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委員会会議録

委員会補足文書

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令和4年11月自然災害対策特別委員会
青山学院大学地球社会共生学部 教授 古橋大地氏 【 意見陳述 】 発言日: 11/16/2022 会派名:


○古橋大地参考人
 御紹介いただき、ありがとうございます。青山学院大学の地球社会共生学部で主に地図学や地理学、空間情報学のようなキーワードで学生たちを指導しております。うちの学部には、駅伝の原監督も在籍しておりまして、割と頻繁に、次の箱根も何とか勝てるよういろいろ作戦会議をしております。
 今日はまず50分という時間をいただきまして、いただいたキーワードとしては、防災災害対応とICT、この中で特に今日は大きく2つの話をさせていただきます。1つは、災害にも関連する最新の話題でウクライナです。まさに今日、朝起きたらポーランドにミサイルが2つ落ちていたという状況で、ニュースになっていますけれども、やはりここ1週間を見ても、例えばヘルソンが奪還されるなど、様々な状況が毎日変化していく中で、2月24日のロシアの侵攻以降、いわゆる危機的な状況下という中では、災害と同じような状況がウクライナで起きていると考えていただいたときに、ウクライナで今どういった情報が流通していて、我々がどう外の人間からウクライナの状況を判断しているのかを前半にお話しさせていただければと思っています。後半は、昨年の熱海の災害で静岡県の点群サポートチームの一員として、我々も外側で静岡県をサポートさせていただいたという関係がありまして、古橋がどういう立ち位置で遠隔でサポートさせていただいたのかということと、実際そういった技術の背景は、前半にお話しするウクライナの技術とかなり近いといいますか、時間的には昨年の熱海市での結果を踏まえた上で、我々はその技術を生かしてウクライナの状況にも取り組んでいると考えていただければと思っておりますので、その辺りの裏側の話を、少し技術的な点も多いかもしれませんが、大まかにこういうことが裏側で行われているのだなと御理解いただければと思っております。
 では、少しモニターも見ていただきながら説明します。どういうタイトルをつけようかなというところで、自然災害対策特別委員会なのですが、やはり共通するウクライナの状況しかり、昨年の熱海市での状況しかり、オープンデータというキーワードで今、地図のデジタルなデータが流通し始めている中で、どこまで何が見えるのかを中心にお話しさせていただければと思っています。
 まず、前半のウクライナの状況になります。2月24日は、御存じのとおり、ロシアが急に侵攻を始めたところで、こういった状況の中で、我々も歴史の教科書で習うようなことがリアルタイムにまさにヨーロッパ、ウクライナ周辺で起きていて、それに関連するようなことはもちろん幾つか起きていたわけですけれども、やはり現地からの情報量が圧倒的に多くなってきているところが非常に大きな違いだと思っています。ですので、本当に、日々様々な情報が、それはもちろんフェイクニュースも、正しい情報も入り混じった状態にはなっていますが、そういった情報の中で、どういうふうに我々、一市民という立場でも、一大学教員としての立場でそういった情報を入手して、それをどう分析していくのか。素早く情報を受け取って分析して、次の自分たちの行動に生かしていく。まさに災害の現場で非常に重要なアプローチになっていくと思っています。こういった活動は、最近の言葉でいうと、実はこういうOSINTという言葉で表現されていて、Open Source Intelligenceという言葉を略語でつくった言葉になります。まさに昨年の熱海のときの我々の活動もこれに相当するだろうと思います。静岡県の立場ではなくて、あくまで静岡県の方々と連携していく外側の人間として、でも情報はオープンにやってくるという中で、その情報をどう分析して、どう情報をまた発信していくのかという、こういったコミュニティがまさに世界中で今起きています。
 この言葉が世界中に広がった一つのきっかけは、マレーシア航空がウクライナ上空でロシア軍によって撃墜された事故です。まだ御記憶に新しいと思いますが、誰が撃ち落としたのかを丹念に調べたのが、海外のOSINTのコミュニティで、ロシア軍が行ったことを突き止めました。ベリングキャットというチームが一番有名ですけれども、そういったチームがいたということも含めて、ここ数年でこのOSINTという言葉が非常に広がっているといえます。実は、19日にNHKのBS1のNHKスペシャルで私も含めてこういったOSINT活動、ウクライナでOSINT活動をしている日本人の研究者と海外のチームがテレビに出てきますので、もしBS1を御覧になれる方は、ぜひ後で見ていただければと思います。
 今日お話しするのは、その中でも位置情報です。地理空間情報インテリジェンスという形でGEOINTというキーワードで、さらに細かく細分化できます。全体は、オープンソースとして公開されている情報を基に、どう状況を分析しているのか、その中で特に位置情報に落とし込んだ活動のことをGEOINTというキーワード、Geospatial Intelligenceの略語です。大体、OSINTとGEOINTがセットで語られるのが我々のこの1年ぐらいの非常にホットなキーワードになりつつある状況になっております。
 少しだけデモをお見せします。今私の携帯で、インターネットにつないでいますけれども、グーグルアースみたいな地球儀だと思ってください。ウクライナはここにあるわけですけれども、この中でマリウポリというまち。ちょうどマリウポリで3月から4月にかけて非常に激戦が繰り広げられて多くの方が亡くなって、今は実効支配がロシアになっているところですが、ロシアに実効支配されているマリウポリのちょうど西側のエリア、つまりマリウポリのまちでいうとウクライナ側のエリアでどんどん工事が進んで拡張されている様子が衛星画像でここ1週間、撮影されています。それを今読み込んでいる状態ですが、私の携帯電話のネットワークが、先ほどテストしたときはうまくいったのですが、ちょっと通信が遅いので出てこない状況です。後で、通信が回復したらお見せします。
 もう1つ、これはマリウポリで3月から4月にかけて激戦が繰り広げられたアゾフスタリ製鉄所の状況です。これも見ていただくとこんな感じで、三次元化されています。もともと3Ⅾのデータではなくて、ドローンや衛星などの上空を撮影した画像から三次元データに落とし込んで、それを適切な場所に配置していく。この場所を探すことも先ほどのGEOINTの活動です。この場所がどこなのかを具体的に見つけていき、丁寧にこれを落としていくことによって、例えばロシア軍がこういう犯罪行為を行ったという、ある意味証拠を丁寧に落としていくことによって最終的に様々なロシア軍の犯罪行為が指摘されているのです。それをしっかりとデータで指摘しておくことによって、今後、裁判にかかっていく段階で非常に重要な地理空間情報になっていきます。あと、赤く塗っているのは、見た目の写真だけではなくて、レーダーを使ってこのエリアで形が変化した場所を赤く抽出したものです。こうするとエビデンスも2つになってくるわけです。レーダーでもここがダメージが大きい。実際に見た目上でもやはりこの屋根が完全に落ちている。こういう状況を組み合わせると、この状況はフェイクではなくて、確かにこういう状況がこのとき起きたと指摘できます。もう1つ、これは劇場です。非常に象徴的で、子供たちや多くの市民の方が避難されたところに爆撃されて多くの方が亡くなったことを御存じだと思います。この建物の前にはロシア語で子供たちという言葉が書かれていて、子供たちが避難していることを主張したにもかかわらず、こういうことが行われた、悲劇の起きてしまった場所ではありますが、このデータの三次元化も我々のチームが行いました。これもこの建物の上空をドローンが映像でずっと撮影したものを分析して三次元のデータに落とし込んだ形になっています。
 今日、まずお伝えしたいのは、こういったデータが今、我々一市民が一銭もお金を払わずに、インターネットに接続するだけで入手可能で、かつ、こういったものを自分たちの手で分析することによって、もともと二次元だったものを三次元に展開することができるようになってきている状況をぜひ御理解いただければと思っています。後半の熱海でも、静岡県は、三次元の点群データという、VIRTUAL SHIZUOKAというデータをつくられていますが、やはりこれからの地域、状況の分析の中で三次元データが非常に重要になっていくことが今日の話の一つのテーマになっています。
 では、またスライドに戻ります。
 こういったことがどうやってできるのかと、やはり重要なポイントとして、いつもうちの学生たちに繰り返し言っていることは、とにかく周りをよく見なさいと、観察力がまず大事であると言っています。観察力を身につけることによって、世の中に大量に出回ってくるデータの中から、必要なもの、次の行動に生かせる情報は何か、それを受け取ることで何ができるのか、それらが非常に重要になると言ってます。こういった観察力が重要だということをかなり論理的に私にインプットしてくれた重要人物がスティーブ・コーストというイギリス人です。彼は我々も一緒にやっていましたが、2008年、今から14年ぐらい前に世界中の地図データをみんなでつくる、オープンストリートマップという活動をつくった張本人で、当時まだ彼はロンドン大学の学生だったのですが、その頃からやっていました。もう今は卒業して自分の会社を持ったりしていますが、彼が震災直前ぐらいにたまたま日本に来てくれて一緒にディスカッションしたときに、観察力をどう高めていくか、一つの戦略というか考え方に、OODAループという考え方――OODAと書いてウーダと読みますが――OODAループという考え方が大事だよと、当時彼に教えてもらいました。このOODAループとは何かというと、朝鮮戦争時代のアメリカの空軍のジョン・ボイド大佐が空軍の戦闘機、北朝鮮と韓国の飛行機同士の戦闘であるドッグファイトの結果を分析していくと、どうもコックピットの視野角、どっちのコックピットのほうがより広い範囲を見ることができるかの結果、相手を早く見つけることによって、相手に気づかれずに先に攻撃するのか、それとも状況が不利であれば、相手に気づかれる前に先に逃げるかという状況判断がすぐにできるので、結果としては生き残る、もしくは勝ち残れるということがうまく回っていたんじゃないか、そういうモデルがこのOODAループの考え方です。なので、最初に、必ずObserveという観察するところから始めていきます。観察していき、その次に、2つ目のOがOrientになります。これは方向性を確認するという意味です。例えば戦争中の状態であれば、相手と戦っている中で相手を攻撃するのか、もしくは逃げるのか、どちらにしてもその状況の中で、戦闘状態であるならば、相手と戦争している状況のOrientの中で、自分は戦うべきなのか、それともこの場は1回退避して逃げるべきなのかDecideしていくということです。Observeをずっと続けながら、何か変化に気づいたらOrientを一旦確認して、自分たちは何をやらなければいけないのか方向性を確認した上で、最終的にDecide、決定して自分たちが取るべき行動を決めて、最後それを決めた行動を実行に移すActionに行く、このObserveからOrient、Decide、Actionと、この流れを一つに、それぞれの頭文字を取ったものがOODAループという考え方になります。この考え方をジョン・ボイドや、これを教えてくれたスティーブ・コーストは、このObserve、Observationをいかに素早く回し続けるか、ここが一番重要であると言っています。敵がいなければ、また次のObservationにまた戻ればよくて、Decideまで行ったけれども、何も結局行動に起こさないという選択肢もあるわけで、いずれにしてもOなのか、OOなのか、OODまでなのか、最終的にActionまで行くのか、小さいループ、大きいループ、これらのループをどれだけ早く回せるかが、その状況に合わせて適切に行動する、もしくは行動しないことを決めることが、うまく組織を回していく一つの重要な要素ではないかと指摘されています。
 このOODAループですごく興味深いと思ったのは、最初にプランがないことがすごく重要になります。私も正直、2月24日にロシアがウクライナを侵攻するなんて全く思ってもいなかったのですが、結果としては侵攻されてしまった中で、でも大まかなOrientが決まっていれば、どういう形であれ、こういうことが許せないという大きなOrientがあるならば、それに対してどう自分たちが行動するのかを判断することができる。そういう意味でいうと、よく日本国内ではPDCAサイクルという、プランから始まるループがあります。プランから始まるループというのは5年、10年の数年単位、長期スパンではプランに非常に重要になってきますが、短期間で、もしくは災害が起きたときのように、状況がどんどん変わっていく中では、もともと災害をプランすることはかなり難しいわけです。なので、何が起きたのかというObservationからその状況を判断していくOODAループを、大きなPDCAサイクルの中に細かく回していく、こういった組合せが恐らく災害時でも危機的な状況下でも、仕組みが回っていく、もしくは人的リソースをうまく使っていくことができる大きな要素になっていくのではないかなと思っています。ですので、我々こういった考え方の中で、いかにObservationする力を鍛えるのか、それは一個人の学生であったり、我々の協力者であったり、一個人が観察力を増やす戦略もあれば、それだけではなくて、単純に観察する人を増やすという考え方もあるかと思っています。我々はその観察者を増やす、Observerをどうやって増やすかによって、例えばまちで大きな災害があったとき、危機的な状況下になったときに、その観察者から得られた情報なり、観察者自身が行動するという形の情報の共有をしていく、インターネットがそこを介在してくれることによって、いわゆるクラウドソーシングの考え方です。インターネット越しに様々な現場にいる人、後方支援する人、みんながつながりながらも、様々に情報が行き交いながら、その現場、現状を把握して、素早く行動に移していく仕組みが回っていくのではないかと考えています。これがICTの当たり前の世の中にきっとなっていくと思っています。
 あとは、ウクライナって実際どういうOSINT、GEOINT活動をしているのかです。先ほどマリウポリなどいろいろお見せしましたけれども、基本的に最初に出てきたのは衛星画像です。ドローンはその後ぐらいです。大体1か月後ぐらいには、ドローンのデータも出てきました。私が今年非常に驚いたのは、2月24日にロシアがウクライナに侵攻した翌日、2月25日からアメリカの衛星会社が24日の被害状況を撮影した衛星画像をインターネット上で公開しました。それを25日の午前中に私が位置情報を正しくつけ直して、それをまたOSINT、GEOINTの仲間に共有することをその日のうちにやったのです。では、どういうふうに裏側でやっていたかというと、例えば、これはロイターが、アメリカのMaxarという衛星画像の会社が撮影した衛星画像、キーウの西側の橋が破壊されていますという衛星画像を公開しています。このデータには正確な位置情報がついていないので、正直、我々日本に住んでいる人間としては、これがどこなのか全然分からない形です。これがまずどこにあるのかを、正確に位置を特定することによって、この情報の分析ができていきます。そうすると、これはどこなのかと分析をしていくためには、この衛星画像を読み取っていかないといけないのですが、ここにも観察力が利いてくるわけです。川が流れているとか、道路があるとか、いろんな要素があるわけですけれども、そもそもこれが偽物なのかどうかを判断しなきゃいけないとか、あとはこれどこに実在するのかとか。こういった情報を見ていくと、例えばここにUターンの立体橋があるなとか、ここに駐車場があって、ここによく影がはっきり映っていますけれども、まず影の分析をしていくと、北半球でこの時期だったら太陽の光はこっちの方向から来るとすると、今この画面に向かって左上から太陽の光が当たっている。これは北半球でこの向きってあり得ないわけです。普通南から回ってくるわけですので、影は北側に落ちていくのが一般的なので。そうすると、これを見た瞬間に、そもそもこの画像は、ロイターなのかMaxarなのかどっちか分からないけれども、画像の南北方向が大きく逆転されている画像であると分析できます。こういう細かな分析を積み重ねていって、さっきのOSINT、GEOINTのチームは、この画像が多分ここにあるのではないかと特定していきます。あとは、我々グーグルとも連携していまして、グーグルアースでこの場所が実現するのかを調べていきます。これもグーグルアースは無料で使えますので、我々はこのグーグルアースを見ていく中で、Uターン立体橋が、ストイアンカという町だということはロイターの記事には書いてはありましたが、町の名前しか書いてなかったので、ストイアンカのまちにUターン立体橋を探し当てると、グーグルアースでこういうふうに写っています。そうすると、先ほどの画像と少し違います。先ほどは川がありましたが、グーグルアースには川は写っていないと。今度は、こういうのはどこにあるのかを分析していくというところで、こういった道路と川が大体90度に交わるような位相構造ですとか、そこに隣接する農地の形だとか、隣接状況みたいなことを土地利用とか地表面の状況を見て、グーグルアースと突き合わせをしていくわけです。そうすると、グーグルアースでは、こういう場所が見つかります。これを見つけて、私はここだと分かります。一般の人たちは、なかなかここにまずたどり着けないです。なぜかというと、さっきのUターンの立体橋がないので、さっきと違うのではないかと思ってしまうわけです。でもここにさっきの土地利用条件と南北方向を当てはめると合致するんです。何が言いたいかというと、先ほどのロイターの画像を重ねると、もともとここにあるはずのUターン立体橋がグーグルアースに写っていないことが分かります。これはなぜかというとこのUターンの立体橋はつい最近造られたもので、グーグルアースは2019年、つまり3年前の撮影された衛星画像が使われていたので、結果としては写っていなかったということになります。いずれにしても、こういった時間軸での分析をしながら、これが正しい位置に落とし込められるかどうかを逐一チェックして、やはりこれは確かにここにあったよね。次に、それではこれを誰が破壊したのかというまた細かな事実を積み上げていく形になっていきます。キーウの北西のほうにブチャという町で、かなり民間人の方が殺されたので有名になったところがありますが、あの町も実際衛星画像を落としていくと、ここ数年、町自体の都市化が劇的に進んで変化しているところなので、こういった作業をやるのは非常に難しいエリアになります。いずれにしても、我々OSINT、オープンソース、オープンデータを活用して、現地の状況を分析していく人たちの中でのこういったひたすら正しい位置にきちんとデータを配置して、それを特定して共有していく活動が一つ大きな軸になっています。この辺りは技術的な話ですけれども、それをグーグルアースとか、誰でも見えるツールでちゃんと展開することです。KMZとKMLと書いてありますが、ここで大事なのは、特殊なソフトウエア、例えば地理空間情報ですと、GISという地理情報システムが、例えばそのソフトウエアを使うのに1ライセンス100万円かかるソフトウエアですと言ったら、一般市民の人たちは誰も使えません。けれども、グーグルアースであれば誰でも使えますので、我々はこういったデータをグーグルアースで誰でもアクセス可能な状態にして、これがKMZであり、KMLという形式ですが、こういった形にしてみんなに再配布することを行いました。あとは、それが誰でもアクセス可能なプラットフォーム、この場合には、ギットハブというプラットフォームを使っていますが、こういったプラットフォーム、誰でもアクセス可能で、誰でも利用可能なものをうまく組み合わせることによって、当たり前に情報が流通するようになります。なので、ここで大事なのは、グーグルアースしかり、ギットハブしかりですけれども、誰でも自由に使えるツールを選ぶことが非常に重要になります。あとはそれをツイッターとかSNSで拡散するわけです。多分これ、ここだよねと私がツイッターに投稿すると、そのデータをまたツイッター越しに誰かが受け取ってくれる形になります。ですので、今のICTを使いこなしている、特に若い人たちは、こういったツイッターとかギットハブとかグーグルアースみたいなものがあって当たり前で、それを使いこなして当たり前の世界になってきています。逆に言うと、もう今の高校1年生から下の世代、いわゆるGIGAスクール構想の1期生から順々に育ってきています。彼ら、彼女たちは1人1台デジタル端末を当たり前に渡されていますので、こういったツール、グーグルアースも含めて、これを当たり前に使いこなすのと、私がウクライナでやった分析作業のようなことは、実は小学生でも少し勉強すれば、少し練習すれば誰でもできる作業になってきたりします。ですので、そういった世代が今高校1年生なので、2027年、2028年ぐらいに彼ら、彼女たちが大学を卒業して社会に出てきたときに、恐らく全体的なICTのスキルそのものはぐっと底上げされると私は期待しています。そういった世代が例えば防災や、まちの安心・安全に関わる部署に配置されたときに、彼らたち、彼女たちがこういうツールを、多分ツールの名前がそのときにはまた変わっているかもしれないですが、当たり前に使う世代になっていくということです。
 あとは、SNSを使っていると、ふだんコミュニケーションをリアルでやらなくてもSNS越しに同じような技術を持って、同じような興味を持っているメンバーと連携することができます。これは東大の渡邉先生で、今度NHKに私と渡邉先生と二人で出演してきますが、このメンバーとデータをみんなで共有していこうと、グーグルアースに展開していくことと、あと先ほどのツール、グーグルアース等に展開すると、見た目だけではなくて、穴の大きさだとか、距離だとか、まさに昨年の熱海の災害でいうと、盛り土の体積のような定量的な分析まで展開することができるのが非常に重要になってきます。ですので、単に正確な位置を落として終わりではなくて、その正確な位置を与えることによって、そこから導き出せる定量的な数字が、それが現場を支援していくときの非常に重要な参考情報になっていくことになります。あとは、様々なツールを組み合わせていく中で、ウェブブラウザでこういったデータを見られるようにします。我々の活動以外にも、我々の仲間でYouTubeで、ウクライナの状況のライブカメラをあちこちに設置しているのを取りまとめて、それを地図上に展開して、いつでも、どこでも、どこで何が起きているのかを映像で伝えるようなマッピングをするチーム。あとはうちの学生たちに手伝ってとお願いしたのは、ウクライナからウクライナの周辺国に避難する人たちが、地図がなくても、スマートフォン1つあれば、適切にポーランドやモルドバやほかの受付場所までたどり着ける詳細な地図をつくることで、うちの学生たちが遠隔で地図づくりに支援していたりしています。
 前半、ウクライナの話をさせていただきましたが、共通しているのは、やはり情報が大量にやってくる中で、どういう情報が必要で、どのようにそれを処理していったらいいのかをまず観察して、その見つけたデータで必要なものをチョイスして、分析していく。そういう意味でいうと、情報を入手して、分析して、その分析した結果から判断をして、さっきの行動、いわゆるOODAループですね。ここまで持っていくことを迅速に行うことによって、地理空間情報、GEOINTのコミュニティがこういった分析をしていく一つの情報源になっていくと考えているところです。
 まず、ウクライナの状況はこういった形で、いずれにしても災害時、危機的な状況下で私はあくまで地図、特にデジタルな地図を前提としながら我々に何ができるのかを皆さんに共有しています。特にドローンも含めて新しい技術をなるべく地図づくりにどう生かしていくのかという中では、うちの相模原キャンパスで原監督や駅伝のチームはこの周りをぐるぐる走っていますけれども、このキャンパスの上空を自分のドローンを飛ばして撮影して、そのデータから三次元のデータをつくるとこんな形の三次元地図ができます。まさに静岡の、VIRTUAL SHIZUOKAの三次元点群と同じようなものが、私自身でもできてしまう世の中になっていますので、こういったデータをどう使うのかとか、どう可視化していくのかを学生と一緒に取り組んでいるところです。こうした技術の背景として何となく意識していただきたいのは、でもこういうことって既にグーグルマップやグーグルアースがあれば何でもできるよねと思われる方がすごく多いです。もちろん、ウクライナの状況も我々はグーグルと連携してやってはいましたが、でもグーグルだけではできないことがたくさんあって、できないことを我々が手を動かしてやってたという形です。ちょうどグーグルアースとマップは同じ年に世の中に出てきたのですが、今から17年前になります、2005年にグーグルマップとアースが出てきて、誰でもスマートフォンやパソコンで地図情報や航空写真、衛星画像に触れられるようにはなったのですが、でも残念ながらそれはグーグルの都合で、技術的にはすごく変わってはきて、すごく処理しやすくなったという技術的なよさもありました。2005年から2021年までの年表とかも授業用に私はこれを自分で作って、グーグルアースも日々更新していくのを追っていくと、技術は優れていますけれども、でもグーグルでできないこともやっぱりあるなというのは17年追いかけていって気づいているところです。それが今日の一つの大きな軸であるオープン化です。
 グーグルが提供する情報は、先ほどのグーグルアースにはまだ2019年のウクライナの衛星画像しかないので、古いわけです。他にも、それを自由に使っていいかというオープンな状態、状況。これは誰でも自由に許諾不要で商用利用可能なという意味でのオープンになります。なので無料で誰でもアクセスできるだけではオープンではなくて、アクセシブルだけど、オープンではないのがグーグルの仕組みです。やっぱりそれを我々は自由に使いたい、しかもそれを商用利用も含めて自由に使えることによって、様々な可能性が広がっていくと考えていますので、こういうオープンな使い方をグーグルマップ、アースでは結局できないんだなと感じています。そういったことを感じていく中で、我々が2008年に出会った、先ほどのスティーブ・コーストが始めたオープンストリートマップという、まずは自由にみんなが地図データにアクセスできる世の中をつくりたい中で、我々もこの活動に参画しました。少しだけその当時の映像を見ていただければと思いますが、2008年の1年間を早回しでオープンストリートマップの地図データを編集していく作業を見ていただきます。イギリスのとあるまちからズーム、ワイドになっていきますけれども、白く光る瞬間が出てきます。この白く光る瞬間が例えば道路の中心線だとか、建物の外形とか、地図を構成する要素を誰かが入力した瞬間が白く光っています。こうやって見ると、当時からヨーロッパとか、主にドイツとかすごく熱心にボランタリーにみんなで地図データを一斉に更新しているのです。この当時、アメリカは、行政が持っていたオープンデータをオープンストリートマップに流し込んで一気に面的に塗り潰されています。こうやって見ていただくと、まだ当時は、日本、アメリカ、ヨーロッパなどの先進国と、あとちょうど私はJICAのプロジェクトでブラジルに赴任中だったのですが、私がブラジルにいたときに、ブラジル人にこのつくり方を教えてブラジル人と一緒にブラジルの地図をつくったこともありました。今インドが全体的に光りましたけれども、この当時、インドは、オランダの地図会社が持っていた古いデジタルなインドの地図を、このオープンストリートマップに寄附してくれた状態が今面的に塗り潰された状況になっています。
いずれにしても、この映像が示しているのは、世界中の人たちがボランタリーに自分の時間を使って、自分たちの住む地域の地図を更新していくことをひたすらやると、先ほどの映像の最初は東京の中心部でもこんなにすかすかな地図だったのですが、今年、同じ場所をスクリーンショットで撮ると、こんな地図になっています。これが国土地理院でもなくて、ゼンリンでもなくて、行政でもなく、単なる一市民がボランタリーにつくった地図が今このぐらいの精度でデータが出来上がっていますし、東京駅も拡大すると各プラットフォームなど全部入っています。三次元の建物データとしても部分的には成立しているので、新宿の超高層ビル群なども建物の表面の色とか素材まで入っていたりします。ですので、三次元の地図そのものは、先ほどの点群というデータもあれば、こういったオープンストリートマップの三次元の建物データも含めて、様々な情報が今流通し始めている状況になっています。しかもこういったデータを更新してくれるクラウドソーシングの一市民の地図ボランティアの人たちが世界中でカウントしても、一昨日ぐらいにカウントしたものですけれども、940万人ぐらいのユーザーアカウントが延べでつくられた形になります。多分来年ぐらいには延べ参加人数が1000万ユーザーを超えていくでしょう。これは地図の入力者であって、地図を使うユーザーというよりも地図のコントリビューターというべき、貢献した人たちの数でこのぐらいになります。これが年々増えて、まだ右肩上がりに増えてきているという形なので、このように地味だけれども、みんなが当たり前に地図データを更新する時代になったからこそ、誰でも当たり前に地図データを使える、アクセス可能な状態になってきていて、グーグルマップではできないようなオープンな地図の使い方が実現してきています。我々はこういった状況を地図の民主化と呼んでいて、今まで地図は国土地理院やゼンリンなど、いわゆる組織がつくってきた地図が、我々一市民が自分たちの力を持ち寄って部分的につくった地図を集めることによって、詳細な世界地図になり利用可能になってきています。先ほどのキーワードであるオープンなデータですので、このオープンなデータであることによって、我々は商用利用も自由に使っていいと公開しています。この商用利用可能なデータを公開していくことによって、ふだんから当たり前にあるサービスの中に我々の地図データが埋め込まれていきます。例えばポケモンGOです。今日ちょうど新幹線で静岡駅に来て、ここまで来るときに地図アプリも出しながらも、ポケモンGOも両方切り替えながら来ました。私はゲームとしてやっている以上に、我々がつくった地図データがポケモンGOに使われているので、ポケモンGOの画面を見ると、このエリアの我々のつくったオープンストリートマップの地図の更新状況が分かるので、かなりこの辺りは既に充実しているエリアだということも分かります。あとは、インスタグラムとか、マイクロソフトの目が見えない方向けの音声ナビゲーションのアプリとか、様々なふだん使いのアプリに我々の地図データが使われていますので、逆に言うと、こういったデータを当たり前に使っている人たちが何か災害が起きたときに、こういったサービスをふだん使いすることによって、我々が迅速に更新する地図を素早く受け取れることがこの先に待っています。ですので、今日の大きなテーマである災害時にこの地図、ボランタリーな地図づくりがどこまで今、力を持っているのかを残り時間でお話しします。
 私も最初の頃は、災害にこういった地図づくりが役に立つと正直思っていなかったのですが、これは2010年のハイチの震災の映像で、先ほどと同じものです。2010年1月12日、首都直下で大きな地震が起きたのは御存知だと思います。その後、先ほどと同じように白く光った瞬間が、地図が更新された瞬間になってきます。赤く光ったところが震源で、その後白く、首都直下だったので、首都全域が白く光り始めていきますけれども、ハイチの状況が悲惨なことになっていることに気づいたオープンストリートマップのコミュニティが遠隔で日本とかドイツとか世界中からデジタルにクラウドソーシングで地図データを更新していった作業の映像になります。ブルーで光っているのが、我々が航空写真とか衛星画像を使って避難所として見つけた場所です。日本と違って、どこに避難所がつくられるか全然決まっていないので、そういったものを目視でどんどん判別して、我々はこの活動をする前、すかすかな地図が先ほどと同じように数週間ぐらいでもう詳細な地図がインターネット越しに現地に行かずしてつくれました。そのときに重要だったのが航空写真です。空から状況を素早く撮影したデータを米軍やNASAなど様々な組織から送ってもらって、それを基に地図を更新していきました。ですので、衛星画像しかり、ドローンしかり、それ以外ドイツの赤十字のチームはもう自分たちの隊員が全員GPSを持ち歩いてどこを歩いたかを記録してくれたりとか、あとCIAが古い紙地図を提供してくれて、道路の名前の入力に使えたりとか、いろんなソースを提供してもらえたので、災害が起きたときに、まちが大きく変化した状況をデジタル地図として素早く更新していく技術が今、我々の市民サイドで技術的に可能になってきたという形です。
 これは2010年のハイチのときに、我々は遠隔でサポートして、この技術は多分日本でも大きな災害が起きたら役に立つと考えていた1年後に東日本大震災が起きました。ですので、ハイチでやったことと同じことを我々sinsai.infoというプラットフォームで当時立ち上げてやっていたのですが、同じようにリアルタイムに地図を更新する活動と、その上に情報を乗せていく活動、これは2013年の伊豆大島のときもそうですが、とにかく情報が入ってくれば、それをみんなでわっと更新する。2013年の伊豆大島の土砂災害はまだ夜が明ける前に、台風が過ぎ去った後に土砂災害が起きて、多くの方が亡くなりましたけれども、こういった状況下の中で、その日のうちにこの土砂災害のエリアを我々はマッピングできました。これで何ができたのかというと、この土砂災害の起きた場所の近くを塩の精製工場をかすめて土砂災害が起きたのですが、塩の精製工場そのものは無事だったのです。ただ、ニュースでその日のお昼ぐらいの報道では、伊豆大島の元町エリアの被害が非常に甚大であると報道されてしまいました。我々としてはこのデータを素早く更新しました。その塩の精製工場の社長さんが、我々の地図をたまたま見つけてくれました。取引先がニュースを見て、取引中止と言ってきたそうですが、うちの工場は無事だよということを口頭で説明しても説得力がないので、たまたま我々がその日のうちに更新しておいたこの地図を見せて、うちの工場ぎりぎり大丈夫でしょ、だから取引は止まらずにきちんと提供できますよという形で、ある意味、BCPの考え方でビジネスが止まらなかったことをすごく喜ばれたと、半年後ぐらいに、我々、聞いています。いずれにしても、我々はこういった素早く地図を更新する技術をコミュニティとして持っていて、これがどう世の中に役に立つのかをいろいろな地元の方々とか、様々な人たちと一緒に連携を取っています。同時並行でフィリピンでも台風があったり、これはエボラ出血熱が広がったアフリカの西側のマッピングとか、ネパールの地震のときのカトマンズの地図を更新したりとか、日本中、世界中、熊本の地震もそうですけれども、とにかく何が起きたのかの情報を航空写真や衛星画像でどんどん受け取ることができるならば、我々はそれを素早く更新することができますよということです。いろいろな事例を御紹介しましたが、この中ですごく重要なのは、とにかく何か起きたときの発災後、さっきのウクライナもそうですけど、空からの衛星画像、もしくはドローンでもいいのですが、空から現地を撮影した情報さえ公開してくれれば、オープンにしてくれれば、我々すぐに地図にできる時代になっています。
 結論に行きますが、これらは、待っていてもなかなかできないところがあります。もちろんウクライナの状況は私もびっくりして、翌日から衛星画像に出てくるのは驚いたのですけれども、待っていてもできないならどうするのか。我々が始めているのは、航空写真を撮影する活動そのものも市民ボランティアでできないかと考えた活動で、災害ドローン救援隊DRONEBIRDという活動になります。これはNPOとして、一般市民の人たちが今当たり前にドローンを持ち始めている時代です。今年また、航空法が改正されまして、新しく12月5日から日本の国家資格としてのドローン操縦パイロットが1級・2級の資格制度が始まりますけれども、そういった資格もこれから取りつつも、そういったスキルと経験を持っている人たちが災害時に市民ボランティアで航空写真をみんなで撮ることができるのではないかということです。アイデアとしては、みんな誰もが1人1台自分のドローンを持つ時代が仮に来たとするならば、一般的に売られているドローン、今数万円のドローンで少し練習すると半径300から400メートルぐらいの航空写真は、実は誰でも撮れる状況になっていますので、あとは、やり方を覚えるだけになります。ドローンもいろいろなドローンがありまして、もっと広い範囲を撮影できる翼のついたタイプのドローンです。まさに今ウクライナでこういったドローンが活躍していますけれども、それを活躍と言うべきなのか、ロシア側もウクライナ側も使っているわけなので、その結果、人の命に関わってきてはいますが、こういった羽のついたドローンですと、長時間広範囲に一気に飛ばすことができるので、複数の自治体をオーバーラップして一気に撮影することも実はできるようになってきています。我々の目標としては、現地にいる人が自分のドローンで飛ばすと、例えば発災後1時間以内に撮影して、そのデータをインターネット越しに共有してくれる時間差を考えても、技術的にうまくつなぎ合わせれば、2時間ぐらいで発災後の航空写真が市民サイドから公開できるのではないかと考えています。ここは今、我々の技術的なチャレンジです。今年はさらに状況がよくなっていまして、今ドローンにSIMカードが刺さる時代になりました。ですので、この2時間後は、ドローンで撮影した後、データを一回着陸させてSDカードを抜いてですね、そのSDカードをコンピュータで処理して公開するのは2時間ですけれども、今撮影しながらSIMカードでキャリアの4GのLTEで接続可能になりつつあるので、うまくいくと、多分1時間とか、下手すると本当に30分以内という、空を飛びながらデータを公開できるのが、来年、再来年ぐらい行ける手応えも感じています。いずれにしても、我々は発災後、迅速に航空写真を市民サイドで公開する。まずは2時間後で、ゆくゆくはもしかするとリアルタイムで行けるかもしれないところの中で、これをどう実現し、社会実装に落とし込んでいくのか。今我々が実際にやっているのは技術的にはできます。あとは社会的に、世の中としてそれがしっかりと実装できるのかで、まずはそれを行っていい場所といけない場所といいますか、航空法や電波法、いろんな法律を守っていく中で、その地域と事前に災害協定を結んでおくと迅速に行動できるので、今我々はNPOを立てながら、各地域の基礎自治体と、地道に災害協定を締結して、そのエリアに関しては、災害が起きたときには迅速に我々が撮影しますという協定を交わして、実際の活動に挑んでいます。固定翼機が大事なので、固定翼機を一緒に首長に見せて説明しながら、今現在、35自治体と協定を結んでいる状態です。関東圏がまだまだ多いです、残念ながら静岡県内はどことも協定は結んでいないですが、関東圏とあと名古屋とか関西地域にはあります。全国1900近くある基礎自治体の中で、まだまだ少ないところではありますが、だんだん面的につながってきたところです。あとは、協定を結ぶだけではなく、自治体と一緒に定期的な訓練をしながら、実際に我々こういった固定翼機を使って、東京都の稲城市長と去年、稲城市全域を訓練の一環で飛ばさせてもらうということも実際にやっています。2019年の災害のときには、我々の活動で大体約100平方キロメートルを市民サイドで一気に撮影しました。これは、千葉県君津市の屋根被害や相模原市の土砂災害とか、こういった状況を行政と連携しながら速やかに撮影を行っていく形で、我々、これらの活動も基本的にはNPO団体を立ててはいますけれども、この活動、全部自腹でやっています。大体、災害協定を結ぶと実費は行政から出るのですが、我々、あえて災害時の支援活動に関しては全部持ち出しでやっています。理由はいろいろありますが、最終的に我々はデータを公開したいので、オープンにしたいのです。行政と協定を結ぶと大体行政から実費ももらいつつも役務として受けたりすると、結局データを納品するような形になってしまい、データのライセンスを行政側が決めてしまうと、大体オープンにならないことが多いのです。なので、そこの点で、我々が撮ったデータは公開するので、我々の判断で我々の責任でやります。その代わりに公開する前提として、個人情報保護に引っかからないかは個人情報審議会でそれぞれの自治体でチェックしてということにはなります。そういった状況下で大事なのは、航空法の災害時の例外適用だけは我々の団体に事前に委託してねと、これだけです。そうすると我々も航空法をある程度、緩やかに運用することができるというような形で、今までの数年間運用していく中で、概ね72時間以内の撮影が可能であることと、あと24時間以内のデータ提供は概ね実現できてきたところです。あと安全管理の部分でも、都道府県レベルで災害対策本部の中に陸上自衛隊が中心、リエゾンとなって、臨時の航空管制が引かれますけれども、そこに我々、入れてもらうこともだんだん広がってきていますので、我々が勝手にやっているというよりも、しっかりと地元の災害対策本部の航空管制と連携することが大事だということが、神奈川県と一緒にやって分かってきたことです。この辺りも含めて2019年のときに、そのモデルが出来上がってきまして、我々も県庁内の災害対策本部の航空管制と連絡が取れるようになってきました。今、これを今年度中に神奈川県とも正式に災害協定を結ぶことまで決まっていて、今度、東京都庁といろいろな自治体との協定ですね、基礎自治体との協定プラス都道府県との協定の二重の災害協定を結ぶことによって、安全に、警察署や自衛隊と横並びで、我々市民ボランティアの航空写真測量チームみたいなものが、今出来上がってきている状態です。ですので、今、我々は災害協定を軸にしながら、基礎自治体と都道府県の二重の災害協定をきちんとつくっていくことに少し力を置いています。あとは訓練を通して事前の離発着場所を決めておくとか、地味なことをいろいろやっていかないといけないです。あとは激甚災害になると、本当に国際連携が結構大事になってくるので、今国連のチームや世界銀行のチームと一緒に、我々の技術を海外のチームも使えるようにしていく。あと激甚災害のクラスだと本当に我々の活動の肝になるインターネットすら使えない可能性があるので、国連のところに、PKOのチームのように僻地に行ってもインターネット上にある地図を当たり前に使える地図サーバー、Raspberry Pi、これがサーバーシステムなのですが、これを持っていくと、Wi−Fiが飛んでいて、ここに接続すると外部のインターネットではなくて、ローカルなインターネットとして地図サービスが提供可能で、我々が現場で撮った航空写真もその場で配信することができるような技術も国土地理院と国連と一緒につくってやっています。
 最後に、昨年の熱海の災害のときに我々がどのようなことができたのか、話をまとめて終わりにしたいと思います。
 我々は先ほどお話ししたとおり、静岡県内と災害協定を結んでいなかったので、熱海の土砂災害が起きたときには、正直遠隔で状況を見守るしかなかった。災害協定を結んでいなければ、ドローンを持って現地に行っても混乱を来すだけなので、外から見守るしかないということでございます。あとは当日、雨が降っていて、なかなか難しいところもありました。ただ、静岡県とはいろいろな形で連携を取らせていただいていたので、関係者から静岡点群サポートチームで遠隔サポートに入ってとインターネット越しに声をかけられて、いわゆるVIRTUAL SHIZUOKAのプロジェクトに関わっていたメンバーが急遽呼び出されて、私もその一員として参加し、産官学バランスよく結構いろいろなチームがインターネット越しに集まってきた中で、発災日当日に静岡県の撮影したドローンの動画から航空写真をつくったことと、それはみなさんがアクセス可能な状態に公開することと、それを地図に展開すること、この辺りの技術的な裏側のサポートをさせていただきました。あとは、これ私が直接ではなくて、見守るほうだったのですが、そういったデータを基に盛り土の体積の分析だとかを県に返していくフィードバックの部分で、こういったデータの共有をどうしていくのかというプラットフォーム回りですね、これをギットハブに静岡県のデータを展開していく形で、この辺りの裏側のサポートを私が担当させていただきました。やはりふだんから連携を取っていたので、ほぼ本当にインターネットのSNS越しに情報がやってきたのを我々が分析して、それを共有していく、こういったコミュニティ活動が既に存在していたことが結構大きかったかなと思っていますし、逆にまだまだ反省点もいっぱいあって、結局公開できたのは、内部的にはその日の夜にはデータが出てきたはずですが、一般に公開できたのは3日目ぐらいだった、そのところがもっと早くできたんじゃないかとか、急遽呼び出されるよりもふだんからコミュニケーションを取っていることでもっと早く集まれるとか、あとはメディアが、我々が発表した情報をなかなか正確に受け取ってくれないとか。どういう計算方法でこういう盛り土の体積が出てきたのかという、アルゴリズムをちゃんと理解してもらう必要があるとか、いろいろな課題が出てきました。あとは、熱海市自体がまだ三次元の建物データをオープンに公開されていなかったので、何棟土石流に巻き込まれたとか、そういうことがなかなかできなかった課題もありました。いずれにしても当時の副知事もいろいろとオープンにしておくと、こんなことをやってくれるのかみたいな声かけをしていただいたりしました。我々はできる範囲のことをやったのですが、オープンな世界が世の中で大事になってきて、ようやく何となく理解されてきたかなと思います。
 こういったデータのオープンの三次元のデータとしてデジタルツインというキーワードがありますが、今、熱海市も三次元の国土交通省のPLATEAUのデータのようなものが整備されていればまた状況は変わってきたとは思うんですが、こういった三次元のデータってセマンティックと呼ばれる建物が木造家屋なのかとか、建物が何階建てなのかというのって、実はグーグルアースでは分からないことがいっぱい三次元のデジタルツインのデータで書いてあります。その建物の三次元の構造とか、データも詳細とかいろいろありますが、やはり最低限建物の基礎的なデータは全部オープンデータで公開すべきだと思います。あとは詳細なデータはコストがかかるから詳細なデータはある程度有料にしてもいいのではないか。この辺の判断はいろいろ行政によって変わってはきますが、今東京都も頑張っていますし、まさにVIRTUAL SHIZUOKAという形で静岡県も東京都と連携しながらこういった三次元の地図データをどうつくっていくのか、我々はこうしたオープンな三次元の都市のデータをこれからしっかりと活用することが重要であると考えています。あと、すごく大事なところの中では、我々はやはりオープンって大事だよと、この場で言いつつも、我々が一方的に終わりにしたくないのも一方で思っています。行政から出てくるオープンデータって上から降ってくるような感じでみんな待ち構えているのは、私はよくないと思っています。静岡県からきっと出してくるという待ち方が私は苦手で、静岡県もこういうデータを出してくれるのなら、我々市民サイドだったり、アカデミックだったり、民間企業も今度静岡県にしっかりフィードバックするようなバランスのいいオープンデータをきちんと流通させることが大事だと考えています。オープンストリートマップもいろいろな企業、いわゆるGAFAと呼ばれるようなAppleとかマイクロソフトとか、フェイスブックとかが一緒になってお金とか人を出してくれているので、ポケモンGOのような企業も最初フリージャイロで勝手に使っていましたが、最近我々のコミュニティにお金を出してくれるようになったりとか、やはり使うだけじゃなくて、使う側もちゃんとフィードバックする。VIRTUAL SHIZUOKAも静岡県がデータを出すだけでなくて、やはりしっかりと我々がデータをインプットすることが大事なので、最後に駆け足になりますが、自分たちでストリートビューの電動バイクをつくって、それで三次元の点群データを学生と一緒につくっていますよという話が資料の後半にありました。
 ストリートビューのような活動を自分たちでつくれる時代になっています。ちなみに静岡県のエリアでも一市民がストリートビューのデータを整理し始めているのは、この緑色に塗られているところは、ボランタリーに静岡県の道路上で三次元に起こせる地上からの写真を大量に撮って公開してくれている人たちがいますので、そういう人たちがたくさん出てくると、まちの三次元の点群データが今度市民参加型でもつくれたりします。もちろんVIRTUAL SHIZUOKAの精度では全然ないですけれども、粗い三次元の都市データはつくれますとか、そこに何が写っているのかが分析できますとか、まちそのものを一般市民の人たちが三次元点群データなり、何が写っているのかという分析するためのデータがどんどんそろってきていて、我々青山学院大学としてもこういう電動バイクに、スマホやカメラをつけて町なかを移動して、ストリートビューのデータそのものも民主化できるのではないかなと、今これはまだまだチャレンジしているところではありますし、こういったデータを使うことによって、まちの三次元のデータは、行政から落としてくるデータだけではなくて、自分たちからインプットして、モデリングして、静岡県なり、東京都なり、国交省にデータを返すことができるのではないかとやってきています。
 三次元にすると何がいいのかというとやはりまちを俯瞰して見るだけではなくて、まちの現場に立って一人称視点でまちを見ることができることです。これジブリの千と千尋の映画の1シーンですけれども、主人公がこの階段を下りて、最後右に行きなさいという指示出しを途中でされますけれども、そのときに頭の中にこの映像を送り込んでナビゲーションするのです。地図を読めない人たちが圧倒的に多いので、俯瞰的にまちを見るのではなくて、すごく一人称視点でまちを見るという見方が三次元の地図では可能になっていきますので、こういう見せ方が大事です。逆に言うと、静岡県を俯瞰する地図を出して、そこで、あなたどこにいますかと聞いても、多分ほとんどの人があまり正確に答えられなくて、そういった俯瞰して見るデータよりも三次元の地図はすごく一人称でまちの中に存在する、自分の中でいう地図の使い方が広がっていくのではないかなという、そういったことがPLATEAUであり、VIRTUAL SHIZUOKAであり、できるようになってくるのではないかなと思います。それが実現できるようになると、我々自身もデジタルツインが三次元の都市データに提供できるようになっていきますし、そのデータをどう使うのか、それがまさに防災の世界でも非常に役に立つのではないかなということで、地図が民主化できるようになってきます。これは今オープンストリートマップを軸にかなり実現してきています。ストリートビューも自分たちが市民参加型でとれるようになってきました。航空写真もドローンを使うことによって、市民サイドから情報提供をできるようになりました。
 最後、三次元の地図はまだまだ課題は多いですけれども、原理原則はVIRTUAL SHIZUOKAと同じように点群をどうつくっていくのかですが、いずれにしてもこれも我々一市民でもこういったデータをつくることができる時代になっていくのではないか、その中でこういったデータが市民サイドでもアカデミックサイドでも民間企業も行政も一緒になってデータをどんどん更新していく。しかもそれがオープンであることで、そのデータが当たり前にアクセスできる状況をつくることで、防災力とか、安心・安全な社会をつくる、データのインフラになっていくのではないかと思います。私、ずっとこの活動をしていく中で、やはり大きな災害が起きると、大体どこの現場もデータがないないと言いますけれども、でも横にある消防組織は持っていたりします。警察組織もドローンを飛ばしたりしますけれども、警察、消防、自衛隊それぞれドローンを飛ばしてても全部縦割りでデータがシェアされていないので、結局取り直しになっています。結局我々市民ボランティアで取ったデータは全部公開しているので、どこの組織からもアクセス可能で、我々のデータが頼りですみたいに言われてしまうと、それは少しおかしいと思っていますし、やはり災害時に情報がない状況をできる限りなくしていくことが重要かと思っています。平時の訓練でやっていることの8割が緊急時にできれば十分で、やはりふだんから公開して、情報共有をしていく、オープンであることが継続性を生んで、安心・安全な世の中をつくるインフラになると思っています。
 早口になりましたが、我々地図づくりをしている立場では、伊能忠敬という非常にレジェンドがいるわけですけれども、彼は歩け、歩け、続けることの大切さという継続性が大事だということを言葉として残しています。ですので、我々こういったボランティア活動の中でもこういった活動が災害も含めていろいろな世の中をよくする一つのきっかけになったらいいと思っております。

○鳥澤副委員長
 古橋参考人におかれましては、情報が持ちます様々な視点を交えて御説明をいただきまして誠にありがとうございました。以上で、古橋様からの説明は終わりました。
 これより質疑に入ります。委員の方にお願いいたします。質問は、まとめてするのではなく、一問一答方式でお願いいたします。なお、質問の持ち時間は定めませんが、委員会の開催日程が限られておりますので、質問委員は、簡潔明瞭に発言するようお願いします。
 それでは、御質問・御意見等がありましたら、御発言願います。

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