。
 36ページは、地方都市の場合と少し模式的に書いておりますけれども、ここは鉄道駅をうまく使いながら、基本的に公共交通の利用層になってくる学生であったり、あるいは高齢者の皆様を、介護施設であったり学校を鉄道駅周辺にしっかり集めてくる形を取って、さらにその中で、将来的には自動運転になるようなものも含めて、いわゆるドアtoドアの交通も確保しながら、しっかりこの交通の拠点同士を密接に結びつけていく、その密度を高めていく取組が非常に重要になってくると思っております。
 右側に、会社と自治体と住民、それぞれどういった役割なのかも簡潔に記載しておりますけれども、単純にそれぞれの領域だけで閉じるのではなくて、例えば鉄道会社からも自治体の皆様に、システムであったりポイントシステムの提供であったりは非常に重要だと思いますし、自治体の皆様もそれを軸にしながら、例えば教育サービスであったりとか、健康ポイントみたいな形で、この公共交通サービスをうまく使っていただくような誘因を設けるみたいな取組をそれぞれが連関してやっていくことが非常に重要になってくるかと思っております。
 37ページ、こちらは例えば郡部が当てはまってくると思っていますけれども、やはりかなり取組が難しくなってくるところになってくると、遠隔サービス、あるいはデマンドバスみたいなところで、本当に必要最低限のところはつながりを維持しつつ、それ以外のところはデジタルで基本的に運営していくといったところも、一つ方向性としては考えられると思っております。
 実際に、スマートモビリティチャレンジの中でもこういった実証が行われておりまして、地域の集会所をうまく活用しながら、そこにサービスを車で運んでくるという取組が実際になされております。その車の中で遠隔診療が行われていたり、あるいはそこにJAのATMの機能を一部持ってきたりだったりとか、あるいは移動販売も行ったりとか、今まで本当にすごく長い距離を市街地まで移動していた方が、集会所に歩いて来られる距離で集まって、そこでサービスを享受できるようなまちづくりをデジタルの力を使いながらしていくといった方向性が一つ考えられるのかなと思っています。
 度々お名前を使って恐縮なんですけれども、実際、上士幌町は、先ほど最後、人流と物流のプラットフォームといったところを紹介しましたけれども、まさにこの後者の過疎地域の場合と書いているところを、現に取り組んでいただいているのが、この上士幌町さんの実例なのかなと思っています。
 この38ページに書いている内容、左側が上士幌町で今起こっている、あるいは今後想定される問題を列挙しているんですけれども、これはまさに先ほど5章の冒頭に申した、中山間地域において今後起こり得る課題と言っていたところが、本当にそのまま起こっているのが上士幌町でございます。
 なので、上士幌町の場合、右側の方向性といったところで、やはり単純に先ほど申したところで言うと、デマンドバス以外にも地域外からの人材獲得によって、縮小均衡から何とか脱却していこうというような取組であったりとか、あるいは今申したデジタル活用といったところで、リモート・オンラインサービスを使って、サービスを保っていこうという話であったり、あるいは最後、域内リソースの総動員と書いておりますけれども、そうは言いつつ限られる人員をフル活用して、利便性と事業性を少しでも高めていこうという取組をされているのが上士幌町さんの内容でございます。
 この赤枠で囲ったところ、かみしほろスマートPASSと呼んでいるものが何なのかでございます。39ページ最後の図でございますけれども、これは端的に言うとマイナンバーカードを使いながら、交通だけではなくて、いろいろなサービスを一つのシステムで運用できないかというような、いわゆる都市OSと言われるようなものでございます。これを町のサイズでつくってしまうという取組をやっているのが、この上士幌町の事例でございます。
 なので、先ほど申した福祉バスの循環線、いわゆる定時定路線型のバスと、今実証実験を行っている自動運転バスと、あとは先ほど申したデマンドバスです。あとはほかにもドローン配送であったり、ネットスーパー、スマートストア、あるいはシェアオフィスみたいなところ、域外人材を呼んでくるようなシステム、こういったところも全て一つのサービスに結びつけることによって、実際にどういうところに需要があるのかであったりとか、あるいはそれぞれの移動データを用いながら、バスの再編をより変えていけるんじゃないか、あるいは今、こういう人が増えているから、こんな施設を造ると、より需要が高まるんじゃないか。まさにデータを活用することによって、リソースをフル動員してまちづくりをやっていくというような取組をされているというところになっております。
 ですので、町という観点ではこうだと思いますが、県の皆様も少しこういったところの観点で、それぞれの町がどういった位置にあるのかを一つ指針として御検討いただくといったリード役というところが非常に重要になってくるんじゃないかなと考えております。
 それでは、説明は以上になります。

○宮沢委員長
 ありがとうございました。
 以上で説明は終わりましたので、これより質疑に入りたいと思います。
 委員の方々にお願いいたします。質問はまとめてするのではなく、一問一答方式でお願いしたいと思います。
 それでは、御質問、御意見がありましたら、発言を願います。

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