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委員会会議録

委員会補足文書

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令和4年12月2日逢初川土石流災害検証・被災者支援特別委員会
静岡県弁護士会災害対策委員会委員、日本災害復興学会復興支援委員会委員弁護士 永野海氏 【 意見陳述 】 発言日: 12/02/2022 会派名:


○永野海氏
 弁護士の永野です。本日はよろしくお願いいたします。
 30分の中で少し駆け足になるかもしれませんが、熱海の支援に立っていた者として、あるいは東日本以来、日本全国の被災地で支援を続けてきた者として、お話をさせていただきたいと思います。基本的には、前の画面が見える先生方においては見ていただきたいと思います。できるだけ資料番号も申し上げたいと思います。
 自己紹介は、これを全てもちろん読みませんが、東日本以来、今申し上げましたとおり各地の被災地で現地の支援をしてまいりました。あるいは、日弁連の災害の役員として、各地を支援する活動に尽力をしております。同時に防災活動をしておりますが、本日のテーマではありませんので割愛いたします。
 ページをめくっていただいて、ページの2枚目、本日限られた時間でどのようなお話をさせていただきたいかをまとめています。
 まず、熱海市の伊豆山の土石流災害で我々弁護士を含む専門士業、士業とも言いますけれども、司法書士の先生とか、建築士、税理士、いろいろな士業の人間がどのような支援をしていたかを御説明いたします。
 実際、かなり発災直後から現地に入らせていただいています。その中では、それこそ地元の議員の先生も非常に力をお貸しいただきましたし、熱海市の皆さん、あるいは静岡県の皆さんもかなり積極的な支援をしていただいたと認識はしています。国の制度には、かなりいろんな問題がありますけれども、できる部分ではやっていただいたのかなという実感はあります。
 実際、我々の相談ブースが熱海で入っていたときも、隣には静岡県の相談ブースも設けられていましたし、熱海市の職員さんは我々のところに被災者の方が足を運びやすいような、いろいろな工夫をしていただいていました。資料の配布にも御協力いただきましたし、その場でいろいろな方、罹災証明の発行を受けに来られた方や、あるいはほかのことで総合福祉センターに来られた方も、なるべく我々のブースに声をかけて、寄りやすいようにする工夫はしていただいたかと思います。これはお願いしたことをやっていただきました。
 我々は今回、熱海の次に台風15号の支援活動をしていますけれども、既に2か月で1,000件以上の相談に乗ってます。特に9月、10月はちょっと私自身病気になりそうなぐらい相談が殺到して、しかも被害も大きくて腐心しましたけれども、そういう活動をやっております。ただし、我々が3年前の台風19号や、熱海、あるいは今の台風15号でやっているような支援は、全国で例を見ないものだと、そこは自負してますけれども、さらなる広域災害でそれができるかというと、全くできません。そのことを今日、後半に申し上げたいと思って、今後の対策に生かしていただける部分があればと思っています。
 少し写真を見ていただきたいですが、3枚目です。今申し上げた3年前の台風19号のときから我々は、私自身はそれ以前より被災地で支援活動をやっていますが、静岡県弁護士会あるいは静岡県には災害対策士業連絡会という、12の士業が被災者支援のために組織してる団体がありますけれども、それが初めて活動を現地で行ったのが3年前の台風19号です。
 写真は伊豆の国市ですけれども、これは横に罹災証明の発行ブースがあって、その横で我々が席を設けて支援制度の情報提供を始めていました。重要なのは、静岡県の皆さんによく知っていただきたいのは、各基礎自治体が特に連携するときに、場所だけ提供するっていうだけでも一つの連携なんですけれども、それだけでは全然駄目で、つまり罹災証明を受け取りに来た人には必ず支援制度の情報提供をしないといけないわけです。それを我々がしているわけですけれども、次は、あのブースに寄ってくださいという一声の声がけがむちゃくちゃ重要なんですね。
 つまり罹災証明を受け取りに来られた方は、その目的だけでその他の情報なくいらっしゃるわけです。その方に対し、横に支援制度を情報提供するブースがありますよでは不十分で、もう自動的に身長を測ったら次体重に行ってくださいというのと同じような語り口で我々のところに誘導していただくことが非常に重要で、それがもれなく被災された方に我々が情報提供する肝になるわけですが、それをこのときの伊豆の国市はやってくださいましたし、先ほど申し上げたように熱海市もやってくださいました。
 そういうことの重要性を各基礎自治体に県から発信していただく必要があると思います。静岡市も、今やっていただいていますが、最初その意義が御理解いただけてなかった。もちろんそんなことはなくて、各被災自治体は初めて被災して、何も分からない中で情報提供、あるいは相談のブースの設置を行うわけで、過去の被災地の経験を今後の被災自治体、今は未災地ですけれども、いつか被災地になる皆さんに伝えることが責務だと思っています。
 写真は右側が熱海のときですね。同じようにブースを自治体の申請窓口と同じ場所に設けていただくことで、より寄りやすくなるし、我々が相談を受けたら、そのまま一緒に申請ブースまで行くこともできたわけです。今、仮設住宅のフェーズに入っています。その一番右上の写真は、ケース会議と言われて、伊豆山のささえ逢いセンター――熱海市と熱海市の社協が連携して構成して、その背後から県社会福祉協議会がバックアップしています――が今戸別訪問されているわけです。戸別訪問をして、復興は3年後、4年後です。それまで、健康状態の観察もそうですが、逐次変わっていく状況でどういう御決断をされるのかを、一緒にひざを突き合わせてお話するということをやっています。要するに、相談員さんと一緒に、我々弁護士が仮設住宅を訪問しているわけですが、訪問だけではなくて、今どういう世帯がいらっしゃるのか、ケースを全部我々も一緒に見て、この方は特にやはり支援が必要ではないかとピックアップする会議にも参加させていただいています。
 左下は災害NPOと同じように連携して、水害後の対処を御説明しているところで、右下は今回の台風15号です。
次のスライド行きます。
 件数を4ページで見ていただきたいのですが、3年前の台風19号、この赤い部分に現地相談と電話相談の数を書いてます。見ていただきたいのは、被災世帯との割合です。このとき600棟ぐらい伊豆の国市で床下を含めた浸水がありましたが、実に100件を超える方が御相談にいらしていただいたわけです。弁護士会というのは営業能力ゼロです。広報能力もゼロです。弁護士会のホームページに相談がありますなんて言っても誰も見ないですし、来ようとも多分思わないです。弁護士はそれほど信頼されているとも思いませんし、敷居が低いところだと思われているとも思っていませんので、何が重要なのかというと、やはり静岡県の皆さんによる広報とか、基礎自治体、被災自治体による広報、これが全てですし、先ほどのように罹災証明を受け取ってもらった方全てがもれなく我々のところに来ていただくような、身長の次は体重ですというような形で御案内いただくことが、こうやって一人でも多くの方に我々が支援情報を伝える肝になります。
 これは土石流、伊豆山ですけれども、ここでも全壊を含めた損壊世帯が132棟ありましたが、現地相談だけでも被災世帯数の倍の相談が今日までにいただいていますし、今も仮設住宅の訪問を毎月続けている状況になります。この現地相談が伊豆の国市の被害のときにはわずか5回。逆に言うと、5回しかできなかったわけですが、熱海市のときには7月26日から9月11日までは毎日、土日祝日も含めて朝から夕方まで我々熱海市に入らさせていただいて、支援を続けました。その後、頻度は下げましたが、1年間続けました。
 今の台風15号、被害世帯はもちろん1万件レベルです。その結果既に2か月で1,000件以上の御相談を受けていますが、とにかくこのウエイトですね。被災世帯と相談件数の割合を見ていただければと思います。これも、9月24日の発災ですけれども、これはさらに早く10月3日から土日祝日含めて、静岡市3か所のブースで朝から夕方までずっと相談体制をとってます。今もまだ毎日相談を続けていますし、年内も毎日続けますし、来年も続けてほしいと静岡市から言われているので続ける予定です。既に延べでどうでしょう、500名から1,000名の専門士業が現地に入ってくれています。水害で、この2か月で500名とか1,000名という規模で現地に人を出せる都道府県は、間違いなく静岡県だけです。
 私は全国の大半の弁護士会に対して、意見をさせていただいたり、情報発信する立場にありますけれども、熊本地震とか特定非常災害特措法が適用されるような災害であればともかく、こうした水害でこれだけの専門士業が現地に行っていただけるというのは、本当に静岡県の特異な財産なんです。これをぜひ自治体の皆様、議員の皆様には知っていただきたいし、これを活用しない手はないんだということを知っていただきたいです。
次、5ページいきます。
 5ページは、我々がどんなことをしているかを6項目でまとめましたが、まず1つは徹底的な傾聴です。これは熱海もそうですし、今回の台風15号もそうですし、話を聞いてもらえる人が本当にいないという人がたくさんいるわけです。これは非常に重要なところですが、被災すると被災者同士で被害を共有できるかというと、そこもなかなか難しい面もあるわけです。被害の程度は様々で、あの人に比べたらうちなんてまだましだから言いにくいということもあるし、プライバシーに関わることでそんな簡単に聞けるものではないということもあるし、とにかく被害の話ができる人の存在は必ず必要なんですね。そうしないと、本当に心を壊してしまうと。本当に寄り添って話を聞いて、必要なところに支援につなぐという役割が必要ですが、我々はそれをずっとやってきたわけです。本当は行政がやれればいいのですが、それが難しいというお話は後でさせていただきます。
 その心に寄り添うということがあって、初めて次に支援制度の情報提供となります。最初は支援制度の情報なんて言っても頭に入ってきません。大きな被害を受けられた方々は、もうそんなことを受け付けないのが、本当の被害というものなので、少し落ち着いた段階で様々な角度から網羅的に支援制度の全体像をお伝えして、あなたに使える可能性があるのはこれとこれですよと、これによっていくらぐらいの支援を受けられる可能性がありますよということを、個別に情報提供して御相談に乗っているわけです。
 それで、情報提供するだけではなくて、これは静岡県の特徴でもありますけれども、一緒に申請まで行きます。今の台風15号もそうですけれども、相談を受けたらほぼ全ての専門士業はそこで終わらずに、その場で静岡県あるいは静岡市の担当課に電話をする。熱海市の担当課に電話して、今こういう方が来られているけれども、どこに行けばいいのか、これは要件を満たすのかという確認を代わりにして差し上げるわけです。それだけでも足りません。いくらあそこに行ってくださいと言っても、本当に災害弱者と言われるような、自分だけではなかなか再建ができない方は、窓口まで行けない。行って申請するというのはむちゃくちゃ難しいことなんです、ハードルとして。だから、一緒に行って見届けて、ようやく一区切りという形で我々は支援をしています。
 頼まれた場合には現地調査、私も熱海の伊豆山へ何度も現地調査に行きました。建築士の先生などと一緒に、この状態は大丈夫なのかとか、ここは警戒区域に入っていないけれどもおかしいんじゃないかとか、要望があればまず現地に行くわけですね。それで、我々はスーパーマンでも何でもないので、解決できることなんてごく知れているわけですけれども、やっぱりそうやって寄り添ってくれる人がいるっていうこと自体がとても重要なことで、そこに圧倒的にいろいろな問題があって、今不足してる部分の一つでもあります。
 それから、我々はとにかく相談で何をしているかというと、まず現場の声を聞いてるわけです。今回の台風15号も伊豆山のときも同じですけれども、行政では集められないような初期の本当に相談してみようと、今これに苦しんでいるんだという声を100件、200件、1,000件と聞くと、それはまさに立法事実そのものなんですね。今こういうことが社会で問題になっていて、動かないといけない、住まいが足りない、あるいは仮設住宅に入れない人がこれだけいるとか、そういうことが次々に現場では分かってくる。それを熱海市のときもそうですけど、確か毎日ではなかったですが、少なくとも数日に1回か週に1回は熱海市にどんな相談があって、どんな不満を抱えているか全部フィードバックして情報提供していました。もちろんプライバシーを匿名にした上でです。熱海市は、被災された方が今どんな困り事を抱えているのかを知って、政策判断につなげていくと。これは今台風15号でもやっています。静岡市には定期的に行政に対する要望とか伝え続けています。それによって実現したこともかなりありますし、議員の先生方には非常にお力をいただきました。
 今熱海市でやっていることは、仮設住宅を訪問することで、これは今、私が作った被災者生活再建カードの写真を載せていますけれども、これは、はさみで切ってのりでペタペタ貼っていくわけです。単に専門家が難しい言葉でバーッと言っても、頭には全く入ってきません。相談されている方は、今日は貴重なお話を聞いてありがとうございましたなんてことを言っていただきますが、それは口だけです。実際には、口だけで伝えた情報はほとんど頭に残りませんので、もう枕言葉としてお礼を言っているだけで、意味がない単なる自己満足で、必要なのは後に残る、自分はこの制度を使えるんだという情報、なるべく柔らかいイラストのあるカードで、上に金額まで書いて、窓口はメモ欄に書いて、今どういう支援が受けられるかを、これは私だけではなくて現地のブースにいる全ての士業がこういうことをやる体制を、今静岡県では整えています。
 こういうカードを貼って差し上げると、リピート率は非常に大きいです。この間、このカードを貼ってもらったんだけれども、ここに書いてある公費解体ってどういう制度か聞きたいと思ってまた来たっていう人が3回、4回と来ていただいています。今、静岡市の台風15号は、私が認識してる限りでも一番多い方は8回ぐらい継続相談に来てくれています。この2か月で何で8回も相談に来るかって、一応悪い気持ちがしなかったであろうことが1つ、もう1つは毎日やっているからです。いつ行っても継続して相談が受けられる体制をとっているから、月に1回ではなくて、毎日朝から夕方までいるから、継続相談ができる。今日は、災害ケースマネジメントの話をする時間はありませんけれども、ぜひお調べいただいて、災害ケースマネジメントのまさに一環として、こういう継続相談が位置付けられると思います。
 資料は簡単に御紹介しますが、これは被災者支援カードといって、各ブースに置いているものですが、縦に罹災証明の判定を書いてます、全壊や半壊など。横には日本に存在する支援制度の一覧が載ってます。これを見ていただいたら分かるように、一部損壊の方には本当に支援が少ない。この空欄の数を見ても分かりますし、全壊の方には支援が大きくなる。これが日本の支援制度の特徴です。改善すべき点が大いにあるところですけれども、ただ、こういう関係性すら最初は誰も分かりません。被災者が分からないのは当然ですし、自治体の職員さんも分かりません。
 だから、みんなでこういうことを勉強していただかないといけないわけです。本当は総合的な支援窓口を作っていただく必要があるんですけれども、総合的な支援制度を熟知している職員さんはいませんので、できない。その代わりに我々がやっているわけですが、この問題は非常に大きいです。これを今回静岡市は台風15号で各世帯に配布していただけると、今話を聞いています。
 これはその裏面です。今、7ページです。例えば左上に応急修理制度とありますけれども、それがどういう制度なのか。生まれて初めてみんな聞くわけです。職員さんもほとんどそうですし、被災者の方ももちろんそうです。弁護士だって日本に4万人ぐらいいるかもしれませんが、ほとんどこのことは知らないです。一部の支援をしている弁護士だけなので、なるべく分かりやすく、最後は国のページにまで行けるようなシンプルなカードを作って御提供している。同じようなことをいろんな手段でやっているということです。
 ちょっと飛ばしまして、10ページ目にいくと、左に私が開設させていただいてるYouTubeの支援制度の動画と、右は熱海市との連携で、全ての被災された方に御自宅に配布していただいた弁護士会瓦版、私が徹夜して書いたものですけど、40枚ぐらいの冊子に今お知りになりたいだろうなと思うことを物語形式ではないですけど、読み物として、1回落ち着いて読めるように、一体今何が起きているのか、今後どういう流れになっていくのか、どんな支援制度があるのか、そういうことをなるべく分かりやすくまとめたもので、これは熱海の方のために書き下ろしたんですけれども、今後の全ての被災者の方に使えるものなので、ぜひ勉強していただきたいと思います。僣越な表現で恐縮ですけれども、みんなで勉強していくしか、本当にないものですから、ぜひこういうものを今被災に遭ってない自治体の職員さん、議員の皆さん、一度目を通していただきたいと思っています。
 熱海での支援活動ですけれども、今のような様々なツールを使った情報提供をしたり、現地だけではなく、無料の電話相談をしたり、そういうことをやっていましたし、申し上げたとおり仮設住宅を訪問するといった、今11ページですけれども、支援もやっています。そこで見えてきたいろいろな声を定期的に、ごく一例しかここには書いていませんが、熱海市にも静岡県にも要請して、申入れをさせていただきましたし、これは今回の台風15号でもそうですけれども、やはりこういうときには議員の先生方が物すごく重要な役割を果たしてくださっています。我々は本当に力がない、ただ民間の専門士業ですから、要望する際に非常にありがたい御協力をいただいています。
 それを分析すると、結局我々は、11ページの右側ですけれども、自治体が本来総合支援の情報窓口を作って、あなたにはこういう制度がいい、この窓口に行ってくださいっていうことをやらないといけないのが、それができないので、代わりに役割を果たしているわけです。先ほども申し上げたように、日本全国の弁護士とか司法書士、建築士がこんなことをできるかというと、全くできません。私は多分日本の半分以上の弁護士会にこういう研修に行っていますけれども、私が研修に行ったところさえ、私の力不足もあってできません。雨が降ったって、被害が出たって、こういうことはできないわけです。
 でも、せっかく静岡県ではそれができる体制が現にあり、戦争で言ったら兵隊がいるわけです。それをどう使うかは、自治体の皆さんに日頃から考えといていただかないといけないし、逆に将来的には自治体の皆さんがそれができるようになって、我々はそれを俯瞰するだけという役割になれば、より一層いいなとは思います。サステナブルになると思うので。
熱海市は御存じのとおり、今後復興も3年後、4年後です。そうすると、まず復興計画の話があります。我々専門士業は、一種の翻訳家だと思っていまして、難しい言葉でいろいろ説明される情報とか計画、こういうものをなるべく分かりやすく被災された方に提供する使命があると思っていますが、それも自治体と連携しないといけないと思います。
 実は、間にこういう専門家あるいは士業が第三者的に入ると、無用な衝突を避けられることもあります。つまり、直接向き合うと、やはり不満・不平と守りに入ったような説明しかできないと、お互い全然先に進まないこともありますので、冷静な第三者がいいことも悪いことも含めて説明すると、安心を与えるのは非常に重要だと思っていますし、何せ3年、4年、今後かかる話なので、被災者生活再建支援法の加算支援金はどこに申請してどういう状況でもらえるのかとか、復興計画で自分の家は土地は収用されるのかされないのかとか、様々な選択肢があるわけです。戻るのか戻らないのか。戻らないとしても、もう賃貸暮らしにするのか、年も年だし高齢者施設に入るのか。もう1回やはり安全なところで建て替えるのか。いろいろ選択肢があるのを、ちゃんと知識もあって一緒に相談に乗る人は、本当にいないわけです。今後もそういう役割がずっと続いていくことになります。
 そして、被災して、実際に平穏な生活に戻るまでには、いろんな問題が生じていきますが、それに対して我々は、今13ページを見ていますけれども、電話相談をやったり、いろんなことで情報提供しているわけです。本来自治体がやるべきことと言いましたが、いろいろな理由でそれができません。
 1つ目は、どの災害でも自治体はパニックになります、大きな災害では。もう混乱して、支援制度の情報の提供どころではありません。まず、救助救命活動もあるし、水は止まるし、大量の不満はやってくるし、そういう状態になって、こんなことはどこの自治体もできていません、正直。
 その上で、仮にマンパワーがあるとしても、2つ目、知識がある人はいません。日頃から、例えば私の研修を毎年静岡県の職員が、基礎自治体の職員が聞いてくれれば別ですけれども、そんな体制はありませんし、支援制度の全体像を伝えられる人はいないし、自治体特有の伝えにくさもあります。まだない制度を案内することは、なかなかできないです。責任がある立場なので、そういう問題がいろいろあって、職員がいたとしてもできる人がいない。
 3つ目に、いろいろな制度がまだまだ不十分で、それは我々もそうなんですけれども、説明できる人がいたとしても、制度が足りないので本当の復興につなげられないという問題もあるし、今の熱海市なんかはささえ逢いセンターが厚労省の補助金もあってできてますけれども、全ての災害でできるわけではないし、その体制が整えられているわけではないので。鳥取県は災害ケースマネジメントの条例を県として作ってますけれども、それと同じような体制を静岡県でも必ず整備しないと乗り遅れることになりますし、被災県民を見捨てることになります。災害ケースマネジメントを全員で勉強しないといけないと思っています。
 そういう行政の限界があって、我々がそれを補完しているわけですけれども、それが南海トラフでできるかというと、残念ながらできません。台風19号でできました。熱海でも一応不十分ながら最低限のことはやりました。台風15号でも1,000件相談に乗っています。しかし、南海トラフでは間違いなくできません。まず、相談者の数が、殺到の具合の桁が違います。複数の市町同時に被災が生じますけれども、我々体は一つですので、静岡市の支援をやりながら焼津市の支援はどうしてもできない。さらには我々自体も被災します。今回の台風15号ですら、私の自宅は浸水しましたけれども、南海トラフだとそれでは済まないでしょう。私の事務所自体津波が3分で来る場所にありますから。交通アクセスもありません。そうすると、行けないですよね。数も足りないし、行けないです。
 このまま放置すると、残念ながら誰も行けませんでした。モデル的に静岡市のここだけはやりましたみたいな、本当に自己満足になってしまって、そのために今何をしないといけないかというと、1つはもう研修です。まず職員に我々と同じぐらい、あるいはそこまでとは言わないまでも支援制度の全体像を知ってもらう。支援制度のツールを知っている方すらほとんどいないわけです、今。それぐらいのレベルを、研修をしてボトムアップしていかないといけません。それから、オンライン相談を活用できる状態にしないといけない。そのためには、各基礎自治体にタブレットを置いて、タブレット1つあって、案内者が1人いれば、我々は下田市の人にも相談できるわけです。でも、今その体制は整えられていないし、その訓練すらしていないので、今起こったら終わってしまいます。
 それから、何か絵空言のように思われるかもしれませんけれども、静岡県はあれだけすばらしい防災アプリを持っているわけですね。その延長で、例えば被災制度、罹災証明書って何なのっていうことをLINEに書けば、答えが自動的に戻ってくるような、チャットボットと言われますが、そういうものがあるだけでも全然違います。最低限の情報提供は、今、世の中アマゾンで買物しても、パソコンを返品するのに、人としゃべらなくても返品できます。ヤマト運輸は家まで来てくれます。それは全部AIがLINEのチャットボットみたいなことをやっているので、それぐらいの最小限の情報提供がこれでできるようにならないと、全然遅れていると思います。さらには自分がどの支援制度を使えるのか、どこの窓口に行けばいいのかを教えてくれるアプリ、これを静岡県防災アプリの中に組み込むべきです。今、どうしてもハードとか避難のところにアプリの対象が限られていますけれども、半分以上、生き残った後にやらないといけないのは、支援制度を使った生活再建、復興なわけです。それを防災アプリの中に入れることは不可欠だと思っています。
 それを最後、より詳しくまとめておきましたが、とにかく研修。今オンラインのZoomでも何でもできる時代ですから、みんな一緒にやればいいと思います。県職員も基礎自治体の職員もみんなで毎年支援制度を見直す、あるいは初めて勉強すると、しかもそれをオンラインでやることによって訓練も兼ねられるわけです。その同じ端末、タブレットを使って、災害時には被災者の方にその前に座っていただいて、映像を見ながら相談をしていただければいいので、そういう訓練と研修を同時に兼ねたようなことを今後やっていくべきだと思いますし、絵空言だと思わずに、ちゃんと予算を投じてAIチャットボットとかアプリを開発すると。これが最低限です。
 災害にはどうしても弱者と強者が出ます。例えば強者というのは、貧しい大学生がいて、アパートの1階に住んでいて伊豆の国市で被災しました。床上50センチだったから引っ越さないといけないし、家電も家財も全部やられました。でも、引っ越すお金ありませんという方が我々ブースの僕のところに来たんですね。何て言ったかというと、インターネットで調べましたと。そうすると、災害援護資金貸付というのがあるのが分かりましたと。僕何となく使えそうなんですが、使えるという理解でいいでしょうかと相談が来たんです。これは強い被災者です。自分でぎりぎりのところまで調べて、あとは確答をもらうためだけにブースに来た。でも、こんな人はごく一部なんです。
 私は東日本でもずっと現地で支援をやっていますが、おじいちゃん、おばあちゃんは申請書が来ても封筒すら開けていません。開けてあげるところから始めないといけないわけですね。だから、そこに人を絶対に割かないといけない。そうすると、強い人はどんどんどんどん復興していけるように、こういう自動的な機械で、できる人はもうそれで解決をしてもらうと。できない人に残った人を配置することが非常に重要です。
 そのチャットボットでどういう質疑応答があればいいかというと、たまたま先月静岡新聞さんが我々が作った弁護士会のQ&Aを載せてくれました。これめちゃめちゃ評判がいいんです。もう浜松市でも今台風15号の相談会をやっているし、静岡市でも相談会をやってると、みんなこれを持ってきます。本当は相談しようと思ったけれども、これで解決したからもう帰るわって言って、我々が何とか、いや帰らないでと、ほかにもあるからって言って、引きとめるぐらい活用していただいているんですけれども、こういうものは本来県が作って、配布していただくと、強い被災者の方はそれで救えるんです。最低限、それで解決する人はたくさんいる。だから、こういうQ&Aが例えば手元にAIで返ってくれば、もうそれだけでも全然違う。ちょっと字が小さくて申し訳ないですけれども、参考にしていただければと思います。
 ちょっと1分ほど超過しましたが、これで私の説明を終わりたいと思います。早口ですみませんでした。

○竹内委員長
 永野先生、ありがとうございました。
 引き続きまして、コマツ屋製麺の中島社長よろしくお願いいたします。

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