本会議会議録


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令和4年6月定例会危機管理くらし環境委員会 質疑・質問
質疑・質問者:佐野 愛子 議員
質疑・質問日:06/28/2022
会派名:ふじのくに県民クラブ


○佐野委員
 分割質問方式でお願いします。
 熱海市の土石流について伺いたいと思います。6番委員が丁寧に質問してくださったので、多少かぶるかもしれませんが、お願いします。
 県と熱海市は、2009年度時点で土採取等規制条例第6条に基づく措置命令を出そうと1度方針決定したわけですが、その後発出を見合わせてしまったのですよね。それが少し残念だったと思います。
 今さらですが、発出を見送った理由とそれに対する見解をお聞かせください。

○難波県理事(リニア中央新幹線・熱海土石流災害担当)
 措置命令は熱海市の事務であり、熱海市の公文書に措置命令を見送った理由は記載されておりません。
 県の公文書においても措置命令が見送られた理由は記載されておらず、見送られたことも記録されていないのが実態です。
 どうしてなのか疑問ですが、私が県職員にヒアリングをしたところ県職員で知っている人は2名でした。記憶がある人は1名で、措置命令を見送った事実を聞いたのではないかと思われる人は2名でした。記憶のある1名によると、熱海市の職員が来て、上司のところに行ってその話をしたという話を自分にして帰っていったとのことです。
 県には公的な記録として残っていないので、なぜ見送ったか明らかになっていないというより県は公式的に見解を述べる立場になく、また述べられる状況にないのが実態です。

○佐野委員
 県にはそのような記録がないということですね。逢初川土石流災害に係る行政対応検証委員会報告書を見ますと、熱海市は業者が実施するとのことで措置命令を見送ったと記載がありますが、そこは返す返すも残念だったと思います。
 県はこの報告を受けていなかった、または残っていないということですね。

 関連して、熱海市が今年5月31日に土地の前所有者に対して措置命令を出したとのことですが、これに対する業者からの改善報告はあったのでしょうか。熱海市の管轄かもしれませんが、分かればお答えください。

○難波県理事(リニア中央新幹線・熱海土石流災害担当)
 市の権限ですので、私どもとしては正確に承知しておりません。また仮に承知していたとしても、これは先ほどの答弁にもありましたが、状況を公表するかどうかは措置命令をする場合に限ります。また今の土採取等規制条例には措置を実施したことを公表する規定がありませんので、第三者である県が公表できる状況にはなく、唯一熱海市が行政判断として何らかのコメントができる状況にあると思っています。

○佐野委員
 分かりました。この後どうなるのか注目していましたが、公表の義務はなく熱海市に委ねられてると認識しました。

 検証委員会報告書を見ますと、2011年度くらいまでは熱海市も盛土に危機意識を持っていたと思うのですが、その後急に行政側の危機意識が下がってしまったと思います。これは何か変化があったのでしょうか。
 2011年度から災害に至るまでの間何度か危機意識を持ったり危険性を承知しているように見受けられますがいかがでしょうか。

○難波県理事(リニア中央新幹線・熱海土石流災害担当)
 2012年3月末までは県職員も源頭部の危険性は認識しておりました。その後なぜか引継ぎが十分に行われておらず、外形的な理由としては2011年2月に土地所有者が変わったことかと思います。
 もう1つは、これは熱海市の見解が必要ですが、熱海市の百条委員会などから出てくる内容によると防災措置が少しなされ、それに少し安心したことで措置命令が見送られたと思います。土地所有者が変わり、土が搬入される可能性が減ったことと、残っている盛土に対して防災措置が少しされたため、安全性があるかのように錯覚してしまい対応が十分に行われなかったと思っております。

○佐野委員
 ありがとうございました。検証委員会報告書を見ましてもそのようなことを引き継いでいないことが見受けられますね。

 記録によりますと、2014年8月に東部健康福祉センターに現場が地滑りを起こしているなどと現場の工事に関わったD社O氏からの情報提供があったようです。また翌年2015年4月には報道機関の記者が現場は崩落の危険性があり災害が発生したら自然災害ではなく人災だと崩落の危険がある場所を提供したとありますが、今思うとそれらが生かされていなかったと思います。
 また、2016年にも先ほどのО氏から崩落のおそれがある伊豆山の現場は自分が崩落を食い止める工事を行ったが崩落までは時間の問題だと報告がなされています。
 これらが本庁の皆さんに共有されていなかったことが問題だと思うんですが、その認識はいかがでしょうか。

○難波県理事(リニア中央新幹線・熱海土石流災害担当)
 その点については、検証委員会報告書ではD社О氏と整理されておりますが、その方を含め何名かが東部健康福祉センターに来られた事実が公文書に残っております。そのときのやり取りも残っておりますが、それを読む限りどうも来られた意図を図りかねているというのが実態です。杜撰な現場作業を行ってきた本人からそこが危険だと言われどう対処したらいいのかという問題が1つ。また来られたときに源頭部の話だけでなく、日金町のがれきの処理の問題にかなり力を入れて話をしており、廃棄物処理の担当であったためそちらに関心がいって盛土の安定性には関心がいかなかった、自らの所管ではなかったことで日金町のがれき問題について特に反応してしまったのが実態だと思います。そうはいいながら指摘があったわけですから、県庁内で共有することが必要であったと思っております。

○佐野委員
 もう少し深追いすると、О氏は東部健康福祉センターに対して県の砂防課にも電話をしたとおっしゃったようです。それを聞いた職員は管轄は砂防課なのだと思ってしまったとも記載されておりますが、これが検証委員会報告書に書かれているように県庁内の縦割り意識につながったと思います。
 検証委員会報告書では、総括として県の対応の不備が書かれておりますが、これを受け止め――調整のまずさはあったとしても県として瑕疵はなかったと発言されていますが――最悪の事態を引き起こした要因の根底はどこにあると考えるでしょうか。

○難波県理事(リニア中央新幹線・熱海土石流災害担当)
 要因の根底は踏み込みの度合いであり、これに一番影響していたのはどういう事態が起きそうかという想定だと思います。検証委員会報告書にも最悪の事態の想定の失敗とはっきり書かれておりますが、これはこの問題に対処することだけではなく、県庁の日常の行政の中にもいっぱい出てきます。ある方が何か言ってこられたときに、あるいは現場で何かあったときに、多分大丈夫だろうと見るか、ひょっとすると大変なことになるかもしれないと思うかは個人の判断に任されているところがあります。往々にして、普通の行政をやっていると最悪の事態を考えることはあまりなく、普通の対応をするのが一般的ですが、こういった人命に関わる問題については常に最悪の事態を想定して対応する意識づけが一番大事だと思っております。
 したがって、先ほど引継ぎの話もありましたけれども、引継ぎ項目の中に熱海市の源頭部の問題が入っていなかったのは引継ぎの習慣がなかったのではなく、引継ぎは必ずやっておりますので危険な問題だという認識がなかったから記載されていなかったわけです。だから引継ぎをちゃんとやりましょうと意識づけをしても何の解決にもならず、根底にある県民の生命に関わる部分については最悪の事態を想定して断固たる措置を取っていくんだという意識を持ち、自分の法律の範囲だけではなく、行政全体、県全体、あるいは県と市で連携して、どうやって阻止できるのかを考える組織文化やシステムをつくっていく必要があると思っております。

○佐野委員
 ありがとうございました。
 今回の場合、難波県理事がお答えくださったようなしっかりとした検証がなされ、県の在り方もそのとおりだと思います。しかしながら不作為で県がやったわけではないのでしっかりと検討し、瑕疵がなかったと主張できると思います。

 あと、前所有者や神奈川県の業者などのつながりが複雑で内容を追いかけるのが大変なのですが、業者がしっかりとした施工をしていればもともとこういう事態にはならなかったと考えられます。
 工事中の業者には安全性として大変細かい安全規定が課されていると思うんですが、この工事の安全管理はどうだったのでしょうか。工事中のダンプカーの搬入などの安全管理はされていたのでしょうか。

○難波県理事(リニア中央新幹線・熱海土石流災害担当)
 安全管理については通行路の安全管理と現場の安全管理の両方の問題があると思いますが、現場は実に杜撰な状態で、作業していた重機が土砂の崩落で埋まってしまったり、逢初川の下流部にある港に土砂が流れ込んだりしており、安全管理がなされている状況ではなかったと思います。
 通行路の安全管理についてはダンプカーが通って怖いといった話はあったようですが、それほど大きな問題があったという記録は残っておりません。

○佐野委員
 安全管理に不安を感じていたなど、市民は災害の危険性をどの程度認識されていたのでしょうか。

○難波県理事(リニア中央新幹線・熱海土石流災害担当)
 市民への危険性の伝達は十分にされていなかったと思っております。当日まであのような盛土ががあることを知らなかった方がほとんどで、知っている方はほとんどいなかったのではないかと思います。

○佐野委員
 ありがとうございました。
 今さらですが、そのような情報があれば市民は避難勧告がなくとも避難できていたと思います。
 冒頭に言い忘れていたのですが、去年の7月3日に自宅で見たテレビ映像は忘れることができません。今まで静岡県は災害がなくて他県のことだと思っていたら、まさか熱海の地にあのような悲惨なことが起こり大変衝撃的でした。命を亡くされた方々には本当にお悔やみ申し上げますし、生活を奪われた方も大変だと思います。また災害復興には県、消防、自衛隊、警察など多くの方が関わってくださいました。1日でも早い復興を県全体で取り組んでいきたいと思っています。ありがとうございました。

 それでは、リニアの質問に移ります。
 本会議で質問した際にJR東海との対話についてお答えを頂きましたが、JR東海は説明がいつも大変分かりにくいんですよね。私もリニアの会議に十数年前から出ていますが、JR東海の若い職員は聞き取れないような早口であり、相手を全く意識しない説明の仕方が前々から気になっていました。しかしながら最近は反省を繰り返し改善されたと思います。
 JR東海側の説明姿勢が言い分を理解させる説得型のコミュニケーションだと本会議で答弁を頂きましたが、具体的にどのようなところが説得型のコミュニケーションだと感じたのでしょうか。

○難波県理事(リニア中央新幹線・熱海土石流災害担当)
 説得型のコミュニケーションの事例ですけれども、県は専門部会を設置してJR東海との対話を望んでいましたが対話になりませんでした。JR東海は水収支解析――トンネルを掘ったときに河川水にどのような影響が出るかの数値解析モデルの精度が高いことを前提で説明に入ります。高い精度で水収支解析を行ったから結果は正しい、その結果によるとトンネル湧水の全量を戻さなくても河川流量は減らない、だから全量を戻す必要はないという論調でした。これに対してなぜJR東海の水収支解析は精度が高いのですかと質問しても返ってこないんですね。これは実績があるからだと。
 こちらが分かるように説明してくれるのではなく一方的に自分たちの論理を主張するものであり、これが自分たちの正しさを理解させようとする説得型のコミュニケーションの例だと思います。

○佐野委員
 国交省がJR東海に対して住民を含めた双方向コミュニケーションを取らなければいけないと指導したと思いますが、JR東海の住民への今後の説明に対してどのような見解を持っていらっしゃるでしょうか。

○難波県理事(リニア中央新幹線・熱海土石流災害担当)
 県の専門部会でJR東海には何度もお話をしましたが一向に改善してもらえませんでした。例えばトンネルや非常口の標高を表示してくださいとお願いしてもやってくれませんでした。
 しかし、国の有識者会議が始まり、座長からは県の説明は分かりやすいがJR東海の説明は分からないと厳しい注意があり、初めてJR東海は考え方を変え、県が求めても出てこなかった資料が出るようになったのが実態です。また国の有識者会議は1年8か月かかりましたが、その中間報告書の中でも分かりやすい説明をするようにくぎを刺されています。それを受けて最近のJR東海の説明はかなり分かりやすくなったと思っております。午前中にお話があった工事中のトンネル湧水量を確定的に言うケースなど時々そうでない部分がありますけれども、全体としては分かりやすい説明になってきましたので、これからは双方向のコミュニケーションをしてもらえるのではないかと思います。双方向のコミュニケーションとは地域の方々、県の委員、県の職員の意見を聞くことであり、これらをしっかりと果たしていただけるものと信じております。

○佐野委員
 そうですね。私も信じたいところなんですが、JR東海は専門部会において双方向のコミュニケーションを考えていない形でトンネル湧水の全量戻しの方法を提案してきましたよね。
 不意な発表で驚きましたし、突然B案として田代ダム取水抑制案が出てきた経緯が分からないのですが、いかがお考えでしょうか。

○渡邉くらし・環境部参事(南アルプス担当)
 専門部会では、当日の議論が円滑に進むよう専門部会の委員に対し事前にJR東海から資料の提供をお願いしております。先日の専門部会でも県として事前に資料を提出するようにJR東海に求めておりましたが、全量戻しについては微妙な問題なので当日になると連絡を受けました。会議の午前中に急遽報道提供で発表されB案が出てきたことには、私たちも非常に驚きました。この案が出された理由は正直なところ分からないのですが、これは12月19日の有識者会議の中間報告にあったJR東海は関係者とトンネル湧水の全量戻しについて協議しなければならないとの指摘を受け、何らかの提案をしなければならないということで提案されたと考えております。

○佐野委員
 田代ダムの件につきましては、様々な団体との協議がまだ済んでいないうちにJR東海があのような形で提案したのは本当にいかがなものかと思いました。県や国交省とコミュニケーションを取りある程度信憑性を持たせた上で提案するべきではないかと思います。JR東海はこれから住民や周辺市町との話合いに入るかもしれませんが、事前資料や事前説明等に十分注視すべきだと感想を持っています。ぜひとも国交省等にしっかりと進言していくべきだと思います。

 次に、県の環境保全有識者会議が始まったことについて伺います。
 まだ論点が決まっていないようですし、出席委員も流動的とのことですが、環境保全有識者会議の今後の動向を県はどのように認識していらっしゃるでしょうか。

○宮崎くらし・環境部参事(南アルプス自然保護担当)
 前回の有識者会議では、論点はこれからの議論の中で考えていく、委員もこれから必要に応じて補充を考えていくとの説明がございました。今後論点を整理するに当たっては、現地を確認し地域住民や地域関係者の意見を聞いた上で議論したいとの意見もあり、これらを秋前までに進めていく予定です。
 南アルプスの希少な動植物を保全することは、非常に脆弱な環境であり難しいと思います。そういった状況を委員の方々に確認し論点を整理していただくことを望んでおります。

○佐野委員
 しっかりと論点等を組み立てるべきだと思います。
 県は環境大臣に対して5月31日付けで有識者会議の開催に関しての文書を出しています。国交省よりも環境省の力や助言等がこれから必要となると思うのですが、この文書について返事はあったのでしょうか。

○宮崎くらし・環境部参事(南アルプス自然保護担当)
 環境省から回答の文書は頂いておりません。あくまでも国交省がJR東海を指導するためのものであり、主体性については国が決めるものだと考えております。
 環境省に行政文書を出させていただいたのは、国立公園の環境保全を所管する環境省は南アルプスの情報や知見を蓄積しているため、議論をサポートしていただきたいと考たためです。

○佐野委員
 JR東海を指導するのは所管である国交省になるのかもしれませんが、審議の内容には南アルプスエコパークもありますし、環境省にリーダーシップを取っていただきたいと思います。環境分野で環境省の力を生かしていただくよう再度県からお願いしていただきたいと思います。

 県が引き続き対応を要する事項として整理した47項目については、引き続き審議するとのことですが、燕沢の発生土や水資源の問題などは解決しておりません。
 これからの環境保全有識者会議でこれらは審議されるのでしょうか。

○渡邉くらし・環境部参事(南アルプス担当)
 47項目につきましては、水資源と生物多様性の2つの問題に分かれます。
 先ほど御指摘がありました発生土の問題につきましてはこの両方に関わります。水資源の問題につきましては国の中間報告が出たため県の専門部会での審議に移っており、これから議論していくことになると考えております。

○佐野委員
 環境保全有識者会議には客観的な観点からの検証とあります。今までは科学的、工学的でしたが、客観的とはどのようなことを指しているのでしょうか。

○宮崎くらし・環境部参事(南アルプス自然保護担当)
 数値化、定量化することは非常に難しいと思いますが、地域住民、県民の皆さんが納得していただける解決策を探っていかなくてはならない中、客観的、社会的に受け入れられるものかどうかの意味合いも入ってくると考えております。

○佐野委員
 客観的、社会的に受け入れられることに期待したいと思います。リニアについてはありがとうございました。

 多文化共生のための外国人に対する施策についてお聞きします。
 夜間中学校である県立ふじのくに中学校が開校しますが、外国人支援として夜間中学にどのようなことを期待しているのでしょうか。

○横地くらし・環境部理事(多文化共生担当)
 夜間中学校は外国人だけを対象にしているものではございませんが、外国人県民には身分資格者が非常に多く、今後も静岡県で一生または長く生活する可能性が高い方々が多いです。技能実習生や特定技能実習生の方に比べて日本語を学ぶ機会が少ないことから、夜間中学校の開校により日本語能力の習得に期待できると考えております。

○佐野委員
 外国の方に大いに利用してもらうことを前提にしていますが、あくまでも義務教育を終えていない人が前提の学校です。そして中学校ですので中学1年生の授業や日本語についていける人が対象になっています。少し勘違いをしてる人がおり、夜間中学校に行けば外国人はそこで勉強を教えてもらえると思っている人もいらっしゃるようですが、そうではなく、あくまでも中学1年生程度の日本語と勉強ができることが前提の学校ですので、教育委員会や担当課の皆さんと連携を取りながら活用していただければと思います。

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