本会議会議録
委員会補足文書
平成23年10月大規模地震対策特別委員会
参考人の意見陳述 中部電力株式会社静岡支店長 小野田聡氏、中部電力株式会社原子力グループ部長 杉山和正氏、中部電力株式会社発電本部土木建築部原子力土建グループ部長 仲村治朗氏 【 意見陳述 】 発言日: 10/26/2011 会派名: |
○小野田聡氏
ただいま、御紹介いただきました中部電力の静岡支店長小野田でございます。日ごろから皆様方には私どもの業務に格別な御理解と御支援を賜りして、本当にありがとうございます。
きょうは、大規模地震対策特別委員会という御説明の場をいただきまして、重ねて御礼を申し上げます。私どもは、福島の事故以来、地元の皆様に御安心いただくために、いろいろな対策を検討してまいりました。福島はとめる、冷やす、閉じ込めるの冷やす機能がなくなったために、あのような惨事に至ったと考えておりまして、津波に対してしっかりとした対策を、より一層の対策を講じなければいけないということで検討してまいりまして、7月22日に公表させていただいております。その対策につきましても、既に着手しているものもございます。それから、よく注目されております18メートルの防波壁も準備工事に着手しておりまして、目下2交代の24時間態勢で一刻も早く完成させるべく頑張っているところであります。
本日は、これらの対策の内容ですとか、工法ですとか、目的などにつきまして御説明をさせていただきますけれども、今後、今進行しております中央防災会議や福島の調査結果で新たな知見が出てまいりましたら、これも私どもは適切に対応してまいりたいと考えておりますので、よろしくお願いします。
今、私どもこれらの対策をきちんと実現するというか、実行する、進めていくということでございますけども、加えまして地元の皆様方にやっぱり御安心いただくために、繰り返し、繰り返し、丁寧に、丁寧に御説明してまいりたいと思っております。また、現場も見ていただくように考えております。この委員会の皆様方も来月の御視察も含めまして、ぜひ一度現場に足をお運びいただいて、対策をしっかり見ていただけたらなというふうに考えております。お忙しいとは思いますけども、ぜひよろしくお願いします。
ちょっと私も所用がございまして、これで途中退席させていただきますけども、かわりまして私どもの支店の原子力グループの杉山と、それから本店の仲村が御説明させていただきますので、ぜひいろいろな御意見をちょうだいいただきたいと思います。きょうは本当にありがとうございました。
○杉山和正氏
静岡支店の原子力グループ杉山でございます。私から説明をさせていただきます。
お手元にお配りした資料と同じものをこちらのスクリーンに映し出して、進めてまいります。よろしくお願いいたします。
まず浜岡発電所の設備の概要でございますけれども、発電所は1号機から5号機まで5基の原子炉がございますけれども、このうち1号機と2号機につきましては、平成21年の1月末をもって運転を終了しておりまして、現在廃止措置を行っているところでございます。発電ができるのは3号機、4号機、5号機でございまして、全部で361万7000キロワットという電気をつくることができます。私どもこの夏に備えまして、全社で約3000万キロワットの発電設備を備えると、そういう計画で望んでおりましたが、この浜岡の分361万キロワット、約12%に相当しますが、その3機が運転できなくなってしまったわけでございまして、非常に夏場の供給力心配をいたしましたが、幸いなことに猛暑には至らなかったということ。それから何よりお客の皆様方に節電の御協力をいただきまして何とかこの夏を乗り切ることができました。本当にありがとうございました。
まず、地震・津波への取り組み、そもそもの浜岡発電所の取り組みについて紹介いたします。
まず、浜岡発電所の耐震安全性についてでございますが、左上のちょっと小さな地図と年表でございます。静岡県から四国の沖合にかけました太平洋側につきましては、東海地震、それから東南海地震・南海地震というものが、過去100年から150年の周期で、単独あるいは2連動、あるいは3連動でマグニチュード8クラスが繰り返し起こってございます。それで浜岡発電所につきましては、想定されております東海地震はもちろんでございますが、この2連動の安政東海地震とか、あるいは3連動の宝永地震とか、こういった過去の地震、これに余裕を考慮して600ガルの基準地震動――600ガルといいますのは、地震の揺れの大きさを示す単位でございますが――このような基準地震動というものを設定して耐震安全性が確保されるように設計、建設をいたしました。その後、地域の皆様により安心していただこうということから、1,000ガルという地震動――私ども目標地震動と呼んでございますが――こういう大きな地震動を設定いたしまして、それでも耐震安全性が確保されるように3号機から5号機まで安全上重要な施設に対して耐震裕度向上工事という、耐震の補強工事を実施いたしました。
こちらが地震動の大きさを示したものでございます。この右側のほうがおわかりになりやすいかと思います。横軸に時間・秒を示しておりまして、縦軸が揺れの大きさ、単位は加速度でございますが示しております。この一番下のものは中央防災会議が示しております想定東海地震の地震動でございまして、最大の揺れが395ガルというものが示されております。これに対しまして、私ども浜岡発電所の当初の設計におきましては、600ガルの基準地震動、大体大きさからイメージいただけると思いますが、このような基準地震動を設定して設計をいたしました。そして、その後1,000ガルの目標地震動と、こういった地震でございまして、大きな揺れが非常に長い時間続くと、このような条件で補強工事を実施いたしました。
補強工事の例でございますけども、左上の写真、これは排気筒でございまして、円筒状で高さが約100メートルございます。もともとは自立型でございましたが、その周囲に支持鉄塔を設置いたしました。それから配管の例でございますが、配管はこういった鋼材で支持をしております。サポートと呼んでおりますが、そのサポートにつきまして補強材を加えたり、あるいはサポートそのものを新たに追加したりと、このようなことを行いました。サポート類につきましては3号機から5号機で約5000カ所設置をいたしてございます。平成20年3月にその工事は終了してございます。
次に、津波に対する安全性でございまして、この上の図は、発電所の断面図を示しております。この右側が発電所の原子炉の建物を示しています。左側が遠州灘でございまして、海と原子炉の建物の間に砂丘堤防が存在してございます。私ども津波の想定につきましては、やはり想定東海地震、あるいは2連動、3連動の地震を考慮して、それに余裕を見て津波の遡上の高さ、この濃い青色、遡上の高さが海抜8メートルぐらいであるというふうに想定をしてございます。それに対しまして、砂丘の堤防は高さが海抜10メートルから15メートル、それから幅といいますか、スクリーンでいいますと左右の寸法になりますが、これが60メートルから80メートルございまして、海岸線沿いにずっとあります砂丘堤防で発電所を守っておるという設計でございます。この砂丘につきましては、地震の影響、あるいは津波の影響も考慮して健全性を確認しておるということでございます。こちらが砂丘堤防の一部を海のほうから見た写真でございますが、テトラポットを置いて堤防には植栽をしてございます。これはメンテナンスとして、きちっと高さ、形状を維持しておるということでございます。
そういったことで、そもそも地震、それから津波に対する対策はとっていたわけでございますが、やはり福島第一原発の事故を踏まえまして、その直後からさらなる安全対策について検討いたしました。全部で30項目取りまとめて7月に公表いたしてございます。ただいまからこの説明をいたしますが、概要を取りまとめた動画ございますので、それをごらんいただきたいと思います。お願いいたします。
(動 画)
浜岡原子力発電所の津波対策の概要について御説明いたします。この対策は東京電力福島第一原子力発電所の事故などから、これまでに得られた知見を反映し、作成したものです。
最初に、福島第一の事故を振り返ります。この事故の直接的な要因はマグニチュード9.0の地震を起因とした巨大津波により、海水を使って原子炉などの熱を取り除くための海水ポンプと、その電源となる非常用ディーゼル発電機などの重要な機器が浸水し、いわゆる冷やす機能を失ったことにあるとされています。
浜岡原子力発電所は、現状でも津波に対する安全性を確認しておりますが、今回皆様に安心いただくため、津波に対する安全性をより一層高める。冷やす機能を守るため対策を多重化、多様化する。福島第一で発生した事態を仮定しても確実かつ安全に冷温停止に導くとの考え方で津波対策を依存しました。
対策は、次のとおり整理しました。
浸水防止対策1、津波による発電所敷地内の浸水を防ぐ。
浸水防止対策2、敷地内が浸水しても建屋内への浸水を防ぐ。
緊急時対策の強化、福島第一で発生した事態を仮定しても冷やす機能を確保する。
浸水防止対策1、2は福島第一で発生した冷やす機能を失う事態を防ぐ対策であり、緊急時対策は万が一、福島第一で発生した事態を仮定しても複数の代替手段によって冷やす機能を確保する対策です。
浸水防止対策1、津波による発電所敷地内の浸水を防ぐ。浜岡原子力発電所では、東海・東南海・南海地震の3連動の地震などを検討し、津波の遡上の高さを海抜8メートル程度と想定しています。敷地前面にある砂丘堤防は海抜10メートルから15メートルの高さがあり、地震後においてもこの高さはほぼ維持され、敷地内への津波の侵入を防ぐことができます。
今回、この砂丘堤防の高さに福島第一に襲来した津波なども考慮し、海抜18メートルの防波壁を新たに設置することとしました。場所は、砂丘堤防の発電所側にある道路上に設置します。
なお、今回東北地方太平洋沖地震と同じ規模のマグニチュード9の地震モデルを試算したところ、その高さは海抜10メートル程度となり、防波壁の高さには十分な余裕があります。この防波壁は岩盤の中から立ち上げた鉄筋コンクリート製の基礎の上に、鋼構造と鉄骨・鉄筋コンクリートの複合構造からなるL型の擁壁を設置することで、津波や地震に対して十分に強い構造です。防波壁は、1号機から5号機の敷地に沿って建設し、総延長約1.6キロメートル、両端部は海抜18メートルから20メートルにかさ上げする盛り土に接続することにより、敷地前面及び側面からの津波の侵入を防ぎます。また、津波発生に伴う海面上昇により、海とトンネルでつながっている取水槽などから海水があふれる可能性があり、屋内にある耐水ポンプへの浸水を防ぐため、その周囲に高さ1.5メートルの防水壁を設置します。
浸水防止対策2、敷地内が浸水しても建屋内への浸水を防ぐ。
今回新設する海抜18メートルの防波壁を越える津波が仮に発生し、敷地内に浸水したとしても、冷やす機能を持つ重要な機器を守ります。浸水により屋外にある海水ポンプが使えなくなった場合に備え、新たに緊急時海水取水設備を設置します。これは屋外の海水ポンプと同じ機能を持つポンプを、防水構造の建屋の中に設置するものです。また、この水源として各号機の取水槽を結んでいる海水トンネルを利用して、他号機の取水槽からも海水をとれるよう水源ルートを多重化します。例えば、仮に4号機の取水槽から海水をとれない場合でも、他号機の取水槽からとれるため、4号機の熱を取り除く冷やす機能を守ることができます。
次に、海水ポンプの電源となる非常用ディーゼル発電機などの重要な機器を守るため、敷地内が浸水しても、原子炉建屋内への浸水を防ぎます。原子炉建屋外壁の大物搬入口や防水扉について、新たに耐圧、防水性能を高める構造物を設置して二重化します。また、建屋内の地下にある非常用炉心冷却装置のポンプなどがおさまる機器室には、既に設置済みの水密扉の補強や、その追加設置などを行い、防水性能をさらに高めます。
緊急時対策の強化、福島第一で発生した事態を仮定しても冷やす機能を確保する。
浸水防止対策1、2により冷やす機能は守られますが、この対策は万が一、福島第一で発生した事態を仮定しても、複数の代替手段によって冷やす機能を確保し、冷温停止に導くものです。
ここでは海水ポンプと、その電源である非常用ディーゼル発電機などの重要な機器が同時に機能を失うという、福島第一と同じ深刻な事態を仮定します。この事態に至った場合でも、原子炉停止後の余熱蒸気の圧力を使い、原子炉へ注水する機能が働きます。福島第一でもこの機能が一部働きましたが、この制御に必要な蓄電池が切れたため、最終的に冷やす機能を失いました。今回の対策では、建屋屋上に災害対策用発電機を設置するとともに、予備蓄電池を配備し電源の多重化を図り、電池切れを防止します。これとは別に、海抜25メートル以上の高台に設置するガスタービン発電機を起動し、非常用炉心冷却装置のポンプに電源を供給することで、速やかな原子炉への注水を可能とします。燃料タンク及び電源盤も高台に設置し、防水加工の電線ケーブルなどで、あらかじめ建屋と接続することでケーブルを改めて引く作業なしで電源を供給できます。また、このほかにもガスタービン発電機や災害対策用発電機の電源で、補給水ポンプを回し、原子炉などへ注水できる代替手段も備えます。さらに、敷地内の浸水が引いたあとには、電源を必要としない可搬式動力ポンプを高台から現場に運び、原子炉などへの直接注水も可能です。これらの水源としては既設の水源タンクに加え、高台にも水源タンクを新設するとともに、発電所の西側を流れる新野川からも取水できます。なお、余熱蒸気により原子炉の圧力が高くなる場合は、この圧力を下げますが、これにより格納容器の圧力が上がるため、ベント操作を行います。中央制御室からの遠隔操作を可能にするとともに、万が一電源がない場合でも、手動で行えるよう現場に窒素ボンベを配備します。
これら冷やす機能の代替手段を講じながら、並行して海水ポンプの取りかえ作業を行います。海水ポンプなどの予備品は高台に設置する緊急時用資機材倉庫に用意しており、作業に当たり津波により道路に散乱した漂流物や瓦れきなどはブルドーザーなどの瓦れき撤去用重機で速やかに撤去します。
海水ポンプの復旧とあわせガスタービン発電機や地震直後にとまると仮定していた外部電源の復旧によってこの電源が確保でき、本来の冷やす機能が回復します。これにより冷やす機能を失ってから一週間程度で確実かつ安全に冷温停止まで導くことが可能となります。
当社は、これらの対策により浜岡原子力発電所の津波に対する安全性をより一層高め、皆様の安心につながるよう全力で取り組んでまいります。
○杉山和正氏
それではもう少しスクリーンで解説を加えたいと思います。
まず、福島第一原発の事故をもう一度おさらいをしたいと思います。この図は、原子炉建屋でございます。真ん中に原子炉の圧力容器、そして燃料が入ってございます。右側のものはちょっと大きさが違いますが、タービン建屋、タービンの建物を示してございます。本来もっと複雑な系統ではございますが、ちょっと原理を御説明するために、非常に簡略化した図を示してございます。
原子力発電所が地震の揺れで自動停止をいたしました。その後、今度は原子炉、あるいはこの燃料を冷やす必要がございます。冷やすのはどうやってやるかといいますと、この水をポンプを使って原子炉に入れて、燃料を必ず水漬けにしておくということが1つ。それから、これは水といっても非常に熱くなってきますので、この原子炉の水を取り出して熱交換器で冷やして戻す。この循環運転をして原子炉、それから燃料を冷やしてまいります。熱交換器は、海水を流して、冷たい海水で原子炉の温かい水を冷やすと、そういった原理でございます。それから、これらのポンプ非常用炉心冷却系といいます。それから海水は海水取水ポンプといいますけれども、これらはモーターで動かしますので電源が必要です。外部電源といいまして、送電線から電気を受ける、あるいはこれが故障した場合は非常用ディーゼル発電機を運転して、ここから電気を供給すると、こんなことでございますが、福島第一原発では地震と津波によって送電線からの電源がなくなり、かつこのタービンの建物の中に海水が入って非常用ディーゼル発電機が水没して動かなくなった。それから屋外にあります海水取水ポンプ、これもやはり海水をかぶって動かなくなったということでございます。電源が全くなくなりましたので、中の非常用炉心冷却系のポンプも動かなくなった。そして事故に至ったということでございます。電源、それから海水ポンプ、それから非常用炉心冷却系の機器、この三つが非常にポイントとなる機械ということが言えるわけです。
浜岡発電所の津波対策の考え方についてお示しをします。まず津波の浸水防止対策としまして、1つ目、これはとにかく発電所の敷地の中に水が入ってこないようにするという対策でございます。
それから2つ目は、浸水防止対策の2といいまして、これは仮に発電所の敷地の中に津波が入ってきたとしても、重要な施設が入っております、原子炉建屋を中心とした建物の中には絶対に海水を入れない。これによって原子炉を冷やす機能を守ると、そういう対策でございます。この2つの対策をとれば、津波による事故というのはほぼ防げるというふうに考えられるわけでございますが、ここでとどまらずにもう一歩踏み込んで、何らかの要因で福島第一原発と同じような状況になってしまった。すなわち電源が全部なくなり、かつ海水が取水できなくなったと、そういったところからスタートをして、それでも安全が確保できるように対策を強化すると、こういう三段構えの対策をとることにいたしました。
1つ目が、発電所の敷地内への浸水防止対策ということでございます。こちらに発電所の断面図、右側が原子炉の建物、左側が海、そして砂丘がございます。発電所の敷地の中に津波が入り込むルートが2つございます。ひとつは、この砂丘を乗り越えて入ってくるというルートでございます。この対策としては、防波壁です。防波壁、防潮堤のようなものをつけるということと、この砂丘堤防の一部についてかさ上げをすると、その対策でございます。
それから、発電所の冷却用に海底からトンネルを掘って、発電所の中に取水をしております。こういった取水槽という池、あるいはこれはまた外に海水を戻すにあたって放水ピットというような開口部がございます。放水ピットにつきましては、それほど大きくないものですからふたをして水があふれないようにするということ。ただ、この取水槽というものは非常に大きなものでございますので、ふたをするのが非常に困難ということでございます。ということなので、この取水槽からもし水があふれても、その水をかぶらないように機械を守るということから、近くにあります海水取水ポンプの周りに防水壁というものを立てて、水をかぶらないようにしようという対策でございます。
こちらが防波壁でございますが、T.P.というのは海抜のことでございますが、海抜18メートルの高さの防波壁をつくります。発電所の敷地の高さが海抜でいいますと6メートルから8メートルの高さですので、そこからの壁の高さとしては10メートルから12メートルということでございますが、非常に高い壁をつくって発電所を守るということでございます。この壁の鳥瞰図がこちらにございます。厚さが2メートルの壁を立てていくということでございますが、やはりこういった構造物に関しましては、基礎が非常に重要でございます。ここに示してありますが、下駄の歯のような形をしてございますけれども、地中壁といいますが、こういった構造物を岩盤の中に根入れをして頑丈な基礎をつくり、その上に壁を立てていくと、これによって地震の揺れ、それから津波の力に耐えると、そのような考え方でございます。
これは配置図を示しており、これは発電所を上から見た図でございまして、発電所の建物、下側が海でございます。海岸線に沿って全長約1.6キロメートルになりますが、海抜18メートルの防波壁を設置いたします。それから西側、あるいは東側につきましては、現在盛り土がございますけれども、それをかさ上げいたします。高さ18メートルから20メートルにかさ上げをいたします。あと、山のほうにつきましては、すべて20メートル以上の山になってございますので、発電所全体を海抜18メートル以上の壁ないし盛り土で囲むと、そういう考え方でございます。
次に、浸水防止対策の2としまして、これは発電所の敷地の中に海水が入ったとしても、建物の中には絶対入れないという対策でございます。守らなくてはいけないのは3つございまして、海水ポンプと電源、それから非常用の炉心冷却機の機器ということでございますが、海水ポンプにつきましては、浜岡も屋外に設置をしてございますので、仮に津波が敷地の中に入り込んだ場合には、これは壊れるというふうに考えます。そして対策としましては、同じようなポンプをもう1系統別に設置して、回りを防水構造の建物で覆ってしまうと、そのような対策をとることにいたします。それから、非常用のディーゼル発電機、電源とか、非常用の炉心冷却系の機器につきましては、原子炉建屋の中に入ってございますので、その建物の防水構造を強化すると、そういう対策をとることにいたします。
こちらが海水取水ポンプ、海水の冷却機能の維持ということでございますが、緊急時海水取水設備(EWS)というふうに私ども名づけておりまして――Eというのが緊急エマージェンシーのEをとったものでございますが――こういうものを設置します。同じような海水取水ポンプを新たに設置して、その周りに建物をつくってしまうと、防水構造の建物で覆ってしまうということでございます。ですから、発電所の敷地内に海水が侵入しても中にあるポンプは運転できると、そういう考え方でございます。
それから、建物の中への浸水防止でございますが、これは原子炉の建物の断面図を示していますが、外壁の扉、これが幾つかございますけれども、今は一重の扉の防水構造ではありますが、これを二重の扉にいたします。外側は強化扉といいまして津波の力に耐えられるような扉、そして、内側の扉につきましては水密性の高い扉、外で津波を防いで内側は水の浸入を防ぐと、そういう考え方でございます。それから、給排気口、吸気排気で空気の取り入れ口が一部ございますが、それにつきましてはシュノーケル、象の鼻のように上のほうにかさ上げをして、高い位置に開口部を設けて、そこから水が入らないようにするという対策でございます。それから、さらに原子炉の建物の中に、中でも重要な設備、非常用炉心冷却系の機器などの部屋につきましては、その部屋ごとに水密扉を設置するということでございます。これは仮に原子炉建屋の中に水が入ったとしても、重要な部屋には絶対に入れないという対策でございます。
以上の二つの対策をすれば、十分ではないかということではあるんですが、やはりそうではなくて、福島と同じ状態からスタートしても安全確保できるという対策が、この緊急時対策の強化でございます。ちょっと小さくて恐縮でございますが、まず電源というのは非常に重要です。これをしっかり確保しようということでございまして、高台にガスタービンの発電機を設置します。これは比較的容量が大きな交流電源でございます。それから原子炉建屋の屋上に災害用対策発電機といいまして、これはディーゼルエンジンを使った比較的小容量の交流電気。それからもう1つはバッテリー、蓄電池。これは直流電気でやはり用途に応じて3種類の電源をしっかり確保するという考え方でございます。
それから次に、原子炉に送る水をちゃんと確保しようということでございますが、これにつきましては、発電所には結構タンクや水槽がたくさんあって、水を保有をしておるんですが、さらに原子炉の建物の近くにタンク、あるいは高台にもタンクを置いて、まず保有水量をたくさんにしておこうという対策。さらには、発電所のすぐ西側に新野川がございますので、そこから淡水を継続的にとれるような装置を設置するというようなことでございます。
それから、3つ目は除熱設備、要するに海水取水ポンプ、海水取水機能をしっかり確保しようというのでございます。これにつきましては、防水構造の建物の中に設置をしますので、極めて信頼性は高いというふうに考えられますが、それでも壊れるということを想定して、予備品を用意しておきまして、もし壊れたらすぐに修理をするということです。修理そのものは私ども取りかえは、定期的に工事で日ごろやっておる作業でございまして、特別な作業ではございませんので、津波警報がなくなった後、作業をして復旧すると、そんなことを考えてございます。
次に、今までは計画でございますが、現在の工事の実施状況について説明をいたします。
これは私どものホームページでもお示しをしておりますが、全体の計画でございまして、浸水防止対策として発電所の敷地に入れない対策が4件あります。それから2つ目が、建物の中に入れない対策、これが計10件。それから緊急時対策の強化、その他入れて16件ということで、全部で30件の対策がございまして、黒い部分がもう着手しておる分でございまして、ピンク色がこれからやっていくところということでございます。いずれも来年の12月までには終えようという目標を立てて進めてございます。既に、30件のうち10件につきましては工事が完了してございます。
その中から防波壁、一番大きな工事でございますが、これの設置工事のスケジュールでございますが、調査・準備工事といたしまして、地盤の調査、ボーリング調査とか、測量とか、あるいは干渉物の調査、あるいは移設、これにつきまして4月5日から着手をして進めてございます。
それから本体の準備工事としまして、9月22日から掘削工事を今後行いますので、それに先立って土どめのための鋼矢板の打設とか、地盤改良、こういったものについては、もう既に着手をしてございます。本体工事・基礎工事と壁の工事につきましては、準備ができ次第でございますが、来月の中旬ごろから準備ができ次第着手したいと、そのように考えてございます。この防波壁の本体工事の手順でございます。まず基礎、この地面の中の地中壁というものをつくる工事でございますが、表層の比較的やわらかい地盤につきましては、先に地盤改良をして少しかたい状態にしてから機械で掘削をしていきます。かなり深い部分もございますが、掘削をしたあと、地中壁とほぼ同じような形、直方体に組み立てた鉄筋を入れ込んでいきます。そして、コンクリートを打設して基礎をつくっていくというところでございます。
次に、その上部基礎の上に壁と基礎の間にありますが、床盤と読みますけども、こういったものを設置します。鉄骨の床盤を基礎の上に設置し、そして鉄筋を敷きつめてコンクリートを打っていくと、そういう工事でございます。床盤ができ上がりましたらその上に壁を積んでいくわけでございますが、鋼殻壁といいまして、鉄板でつくった箱、内部には補強のための鋼材がたくさん入ってございますが、そういったブロックをボルトで組み上げてまいります。そして、やはり壁の下部のほうは特に強度が必要なものですから、内部にコンクリートを打設していくと。それから上部のほうにつきましては、内部の鉄の腐食を防止するために、軽いコンクリートを入れていくと、そんな計画をしてございます。
次は、発電所の工事体制でございますが、私どもこれまで定期点検工事やら、改造工事やら、いろんな工事を提言してございますが、やはり今回の津波対策につきましては、最大規模の工事ということでございまして、品質管理、安全管理、それから工程管理をきちっとやっていく必要があるというふうにしてございまして、発電所長を総括責任者といたしました工事推進チームというものを編成してございます。品質管理の専門部署、あるいは安全管理の専門部署、それから設計をしております本社の設計グループなどが、これに意見を述べて、工事担当部署を指揮していくと、こういう体制で現在臨んでいるというところでございます。
それからちょっと話は変わりますが、訓練の模様でございまして、いろんな対策をするわけですが、設備ばかりつくってもちゃんと使いこなせないといけませんので、訓練をしてございます。まず3月でございますけれど、3号機につきまして電源喪失の事故を想定して、原子炉への代替注水訓練、電源供給訓練をまず実施しました。次に、4月に入りまして3号機だけではなくて、1号機から5号機までそれぞれについて同様の訓練を実施しました。次に、1号機から5号機について、同時に電源がなくなってしまうと、そういう事故を想定した訓練を実施しました。6月には電源喪失だけでなくて、燃料が壊れてしまうなどいろんなことを想定して原子力災害というものに対応した訓練を実施し、8月31日から9月1日、この2日間に掛けましては地震と津波による1号機から5号機同時の電源喪失、かつ海水系機器の喪失事故、すなわち福島第一原発と全く同じような想定でございますが、そういう想定での対応訓練を実施しました。3月以降、だんだん順に難易度を上げた訓練を実施しております。ということで、今後も継続して訓練は実施してまいります。
最後にまとめですが、この津波対策工事、来年の12月に完了することを目標に実施をしてまいります。皆様方、あるいは地元の皆様にも丁寧に御説明をして、安心につながるように取り組んでまいりたいというふうに思ってございます。
それから、もう1つ、現在まだ福島第一原発の事故調査とか、中央防災会議で津波や地震の検討が進められておりますので、そういった検討の結果、得られた新たな知見に対しましては、必要な対策を講じてまいりたいと、そのように考えてございます。以上で、私の説明を終わります。ありがとうございました。
○中谷委員長
ありがとうございました。以上で、中部電力の方々からの意見陳述は終わりました。
これより、質疑に入ります。
委員の方にお願いをいたします。質問は、まとめてするのではなく、なるべく一問一答方式でお願いをいたします。
それでは、質問・意見等ありましたら、発言願います。
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