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委員会会議録

委員会補足文書

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令和元年10月子ども健全育成推進特別委員会
常葉大学教育学部 教授 平岡篤武氏 【 意見陳述 】 発言日: 10/24/2019 会派名:


○平岡篤武氏
 おはようございます。平岡でございます。
 私は、現在は教育学部の心理教育学科で教えているんですけども、それ以前は県職員で、34年間勤めさせていただきまして、児童相談所、児童心理治療施設、それから県庁にもいたりしまして、そういった蓄積した知識を、次に入ってくる学生さんに伝えていきたいなということで、今の仕事をさせていただいております。きょうはよろしくお願いいたします。
 きょうは虐待のお話をということで、用意させていただきましたが、時間が50分ということですので、資料を一部飛ばしながら、お手元にあると思いますので、はしょりながらやらなくちゃいけないかなと思っております。
 虐待自体は直感でひどいことをしているなということはわかるんですけども、具体的に何が起きているのかとか、そういうことに関してはわかりにくい部分がありますので、きょうは、そもそも虐待では何か起きている、子供の中でどんな被害を受けているのかということを中心にお話ができたらなと思っております。
 ことし、いろんな事件があって、国も大きな動きをしていただいたり、児童相談所職員を2,000人ふやすとか、いろんなことができています。
 これは、沖縄から千葉に移ってきたケースでしたね。DVがベースにあって、父親からの被害だったんですけども、背景にやっぱりDVがあって、親族が心配して通報して、児相がかかわったり、別居もしたんだけども、家族が千葉に移ってきた時点で連携がうまくいかないということが背景にあったかと思います。
 この記録は、学校のいじめ対策で、いじめられていませんかというアンケートをやったら、いじめとは関係ないけど、お父さんに暴力を受けていますと。なかなか子供が家族のことをチクるというのは滅多にないんですね。自分の家以外のことを知りませんから、自分の家族のことを外に対して悪く言うというのは、一定程度育てられないとそういう知恵は生まれないんですね。うちの親、おかしいなということは、相当かわいがって育てられたりとか、判断力がないとできないことなので、悪くいうと洗脳されているわけですので。この子は本当に親族が心配をして、一時親族の家にいたりということで、おかしいということはわかっていたのでしょう。先生、どうにかできますかと訴えたんだけども、結局、皆さんが御存じのとおり、教育委員会の対応が、このコピー自体を父親に渡してしまったということで、あり得ない対応があった。何でわかったんだと、子供から聞いた、それを見せろという話で、こんなことはないはずだということがあって、子供もこれは嘘ですと言わされたりして、結局、死に至ったという事件でした。
 もう1つ、目黒で、年長さんのケースですね。私の孫も今、年長さんでして、すごく実感としてわかるんですけども、これは再婚の養父から殺されたケースで、それはやっぱり背景にDVがあって、ネグレクトがあった。これは香川県から東京都に移ってきたケースです。これはもっと小さい、学校に入る前ですから。体重を落とせだとか、やせろとか、勉強しろとか、幼稚園の子にしつけと称していじめを繰り返して、パパとママに言われなくてもしっかり自分から、昨日よりもっと明日できるようにするからという反省文を書くまでけなげに一生懸命やったんだけれども、結局、衰弱死してしまったと。5歳の年齢の子供に比べて、臓器が2割方小さかったと、衰弱してね。東京で足が凍傷だったということですね。ひどいことがあったケースです。
 こういうことを見ると、我々はとんでもない人間がいると考えるんだけれども、そうではなくて、子育て自体が実は難しくて、いろんなことが便利になってくると、そういうことをうまく回せない人たちにとってはこういうことになっちゃうという。社会のひずみといいますか。そういうことが背景にあるとまではなかなか冷静には考えられないですから、そういうことを中心に話していけたらと思っています。
 欧米はもっと、日本よりは平和じゃないですから、虐待問題というのは国を揺るがす事態。要するに、虐待がふえると次の税金を払う人たちが育たないということです。日本は世界で一番低いぐらいの殺人率、ブータンより低いぐらいの殺人率なんですけども、欧米は高いので、子供を大切に育てるとはどういうことかという取り組みがいっぱいあって、例えばセーフガーディングといって、子供を大事に育てることが最優先だということですね。次の税金を納める人たちですから、単純なんですけど。
 向こうではたくさん殺人事件が起きているんですね。有名なのは、2000年ごろに起きた殺人事件で、アフリカからの移民なんですけども、おばさんがその子をだしに――生活保護をもらったりするために連れてきた。病院、事業所、市役所、12カ所のありとあらゆる機関がその子にかかわったにもかかわらず、128カ所の傷を負って殺されたということで、それにかかわった医師とかソーシャルワーカーとかは職を失いかけた人もいるし、首になっている人もいると。向こうは厳しくて、もっと前の時代はソーシャルワーカーがつかまって、リンチされて死んじゃったという事件もあるぐらい。100年ぐらい前ですね。結構、厳しいことがあります。
 そして、1つの機関じゃなくて、いろんな機関が協働して――ワーキング・トゥゲザー――子供の安全を守っていくシステムができていまして、学校の中では教頭級の人がパソコンを使って、そこに記録が全部管理されて、いじめとか、不登校とかという項目があって、いつ、誰が、何をして、その子がどうなったということを一括管理するシステムを、ICTがすごく進んでいて、やっているというようなことがあったりとか。
 それからこれは児童相談所なんですけども、名前が多機関連携拠点という、ハブという名前がついているのが特徴です。これはやっぱり女性が多くて、食べ残しの器があったり、どこも現場は一緒だなというところなんですけども。
 それから警察ですね。警察の関係は大分、日本と違っています。警察自体が子供の安全保護拠点、大人の相談も子供の相談もするし、早期介入するし、虐待の捜査をすると。日本だと児相が保護するんですけど、欧米では警察が保護する。家出の子は日本だって警察が保護しますけど、どういうわけか虐待だけ児相が保護することになっていて、ちょっと違うんですね。犯罪の可能性があるわけですから。これがその現場で、ペーパーレスですね、向こうはね。ほとんどパソコンで管理している。
 それから、これが緊急会議をしているところですね。警察と病院とケースワーカーが、今から立ち入るにしては危険がないか、相手が銃を持っていないか、薬物の経歴はないかということで、集まっていたら遅いので、電話会議で即決してリスクアセスメントをしていくことが今進んでいますね。
 これは、警察の施設で、司法面接で子供のインタビューをする施設ですね。左側には性被害の診察室、右側が面接室。これは面接室ですね。アットホームで日本とちょっと違うんですね。被害を受けた人に対しての配慮というのはとても手厚い。特に違うなと思うのは、子供は1人にしちゃいけないということで、被害に遭った子に関しては、親族とか身内がちゃんと付き添ったり待つという部屋もある。
 これは校長先生が対象の研修会会場ですね。100年ぐらい前の王族の屋敷で、それがそのまま公的施設になっている。
 向こうの研修というと、6人を半日かけて、2人の先生が6人の校長、副校長級の人を集めて――事例研究ですね――こういうランクはどうするということを毎年やる。特に虐待の対応のシステム自体が随分手厚い。現場に行くほど余り実質に差がないなと。でも、上のシステムというか、制度にするとやっぱり文化の差が出てくるなという印象でした。例えば、犯罪が背後にあることに関しては、やっぱり警察がメインで出てきて、ソーシャルワーカーはその次だということとか、職員配置が3倍だとか、民間参入も多いとか、そういう仕事の評価をする機関は力があることが違いかなと思います。
 さて、実際の今の日本の状況から見ていきたいと思うんですけども、昨年の統計では、16万人弱が相談を受けているということですけども、これは法律が定まってから大体9倍ぐらいの増加率です。このころ、私、児童相談所で部長に説明しろと言われたときに、当時で「欧米の20分の1です。だから、あと10倍はふえると思いますよ。」という話をしたら、ふざけんなと怒られましたけど、そのとおりになりました。ふえている理由の1つは、DV事案に関しては警察が後から二次的な虐待ということで挙げてくることがふえたのがかなり大きいですね。警察が頑張っていると。
 それから、割合に関しては、今言った心理的虐待、DVがある。それと身体的、ネグレクト。少ないんですけども、性的な虐待がなかなかなくならない。死亡が一番最悪の事態なんですけども、平成19年、20年前後には100人以上あったんですけど、今は大体60人、70人ぐらいで落ちついた数になっているんですけども、日本の特有は心中ということですね。欧米では、心中という分類自体がおかしいと、殺人でしょうと非難されていますけども。だから、平均すると、1年間52週間ですから、1.何人、毎週どこかで殺されているのが実態です。内訳を見るともっと驚くんですけども、65人――昨年平成29年から平成30年3月まで――を見ると、半分が0歳、12カ月以前の子が約半分。それから0歳の内訳を見ると、4カ月未満が半分以上、4カ月未満が24人殺されている。赤ちゃんが。これはちょっと考えるとわかりますよね、ちょっとしたことでダメージを受けますからね、頭とか。半分以上が赤ちゃんということで、どんな対策があるかというと、未成年の妊娠とか、子供をつくる気がないのに妊娠して産んじゃったという子が多いんですね、虐待を受けるのは。なので、こういう取り組みもしていると。全国的にもそうですけど、していると。
 アメリカだと、高校生が赤ちゃんを連れてくるとか、そういうことが時々テレビで出たりしますけど、あれはこういう背景がある。ここで手厚く対応しないと虐待が再生産されるし、子供には罪がないということですね。感覚的に、高校生が子供を産んで、それを堂々と学校に連れてくるのか、というのは日本的な感想ですけども、そんなことは言っていられないのがアメリカです。
 児童相談所にいると、娘が子供をつくっちゃったから乳児院に入れてくれとかいう高校生の親御さんからの相談とかもないことはないんですね。うちはコンビニをやっているので、孫を見られないのでとか平気で言っている。それに対応しているんですけど。
 この表には、死亡事例を毎年、国で検討して、どんなことが要因かが挙げられているんですけども、見ていくと、予期しない妊娠、計画しない妊娠。かわいがってもらえないということですね。それから、DVが10代のお母さん、お父さん、それから訪問しても会わせない、子供自体が保護を求めている、それから周りとつき合いがない、それから関係機関はいっぱいいるんだけども、あっちがやってくれるだろう、こっちがやってくれるだろうということで、リスクの共有ができていない、それから家族がどんな家族なんだというアセスメントが足りない、引っ越したときに機関同士の連携が足りない、こんなことが一番近い調査では言われております。
 これは国の2016年の文科省の委員会で出た資料ですけども、例えば児童自立支援施設――静岡でいうと三方原学園――の6割、少年院の7割で虐待の子供たちが入っている。それから、警察関係の調査では、粗暴な相談事例。別に何か問題を起こしたわけではなく事件にはなっていないんだけど、相談事例では約2割が虐待絡みということは大分統計で出ている。
 一方で、なかなか減らないと言われている不登校でも、今、現象としては小学校から中学校に行くときに3倍になっていることが問題になっていますけども、文科省の調査でも、ネグレクトが小学校で3割弱、中学校で5割強の不登校の背景にある。さらに、ネグレクトされている子供の3割に発達のおくれがあったり、それが幼児期段階まで遡ると35%。不登校といっても、その背景にあるのは難しいお子さんもふえてきたということが言われています。これの背景が、孤立した子育て、社会から孤立している人たち、それから貧困、虐待、問題行動、学力が伸びないという悪いサイクルをどう断ち切るかという課題にもなっているわけです。貧困対策とか悪循環の対策で、例えば職業訓練費をかけるだけで税収が上がるという研究もあります。
 子供や家庭の実態を見ますと、学力自体、就学自体が社会の課題になりつつあると。例えば、本がない家が今でも1%、2%あるんだという実態――外国人がふえてきていることもありますけどね。それから、苦しい家ほど子供に向き合う余裕はないし、就学援助の必要の高いところは3割のところもある。こんなこともあって、未然防止が必要なんだよと。3割もの子供に対応できるのは、1日の3分の1を過ごす学校ぐらいしかないだろうということがあります。学校のプラットフォーム化にはそういう発想がありますね。イギリスはこれが徹底していて、文科省と厚労省がくっついちゃっているんですよね。教育をメインにして、子供の虐待は学校で見つけるということにしちゃったわけです。
 こういうことを研究している和田先生という方がコストを計算していて、直接費用――施設だとか行政のコスト――と、間接費用――そういう被害を受けたことによる死亡、それから医療費、教育を奪われて生産性の低下、離婚、生活保護が1兆5000億円、これだけかかっていることを計算しているんですけども、生活保護のコストが年間で3000億円、これを予防費用にかけたほうが――消火活動を火が上がってからやるよりも、いろんな予防的なことにお金を投下したほうがよっぽど効率的だということを言っている。例えば、名目GDPに占める社会的養護費用、驚くべき数字です。アメリカの130分の1、ドイツの12分の1、デンマークの37分の1ということですね。ルーマニアの4.5倍、ルーマニアになると、逆に言うと、日本はそれだけ平和というか、安定したところなので、日本では社会の問題というよりも親の心がけとか家族の問題、家庭の問題と捉える考えが強いんだけども、今後、こういう考え方でやっていけるのかなということが今起きつつあると思います。
 ここまでが前段になるんですけども、虐待について見ていきたいと思います。
 虐待は、最近の考え方は権利擁護だということですね。なぜかというと、心と体の成長、ひいては人格形成に――性格がゆがんじゃうんですね。その人たちがまた子育てをすることで、次代へ引き継がれることがあるわけです。この辺の定義は読めばわかるので飛ばしていきますが、身体的な虐待。身体的虐待で赤で入れているのは、代理ミュンヒハウゼン症候群といって、子供を病気にして、この子は病気なんですと自分が満足するという変わった症候群で、一方で、心配性過ぎて、先生が大丈夫ですよというのにドクターショッピングして、病気のようにさせちゃうという変わったものが入っています。
 それから性的虐待。性的虐待は最近、インターネットが進んだので、搾取――だまして動画売りをするとか――いろんなSNSを媒体にした被害がEUでも大変話題になっていました。
 ネグレクト――ちゃんと子育てしないですね。日本の特徴は、兄弟が性的加害をしても、これをネグレクトにカウントすると。親がちゃんと子供を監督していないからそうなったんだという考え方で、ちょっと欧米と違うカウントの仕方をしているので、性的虐待も多いかもしれません。
 それから、心理的虐待、これはDV関係で注目を浴びていて、後で言いますけど、日本の先生方は言葉の暴力だけで脳が委縮するという研究も主体的にしています。
 虐待の影響なんですけども、わかりやすいのは体が傷つけられたということがありますけども、もう1つが心理的に――阪神・淡路大震災のころからトラウマという言葉をよく耳にするようになったんですけど、もともとはベトナム戦争で人を殺してきた人が本土に帰ると、フラッシュバックで奥さんを殺しちゃったりとか。銃を持っていますのでね。DVがひどくてということで、退役軍人の症状として研究が始まったんですけども、別に戦争に限ったことではなくて、実はそういう心理的な被害を受けると、脳の記憶の部位が混乱してさまざまな問題を起こすということがわかってきました。最終的には、自分なんて生きている価値がないとか、自分なんかそんなに大した者じゃないという、自己評価が下がることが非常に問題なんですね。近年は、脳科学の研究が進んできたおかげで、脳の神経発達がやられちゃっている、極端に言うと神経が死んじゃう、そうなると、考えたり、我慢したり、喜んだり、悲しんだりという感情調節までやられちゃうということがわかってきました。
 有名なパトナムという方は、虐待を受けた人たちは、精神科にかかわるありとあらゆる症状が出るんだということを発表しております。
 次に、最近話題になっているのはACE研究。ACEというのは、Adverse Childhood Experienceという逆境的な子供時代を体験した人の研究と言われています。これはExperiencesでACEsという場合もあります。もともとはフェリティという人が糖尿病とか肥満を解消するプログラムをやっていたんですね。そうすると、どうしてもドロップアウトする人が出てくる。その人たちを調べていくと、どうもトラウマ――性的被害とか虐待――を受けた人たちで、食べることで不安を解消してきた疑いがあることがわかってきて、じゃあ調べるかということでやった研究ですね。
 アメリカは、保険社会なものですから、日本でもありますけども、保険屋さんが、契約前に細かいアンケートをして――どんなことをしていたとか――それを使ったので、たくさんの人のデータを集められたんですね。
 ACEスコアといって、10項目の質問をして、それで見ているんですけども、子供時代に虐待的な体験が多いほど、社会的、情動的、認知的な問題を抱える可能性が高い。具体的にいうと、喫煙、暴飲暴食、薬物依存の確率が上がる、病気になりやすい、事故に巻き込まれやすい、犯罪を犯す確率が上がる、平均寿命が低くなる、ということをデータとして出したんですね。この人は9,500人、2017年にメルツレアという人が3万人弱の人をやっているんですが、この人の結果では、高校中退、失業、貧困の確率が上がったという実証的なデータを出しているんですね。
 10個の項目というのは、5つは虐待ですね――心理的虐待、身体的虐待、性的虐待、かわいがってもらえない、それから食事とか医療とかちゃんとやってもらえなかったと。残りの5つは家族の問題です。親が別居した、離婚した、DVの目撃があった、それから薬物依存、これには酒癖が悪いというのが入っているんですね。それから、家族に精神障害、自殺未遂もある、服役があると。私なんかは、父親が結構、酒癖が悪かったので、1ぐらいつくんですね。だから、0という人、そんなにハッピーな人は余りいないんですけども、これで見ると、対象が白人で、生活に問題がなくて、普通の大学卒業者は4分の3ですから、成功した人たちですね。保険に自分でお金を払って入れる中産階級で57歳という人たちですね。なので、黒人層等を外しているんですね。0だった人は3分の1しかいなかった。1点以上が64%、2点以上が40%、4点以上になるとさすがに少なくて12.5%、こういうデータがあって、これが高ければ高いほど診断回数も多いし、腰が痛いだとか、いろんな症状があったと。それから、がんとされる率は、4つになるともう0の人の24倍、鬱となると4.6倍。寿命は6以上あるとマイナス20年、心臓病は7以上あると3.6倍。3.6倍の人は酒もそんなにひどく飲まない、喫煙もしない、肥満、コレステロール、糖尿病の心配もないにもかかわらず早く心臓病になっちゃうということで、さっき言った逆境的な体験が相当悪さしていることがわかってきた。
 これは、ストレスが免疫システムを狂わせているんだと。慢性ストレスというのは緊張を体にかける――こらえるときに力を入れたり。それからいろんなことをしている。ストレスをかけると、メチル化といって、遺伝子は変わらないんだけども、遺伝子を動かすスイッチが入っちゃうんだということがわかっていますね。炎症を引き起こすホルモンを放出し続けると。例えば、脳内ステロイドとかありますけど、鬱の人は、それをびゅんびゅん出している。だから、生保の人が太って、何か生活態度が悪いからそうなるとか、そうじゃなくて、ストレスが高いもので、ついついホルモンが出て、普通に食事をしていても太っちゃうと、そういうことがわかってきたんですね。特別な10個の項目、どれかが悪いというんじゃなくて、どれもこれもよくないということがわかってきた。脳や免疫機能への悪影響がわかってきたということですね。しかし、虐待状況から解放されれば、子供を保護して助けてあげれば何でも解決するかというと、そう簡単な話でもなさそうだということをこれから説明したいと思います。
 非常に長い時間がかかるということと、目をつけるところがやっぱり消火活動と同じで、火の用心だということですけども、1つは、逆境的な体験とか虐待というのはかわいがってもらえないということですね。愛着という言い方をしますよね。
 愛着というのは、要するに、哺乳類で発現したんですけども、困ったときに助けてくれる人を見つけて、その人にしがみつくということですね。顔を見るというのはそうですね。知らないおじさんが1人いて、お母さんの顔を思わず見て、お母さんがにこにこしていたら大丈夫。これが愛着があるというんですけども、結局、安心を与えてくれる人がいるということを教えてあげることが愛着を築く、かわいがるという意味なんです。これがないということは、人生の意義ですね、何か困っても誰かが助けてくれる、自分は何とか今の目の前の山を乗り越えれば、次にいいことがあるかもしれないという希望すらイメージできなくなっていると、かなり深刻な時限爆弾を抱えると。しかも、それが乳幼児1年以内に始まっている。
 子供はそんなことがずっと続いて育てられると、そういうことになれるんですね。ここは安全じゃないとわかったら、安全じゃない対応をするようになっちゃうんですね。そもそも人を信用しなくなるし、いつも危ない目に遭うんじゃないかとびくびくするシステムが体の中にできちゃう、脳がそういう指令をいつも出しちゃうということですね。パニックになりやすい、悲しいのに怒り出す、ちょっとしたことで相手を殴る。私がいた施設では、小学校低学年の子供が、相手の顔を足で踏みつけるとか、顔をねらってけるとか、そういうけんかがありました。普通の世界では余り見ないけんかの仕方。あと、いきなり箸で顔を刺した。目に入ったらどうなるんだという話ですが、動物的に怒りの感情を発散する。
 それがまた続くと、やっぱり状況判断、判断力というのがなくなってくるんですね。我慢しようとか、ここはまずいぞとか。ということは、もう勉強なんかとてもじゃないけど、難しい。そういうことを積み重ねていくのが勉強ですから。嫌だなということを頑張ってやって、反復練習して身につける。スポーツでも勉強でもそう。それが身につかない。学習というのは、身につかなきゃいけないですね。いろんなことを教えてもらって身につけるということができません。これはどういうことかというと、社会性が身につかなくなるんですね。
 この悪循環が知らないうちに起きているということは、虐待の抱えるとても恐ろしいところだということがわかってきた。これを次の世代に持ち越すことを免れないということが――要するに子供を育てているうちに、我々が子供に鋳型をつくっていって、それに合わせて次の鋳型をつくっちゃうことになっているんだと思うんですね。それがどうも遺伝子の配列では違うんだけど、遺伝子に乗っかっていく情報で伝わっちゃうことが最近わかってきました。
 一番楽な例は、ネズミを使って、太りやすいネズミを減らす研究とかが一番無難なのでやられたりするんですけど、ある遺伝子に傷をつけると、太ることがなくなるんですね。薬品で太りやすいネズミの細胞にある傷をつけると。そうすると、遺伝子は何も変わっていないんだけど、その子孫は太らないというネズミができた。これは遺伝子配列を変えなくても、遺伝子操作ができるということで、これは薬品ですから、脳の中にいろんな薬品が出ているわけですね。逆にいうと、薬を飲んだり投与することで人によくすることもできるようになっているとわかっていて、遺伝子レベルの研究が非常に進んでいます。
 現象的に見ると、虐待を受けたことによって、その子供には、今見てきたような衝動的な行動が起きたり、鬱になりやすかったり、現実的な世界で問題行動を起こすということが出てきます。それがケアされないと、もっと大きくなる、再被害を受けやすい。性被害を受けやすい。鬱は放っておいて直るわけじゃない。義務教育を外れれば中退になる。最近は薬物は簡単に手に入る。
 そして、子供は時間がたてば大人になって、子供は簡単につくれますから。今度は奥さんに暴力をする、産後鬱になりやすい、退学したらそんないい職業はないよね、薬物依存も簡単に治りませんということで、また次の世代に持ち越すと。これがよく言われる世代間連鎖。次世代に持ち越すことが遺伝子レベルで何か伝わる可能性も最近はわかってきたというわけですね。
 虐待がふえてきましたが、増加の要因としてはいろいろ言われています。社会が変わった、つられて家庭も変わった、地域社会自体が変わっちゃった。隣のことを何も知らないとか、子供会に入る人たちがもういなくなっちゃったとかですね。
 それから、もう一方で虐待通告という制度ができたので、隠れていたものが見えるようになっただけ。江戸時代にもそういう例があって、おねしょしちゃったので、冬に外に立たせておいたら凍死したと。その親は、獄門はりつけ。厳しいですね。昔は、大八車で引いて人を殺しちゃったというだけで八つ裂きとかありますので、今よりも格段に刑罰が厳しかったんですけども、社会的な認識が広まったということも一方であるわけです。
 先ほども言いましたが、もともと、子育てというのは簡単な仕事じゃなくて、動物を見ると、集団保育なんですね、猿とか我々の種族は。それから、周りでケアする。親族でケアするとか、地域でケアする。江戸時代にも、性的虐待の結果だと思うんですけども、10代とか小さな子が赤ちゃんを産むとか、そうじゃなくても5つ子を産むとかいうのがあったんですけど、そうすると地域で、そのエリアで子供たちを育てるお金を出すとかしていたんですよね、自然に。
 力のある大人が力のない子供をケアすること自体が不適切な力の行使、すぐ手が出るとかいうことになりやすいんですよね、別に誰でもが。それを我々は倫理的にいけませんよとやってきたんですけども、そういうふうに育てられた人は鋳型ができています。思わず殴る――運動もそうですね、殴って、非常に理不尽なスポーツで鍛えられた人は、自分もそうだったんだからといって後輩にもやるということは、理屈ではなくてやっちゃうこともありますけども、子育てには結構そういう危険がある。余裕のない人は、ついついそっちへいっちゃうことが背景にあるので、それをどう防ぐかという話なんだということです。
 リスクの捉え方というのは、いろいろ研究が進んでいて、今、幾つかざっと紹介しました。要するに、これは3つありますよと。子供の問題、親自身の問題、環境の問題という考え方があります。支援のときは、どれかを軽くしてあげれば少しはましになるという発想になります。子供が障害を持って生まれたこと自体は難しいので、お母さんがパニックになっちゃうことで虐待というのも結構あります。それから、親の場合を見ていきますと、望まない妊娠とか、親自身の虐待経験からくる精神障害ということですね。環境は、DVとか経済的な問題が大きい。
 それから、支援の考えで、今見たのとつながるんですけれど、リスクを減らしてあげれば減ると。例えば、養育環境を減らす、支えをふやしたりして減らすと。1個減りますね。もう1個、親を支援して減らす。具体的に減らす、リスクを見つけてそれを減らしていくという発想があります。
 それから、世代間連鎖を考えると、親自体がいろんな負の遺産の中で問題を持って育ってきて、それが結婚するわけですから、夫婦関係にも及ぶ。ストレスフル。また子供が育てにくいという場合もある。入院半年とか、生まれて半年、抱っこしたこともない。そうすると、懐きにくい、いつも泣いてばっかり。こんなことが重なると、ストレスが、十重二十重にかかっていないかという視点ですね。
 それから、社会全体を見ると、個人、それから人間関係、地域、社会というそれぞれの視点をチェックしましょう。
 それから、虐待を和らげる要因も注目しないとまずいですね。子供と家族を守る要因は一体何かという発想も必要になると言われております。
 ここまでのところをちょっと違う視点でまとめてみますと、子供の育ちを見ると、生まれて1年、それから3年ぐらい、幼稚園、保育園、小学校となっていますけども、子供が生まれて泣いて――自分のいらいらを伝えられませんから――それをあやしてあげるということがよいんですよね。かんしゃくを起こしたり、興奮したり、寝つきが悪かったりというのをよしよしといって、泣いてるのはおなかが減ったのかな、ミルクが欲しいかな、おむつかなといって、ねんごろに1年かける。そうすると、基本的な安心感、安全感、――愛着ですよね。守ってくれる人がいるんだよという、世界に対する楽観的な発想、何とかなるかなという発想、ここがあるかですね。
 そうすると、だんだんしつけというのは、1人で何でもできるようになって、親なんか要らなくなるようにとやっているわけです。もうそろそろおしっこを教えられるよね、自分で御飯が食べれるよねというのが3歳ぐらいですね。そうすると、自然に発達も――言葉を覚える、歩き回れる、走れる、おしっこのコントロールもできるようになるということで、だんだん自分でやりなさいよという自己調節のしつけが始まると。
 これぐらい一通りさせると、一丁前で何でも話せる、何でも要求できるようになると、集団保育の場に行って、みんなでお遊戯をしたり遊んだりというやりたいことを伸ばして、自分のコントロールを上げていって、6歳前ぐらいになると集団で座って黒板を見て、みんなで意見を言ったりができるようになる。これが世代的にプレスクールと言われる時代。保育の時代というのは大体、脳の発達に合わせて教育ができていますので、これに合わせてしつけをしていく。
 虐待を見ると、こういうときに適当な方法、世話をして、自分で自分のことをやる練習がないので、いつも怒り狂ったり、いらいらしたりという感覚が下がらない。なので、脳にもダメージを受けちゃうということですね。すごいかんしゃくを起こす。なかなか身につけられない、好き嫌いがひどい、すぐけんかする、おもらしがひどい、食べ過ぎ、こういう人はやっぱり外からの力でないとコントロールできないので、例えば薬に頼る、酒に頼る、いらいらしたら酒を飲んで、警察につかまらないとやめない。高速道路であおり運転なんていうのはそうですね。警察の人がとめない限り、幾らでもやっているという、外の力を使わないとセルフコントロールが効かない人間になっちゃうという、この分かれ道が虐待では起きているんだということですね。これで、心がけが悪いんだと言っても始まらないということですね、これはどんどんふえていくものなので。
 ネグレクトや虐待の環境で育つということは、長い発達を見ていくとき、1つずつ年齢に応じた課題があるわけですね、おしっこを教えられるようになるとか、自分でいらいらがコントロールできるとか。そういうのを研究した先生がいるんですけども、歯が抜けたくしのように、基礎がないのに、社会が、もう小学校に行く年齢だよね、もう中学校に行く年齢だよね、もう働く年齢だよねと言ってきますので、土台がぐらぐらしているのに、次の課題がどんどん、時間が来て積み残したまま、暦の年齢だけが上に上がっていくという恐ろしいことが彼らに要求されてくるんですね。
 今、ワールドカップでラグビーが人気ですけども、最初、ラグビーのルールなんて全然わからないですよね。そういう状態で我々は生まれてくるんですよね、この世の中に、ぽーんと。先人がつくった何億年とかけたルールの中、言葉の発達もそうですね。ちょっとずつ優しい親や家族のもとで、どうやってやればいいのか、ボールは、パスは一緒にしなきゃいけないのかとか、そういうことをだんだん身につけていってプレーができるようになるのが大体、小学校に入るぐらいまでですけども、彼らはルールを教えてもらえない。何で反則って言うんだよと逆切れするみたいなことをずっと蓄積していくということが起きているのではないかと。今、社会で問題だとか、何でこういう犯罪をするんだという人たちの一部にも、こういうことが根っこにないかなという発想が世界的に出てきているということですね。
 じゃあ、その発達にどういう影響を与えるのかというのをちょっと大急ぎで見ていきたいと思います。
 虐待を受けるということは怖い体験をすることですね。怖い体験はどういうことかというと、小さいぐらいだったら何とか扱えるんですね。お母さんはガラガラヘビとか大嫌いだけど、子供が夏休みの宿題でちょっと飼うからと言ったら、まあしょうがないと言ってさわれるようになる。ところが、これがアナコンダではとても対応できないと。程度がありますよね。怖いものに対するつき合い方というのは距離をとると。この場合は、離れるというのが適切な安全を確保する方法なんですけども、体験強度と距離、この問題がある。我々は、これが侵されるとトラウマになるということです。死ぬかと思ったとか、ちょっとしたことで毎日殴られているとか、この掛け算なんだということですね。だから、1回限りの地震とか、1回限りだったらいいけども、毎日毎日逃げ場のないところでやられているのはかなり違う。慢性的と単回性は違うというところなんですね。家は逃げ場がないんだ、ということですね。毎度続くことで安全感覚が麻痺してきてしまうと。
 子供がどうなるかということですね。そうすると、彼らは、前に言いましたけども、未来がなくなっちゃうんですね。要するに、今が怖いので、先のことを考える余裕がなくなってしまうんですね。今しかないんです。助けて、助けてと言うしかないんですね。そうすると、他人に言ってもしょうがないので、自分で何とかしようという自己責任の世界になっちゃうので、ホルモンをばんばん出して――脳内ホルモンがあるんですね。ランナーズハイなんかそうですね。ストレスを緩和するために楽になるホルモンを出すでしょう。ストレスホルモンを出して、自律神経を活発化させることで生き延びていくんですね。自律神経がアクセル、交感神経がブレーキになるわけですけども、いつもアクセルを踏んでいる。テンションを上げて、怖さを乗り越えるという手段です。これはどういうことかというと、わかりやすい映像があるので、ちょっとここでこれを見てみてください。音はないです。
 猫がえさを食べているんだけど、後ろに細長いものがあったということに気がついたときの反応。これがさっき言った、脳の中で起きている、いつもびくびくしているというやつですね。長いものはヘビみたいです。犬なんかよりも、よっぽどそういうものと付き合っている時間が猫のほうが長かったんだろうと説明されていますけども、ちょっとわかりにくいんですが、ああいう瞬間的な反応が脳の中でいつも起きているということが理解としてはすごい必要になってくると言われています。
 瞬間的な対応策は3つあって、1つが、やってやろうじゃないかというですね。次が、かなわないということですね。最後は、もう固まっちゃうと。有名な動物がいて、ネズミの死んだふりをするというやつがいて、口のところから腐ったにおいが出るそうです。動物が近づくと、腐っている、食べれないと向こうに行っちゃうんですけども、向こうに行っちゃうのが何となくわかるんでしょうね、ぱっと逃げていくというのがユーチューブを見るとありますけども、死臭まで出ちゃうと。それだけ弱い動物なんでしょうね、行く気がない、走れないと。やるかやられるか、固まるかというのが我々人間の動物としての本能なんですね。これは安全探索行動という名前がついたりしていますけども。いつも殴られている、ストレスが自律神経を混乱させて、いつもいつもやられてなれちゃうと、それに合った行動ができちゃうということですね。闘争か逃走かとよく言いますけども、英語だと、fight or flightと言いますけど、闘争か逃走か固まるか。
 例えば、いつもいつも虐待環境で、勉強なんかやる余裕がない、頭がね。御飯も食べていないけど、先生はわからない。また宿題忘れたのかと普通に注意するだけで、彼の頭の中では、今をどう切り抜けるか、この怖い状況をどう切り抜けるかと働きますから、殴られているのと同じ体験が脳の中で起きているんだと。先生にはこれがわからないから気の毒なんですね。よかれと思って注意していること自体がもう虐待と同じ再体験になっちゃう。なので、余計固まる。年齢によっては、切れて先生に殴りかかる子も出てくるんですね。過覚醒とか回避麻痺とか解離とかという名前がついていますけども、脳の中でこういうことが起きていること自体の理解がまだまだ一般的にはない。
 今しかないので、ストレスに使える道具は過去の悪い記憶だけ。いつも殴られていたと。周りを見て考えられない、思考能力も判断能力もないと。過去の記憶ばっかりが大きくて今がないので、治療、支援としては、今を見て、殴る人じゃないでしょうと、そういうケアですね。そういうことを耕すことで、あした以降のことを考えられるようになる。かなり長いケア、支援が必要になってくるんですね。トラウマ記憶を過去のものとして片づけられるようになるということですからね。包括的な、かなり生活全般でこれが起きますので、支援が必要だということです。
 こういう人たちの脳の中はどういうことになっちゃうかというと、いつもびくびくしていると世界観が悲観的になるんですね。普通は、この世はちゃんと天網恢恢疎にして漏らさずということで、悪いことをしていれば罰を受けるんだと我々は思うんですけども、彼らはそれがわからないので、いつもびくびくしていなきゃならないですね。引き金自体も我々にはわからない。よくしてもらったことが引き金になったりする。なぜかというと、ずっと被害を受けていますから。1日中殴られているわけじゃなくて、殴られる、殴られない、殴られる。殴られないという時間が来ると、殴られる前は殴られない時間だと。父親が珍しく何か買ってきてごちそうしてくれたとか、こっち来いよと言ったこと自体が次に殴られる前兆かなと思っちゃったりしますので、また面倒くさいわけですね。というようなことが不安になっちゃう心理性もあると。そうすると、さっきも言いましたが、特異な行動が出ちゃうんですね。怖いので、やたらべたべたして殴られないようにするとか、すぐ見えすいた嘘をつくとか、欲しいものは自分で手に入れる、盗むとか、ぼーっとする。こういうのは考えた行動じゃないので、怒られたり、失敗したり、自信がなくなるという悪循環につながっていくんですね。それが結局、脳にもダメージを与えて、広範な発達障害的なことが起きるんですよ。対人関係も悪くなりますよ。能力的にもいろんなことが本来できるはずなんだけども、耕されない。不適応行動もふえるという悪循環が出てくるということです。
 これをかなり理屈っぽく説明した箇所が次の資料なんですけれども、これは飛ばしたほうがいいかなと思うんですけど、簡単に説明しておきますね。
 3段階あって、我々は困ったときに何をするかというと、この赤ちゃんのように、助けてと行きますよね。これがかわいがられて育った人の方法なんです。ところが、これがうまくできない人は、さっき見た、やるか、やられるか、固まる、こういう症状になっちゃうんですね。ここが難しいところなんですね。脳の知見でいうと、こういうふうに脳がすかすかになっちゃうんですね。言葉の虐待、暴言を受けた人たちは言葉の大事なところの容積が減っちゃいましたよとか、DVを見ていた人は視覚野が減っちゃいました、脳が減っちゃいました。あと、痛い思いばっかりしていた人たちは、痛みを伝える経路が余り痛みを感じないようになっちゃいましたと、実際の脳が変形していることがわかった。そんなことで、最近は生まれつきの発達障害に加えて、虐待を受けたことによる発達障害ということが言われるようになっております。
 この図は、今言った生まれつきの障害じゃなくて、普通に生まれたんだけども発達障害のようになってきたということですね。こっちはちょっと難しい話なので、今言ったことの繰り返しなので省略します。
 あとは、質問に応じて補足していけばいいような流れですので、省略したいと思います。
 最後に、ちょっとだけ。支援としては、養育者が頑張ってやることと子供が頑張ってやることがあります。
 それから、今後に向けて1つふれて終わりたいと思います。対応の体制ですね。一番最初に言いましたけど、日本の現状では、一時保護は児童相談所がやるとなっていること自体が結構問題になっているのではないかと私は考えています。これは、県として対応のしようがないかもしれませんけど、背後に犯罪の疑いがあるのに、福祉が最初に保護することを世界ではやっていない。裁判所と警察がやる仕事を日本では福祉がやっているということがあって。なぜしないかというのは簡単です。警察と裁判官をふやさなきゃいけないから。警察が頑張って、児相に送ることだけ今一生懸命やっているけれども、それに対応できないという矛盾が起きている。それから保護することと支援することは全然別の種類のことなので、保護者が児相と口もききたくないという形になっちゃうので、それが非常に困るということがまずあるかなと思います。
 それから、福祉専門職員の力量を上げなきゃいけないということがあります。私も県にいた経験上、予算要求するときに、例えば児童相談所の職員の力量を上げるために研修をしたいと言うと、通常では簡単にいいですねと予算はつかないですね。県の職員は、競争試験で一定程度の人をとっているんだから、改めて研修をすることに対してなかなかハードルが高くて。県民に対する研修、啓発とかはすぐつきますけども、やっぱりその辺のことが、特に専門職は研修体制が弱いんだと思います。でも、農業とか、土木とか、直結するものはぽんとつくんですね。やっぱり結果が見えますので。教育も研修自体が制度になっているのでいいんですけれど、福祉みたいなところはやっぱりつきにくいのが問題かなと思います。
 県の職員の事務の人は、そこにいること自体が、毎日研修を受けているようなもので、議会図書室に行けば、明治からの判例、法律解釈の書類がずっとあったり、上司がライブで行政法を教えられるような、みんなそういう知識を持っていますから、行政職はいること自体がオン・ザ・ジョブになる。ところが、専門職は層が薄いのでそうじゃない。研修自体の考え方がなかなか専門職の場合は難しいかなと思います。そうでなくても、民間もあわせて、福祉専門職の機能向上がやっぱり今後、高齢社会に向かって必要になってくる。それから、公的機関は採算性の低い重症例を診て、民間の施設はそうじゃない、回転率がいいようなものを診ていくという、順番にね。
 国は、子どもの虹情報研修センターというところ、横浜とことしから明石市が手を挙げたので、2つ、東と西につくって、福祉、特に児童相談所の虐待対応系の研修センターをつくってやっているんですけども、そういう福祉の専門性の向上と考えると、民間施設だとか市町村を支援する研修センターで独自のものが――もう国はキャパが限界で、受ける余裕が少なくなってきておりますので――県でも必要じゃないかなと思います。でも、これは兼務ではなくて、独立の研修センターにしないと、なかなか無理かなと思います。モデルとして、子どもの――これ、虹がとれているけど――子どもの虹情報研修センターというシステムがありますので、それの県版が必要になってくるんじゃないかなと思います。
 また、市町の強化ですね。何年か前に法律が変わって、児相は虐待対応だけが仕事になっているので、虐待で保護する以外の仕事は市町でやるというふうに方向性が大体決まったんですね。虐待の保護しないレベルのケースは基本的には市町でやってねというふうになったんですけど、とてもまだ市や町が人をつけて対応する余裕がなくて、対応できない。大阪に行くと、県の児童相談所レベルの市福祉事務所の中で財政力があったり、問題のあるエリアでは、部門がある市もあったりするんですけども、市町がやれるように、人をふやすことを国は言っていますけども、そもそも、今すぐ使える人がとれるのか、専門職がいるのかという問題があったりして…

○杉山(盛)委員長
 先生、済みません。ちょっと時間がおしていますので、もう少し簡潔にお願いできますか。

○平岡篤武氏
 はい。
 それから、学校の役割ですね。先ほど言いました、1日の3分の1を過ごすのは学校ですので、学校が中心になって、子供の安全、保護を福祉と一緒にやっていくことを考える必要があるかなと。
 啓発予防に力を入れていくことが大事になってくると思います。以上です。時間を超過して失礼いたしました。

○杉山(盛)委員長
 ありがとうございます。では、以上で平岡様からの説明は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 委員の方にお願いいたします。質問をまとめてするのではなく、一問一答方式でお願いいたします。そして、座ったままで結構ですので、進めたいと思いますので、よろしくお願いします。
 それでは、御質問、御意見がありましたら発言願います。いかがですか。

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