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委員会会議録

委員会補足文書

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平成24年11月産業育成支援特別委員会
参考人の意見陳述 富士市産業支援センター f−Biz センター長 小出宗昭 氏 【 意見陳述 】 発言日: 11/28/2012 会派名:


○小出宗昭氏
 皆さんおはようございます。富士市産業支援センターのセンター長を務めております小出でございます。今回、また再びこの場にお声がけいただいて非常にうれしく思っております。今から、吉川先生からおっしゃっていただいた40分間いただきながら、この富士市産業支援センターの取り組み、ちょうど4年半になるわけですけども、ここから何が見えてくるのかについて、皆さんと一緒に共有していきたいと思います。その後、是非、積極的に御質問いただければというふうに思っております。お願いします。
 お手元に配られたペーパーの中に、私のプロフィールがございますので、それをざっと見ていただくと、私が今どんなような形でここに至ったかということが簡単に書いてございます。もともと静岡銀行に26年間勤めておりまして、勤めておった最後の7年半は公の産業支援の世界に出向の形でかかわりました。はじめは県のプロジェクトだったSOHOしずおかの立ち上げ、これが6年半に及びまして、2004年9月からは静岡市がつくった、静岡市産学交流センターのマネジャーとして3年間ぐらいやりまして、その後、やはり静岡銀行の命で、浜松の浜松産業創造センターの立ち上げに2007年から2008年6月までかかわりました。その後、実は生まれ故郷の富士市からかなり強く引っ張られまして、新たにつくる支援センター、これがまた今やっております富士市産業支援センターf-Bizなんでございますけれども、この立ち上げをやってくれないかということで、その機をもって静岡銀行を退職し、小さな会社をつくって、これの運営に当たっているということでございます。
ちなみに、全国あまたの中小企業支援センターがあるわけなんでございますけれども、大概それを運営、受託するのは当県においてもそうだと思うんですけれども、財団法人、あるいは第三セクターが受託するわけなんでございますけど、唯一純粋な民間企業が受託したのが我々富士市産業支援センターf-Bizでございます。こんなような独特のスキームでやっているんですけども、やはりその間いろんな中央官庁からもお声がけいただいたり、あるいは県のほうからもいろいろお声がけいただいてさまざまな委員も務めさせておりまして、今現在はf-Bizの運営をやるとともに、さまざまなお手伝いもしていると、こういうところでございます。ここからが大問題でございます。
 今、公の産業支援がどうなっているかという、こういう問題でございます。経済産業大臣、今の自民党の甘利政調会長から呼ばれた会議だったのでございますけども、私がこの世界に入って何年かたって、2005年ごろだったと思いますけれども、中小企業庁、経済産業省から呼ばれまして、何だって言うと、要は公の産業支援が全く機能していないというような物すごい危機感に基づいて、一体どうすればいいんだというようなところだったんです。以来、毎年同じようなことの検討を繰り返しているのですけども、どううまくいかないのかというと、要するに、今国の中小企業支援の予算というのは、円滑化法のような金融支援を除いてどのぐらいのお金が費やされているかというと、大体1900億円というふうに言われています。ここ数年、全然変わらないのでございますけれども、1900億円費やしても、一向に期待される成果があらわれないというところなのです。その辺、私もこの世界へ民間の立場から入ってきて、結構早期の段階で感じました。
その原因を見てみると、実は国がつくっている制度とか、あるいはハードの部分にはほとんど問題がございません。とてもよくできているのです。中小企業者のニーズをよくくみ取って、とてもいい仕組みになっている。だけれども、明らかに問題点が見えるのは運用の部分と、並びにそれに付随する人材の部分に大きな問題を抱えているというのが、経済産業省も感じているし、私自身も感じているところなのです。
わかりやすくいうとどういうことかというと、当県の事情はちょっと横に置いといて、全国レベルのお話にさせてください。恐らく皆様方の選挙区の中小企業者もそうだと思うのですけれども、この近隣もそうだと思うのですけども、地域の中でたくさんの中小企業者いらっしゃるわけです。99.7%の企業が中小企業です。この人たちの中で悩みを抱えている人がどのぐらいいるか、経営的な課題、悩み、問題点を持っている人がどのぐらいいるかというと、恐らく100%の人たちが持っているわけです。経営的な課題、悩み、問題点を100%の人たちが抱えている。同じ100%の人たちが今よりもよくありたいというふうに考えているわけです。そういう意欲を失くすともう廃業してしまいますので、100%の人が問題を抱え、悩みを持っていて、みんながよくなりたいと思っているとすれば、そこにいけばよくなるというところがあったらどうなるかというと、こういう時代ですから、言うまでもなく行列ができる状態になる。つまりは公の支援センターがたくさんある中で、期待されるところがあるとすれば、そこに行列ができる構図のはずなのです。
ところが今どうなっているかというと、経済産業省と一緒に全国の調査をしてみても、ほとんど来ていないのです。来る相談というのは補助金とか、助成金の申請、あるいは金融支援の部分です。本格的な経営の相談に来ているというのは、もうほとんどまれなわけです。ほとんど閑古鳥状態というのが全国の公の産業支援の実態なのです。これは何でかというと、理由は明解なのです。人は理由がなかったらアクションを起こさないわけです。そこに行ったらよくなるということが見えないと、多分、人は足を運ばないのだろうと思うのです。つまりは中小企業者にとってみて、魅力が少ないから恐らくは足を運ばないのだろうと。つまりそこからは余り結果が出ていないというのが現状ではないかというふうに経済産業省も見ていますし、我々、僕自身もそういうふうに感じるところなのです。
つまりそこにいっても余り意味がないと思うから人が行かないだけだという構図なのです。僕はどう考えたかというと、課題を抱えていて皆さんはよくなろうと思っているのだから、我々みたいな支援機関がなすべきことというのは問題を解決してよくなるわけだから、やることの本質というのは、公のセクターなのだけれどもビジネスコンサルティングなのだろうというふうに考えたわけです。つまりは課題を解決して、結果を導き出すことだろうと。つまり求められているのは結果だということなのです。結果なのです。結果を出さなければしょうがないと。結果を出していれば、当然ながら地域の中小企業者は必然的に相談に来るだろう。
だから、そこの施設の活性化のバロメーターというのは、来てくれる相談件数にあらわれるだろうというふうに考えたのです。こんなことを認識している公の支援機関も実はほとんどないのです。我々はもうそこだというふうに思っていますから、年間の毎年毎年来場の相談件数を見ているわけなのですけども、直近ですと2,140件ですから、月200件弱なのでございます。先ほど申し上げましたとおり、私は今、中小企業庁の中小企業政策審議会のメンバーもやらせていただいていますけれども、全国調査をいたしましても、私ども富士市産業支援センターよりも来てくれる、来る相談、来場相談件数が多いというところは見たことがないというところでございます。そういう面でいうと、非常に活性化した支援センターなのです。
我々は具体的に何をやっているかということなのですけども、ちなみに富士市産業支援センターf-Bizのモデルが非常に今、注目を集めていて、このf-Bizモデルを自分のまちに展開したいというのが、行政だったり、あるいは経済団体だったり、民間企業がたくさん出て来ておりまして、今、北は北海道の釧路から、南は沖縄まで、何とかBiz、何とかBizというのが随分ふえました。これは研修生を私どもに送り込んでもらって、半年なり、一年なりトレーニングをして現場に帰っていくのであって、そのやり方でやってもらう。あるいは、我々が土日を使って定期的にお邪魔して出張相談会を繰り返しながらノウハウを移転していくみたいな形で、いろんなところでやっていると。こんな状態なんです。
 スタッフは全員で8名でございます。僕のようなアドバイザーというのは5人おりまして、サブマネジャー、経営コーディネーター、クリエイティブディレクター、ITアドバイザーと5名でやっております。それで200件の相談をさばいております。施設そのものは非常にこぢんまりとしておりまして、従来、図書館の中で余り使われていなかった休憩の場所を、簡単にパーテーションしてつくったわけでございます。
具体的にどんなことをやっているのだということを聞いていただくと、皆さんイメージしていただけると思うのです。僕が思うのは、今中小企業者のさまざまな相談があるかのように言われていますけども、圧倒的多くの相談というのは何かというと売り上げの問題なのです。技術の相談とか、事業承継の問題云々なんていうけれども、僕は12年間やってみて、今まで4カ所の支援センターやりましたけども、実は技術の相談なんていうのは皆無とは言わないものの、実は物すごく少ないのです。ある事業承継の問題、これは根底には持っているかもしれませんけど、それを顕在化するということというのはむしろ売り上げに問題があって顕在化したのです。圧倒的に多くの中小企業者は、これは全国レベルで考えてみて、今物が思うように売れないのです。売り上げ不振なわけです。だから、彼らのニーズというのは、何とかして売り上げを上げたいというのが、ほとんどの恐らく9割ぐらいのニーズだと見て間違いないと思うのです。ですから、我々は売り上げを上げる方法を提示する。そういった知恵を出すのが我々の仕事だと思っているのです。知恵を出すことなのです。金を出すのではないのです。知恵を出すのです。
 売り上げを上げる方法というのは、実は3つしかないというふうに我々考えています。これはまず何やにあるかというと、販路改革、今の販路よりも広げるということ。2つ目、新商品開発、新サービスの開発。3つ目、新分野進出。これしかないだろうと。細かく言えばいろいろあるけども、もう細かく言ってもごちゃごちゃするだけだからシンプルに伝えていこうと。物事をシンプルに伝えようというふうに考えています。その3つを達成するために必要な、我々の提示する戦略、知恵というのは何かというと、まず第一に重要なのが、本当のセールスポイントを生かすこと。真のセールスポイントを生かすという部分。2つ目、ターゲットを絞ろうということ。3つ目、連携するという話なのです。この3つの戦略を駆使しながら、お金を使わずに流れを変えていくということをやっているのです。
例えば、この話はとってもわかりやすいのです。株式会社司技研さんが我々のところに相談に来たのは2008年8月で、まさに私どもがオープンしたときでした。この会社はどういう会社かというと、従業員13名の富士市の会社で、試作部品をつくっている会社なのです。当時の売り上げ、大体2億円ぐらいでした。従業員13名です。朝一番に社長さんと専務さんに相当する人が来られまして、何をおっしゃったかというと、バブル期を頂点として売り上げが下がりっ放しだと言っていました。今までいろんなことをやってみたけれども、一向に効果がないのだと。ありとあらゆるところに相談もいったけど、プラスになるようなそういったアドバイスはなかったと。もはやどうしていいのかわからない。というような話だったのです。もはやどうしていいのかわからない。我々はそんな中でも、何とかなるだろうという前提で考えるのです。
まず何をやるかというと、本人たちはバランスシートをいっぱい持ってきてました。3期分ぐらい恐らく持ってきたのですけど、それを見ません。何で見ないかというと、理由は明解なのです。バランスシートをつついても売り上げが上がらないからなのです。2つ目、僕は銀行員をやっていたからわかりますけども、バランスシートに関しては金融機関の融資担当者がもういやというほど問題点は指摘しているのです。それから債権保全という観点から、もう思い切り指摘しているのです。だから、それは恐らく把握できているだろうということ。その2点からバランスシートはもうほとんど見ないです。全くというほど見ていません。その一方で、とにかく話を聞いて、その中から転換するポイントを見つけるのです。
 まず話を聞いたら、何ていったかと言うと、自分たちは小さな会社で業績も厳しいのだけど、かなり無理をして優秀な工作機械を入れていると言っていました。これがあるから本来は鋳型をつくらなければできないような部品も削りの技術でできるのだと言ったのです。技術力が高いというのです。だけど仕事がこない。
さらに話を聞いていると、こんなことを言ってくれました。自分たちはモットーとして、どんな無理な仕事も引き受けようと思っていると。例えば、電話がきて急いでいるというふうに言われたら、そこから図面を引き、一生懸命削って、3日で納品をしていますと。こういうふうに言ったのです。僕らはその言葉に反応したのです。3日って今おっしゃったけど、本当にふつうにそうなのですか。といったら、いやそんなのふつうだよって、こともなげにおっしゃる。そこから指摘が始まったのです。そんなにスピーディーにフレキシブルに試作部品をつくる企業、つくる試作屋さん、探している企業がいっぱいありますよと。ここがすぐれている部分なのですよ、セールスポイントなんですよと指摘したのです。ビジネスの基本があるのだと。
ビジネスの基本というのは、いい商品で、みんなが求めている商品だったら売れる。いいサービスでみんなが求めているサービスなら売れるのだけれども、たった1つ重要な条件があって、何かと言うと、知ってもらえればということなのだと。逆に言うと、いいサービスで、みんなが求めているサービスだって知ってもらわなかったら売れないのだよと。これはそういうことなのだよというふうに申し上げた。その場で、もう最後のほうで。ミーティングは1時間だって決めてるのですけど、1時間のミーティングの最後のほうで言ったのは、こうしようと、あしたから新サービスをはじめることにしようというふうにアドバイスをしたのです。どういうことですかというから、あなた方は3日でできるのでしょうと。できますよというから、そこを抜き取って、新サービスの名前をつけましょうと。試作特急サービス3DAYという名前で、その特急サービスを新サービスにしてしまおうと。こういうふうに申し上げたのです。言った瞬間どうなったかというと、本人たちは瞬間的に顔色変わりますよ。
とにかくやってみますということで帰られて、3カ月後、報告に来てくれました。何とおっしゃったかというと、そのとおりにやったら、新規の取引先が50社ふえましたと。こういう話ですよ。今や、この司技研がどうなったかというと、毎年毎年、3カ月ぐらいに一遍のスパンで報告に来てくれるのです。去年の夏も、ことしの夏も何とおっしゃったかというと、すごく忙しいと言うのですよ。すごく忙しいって、一体どんな仕事がきてるのといったら、電気自動車の仕事だというのですね。どういうことっていったら、電気自動車の仕事がどこからきてるのといったら、契約の関係で社名は言えないのです。某自動車会社から直接的に来てるのです。ほかにどんなところといったら、モーターの会社からなのですよ。もう誰でも知っている有名なモーターです。
聞いてわかったのは今や次世代の車というのは電気自動車です。メーカーにしてみても、モーターの会社にしても、1日でも早く試作車をつくらなければいけない。だから1日でも早く試作部品が欲しい。だから、ここにひっかかったのです。何か営業をやったのかというと、いや特別にやって記憶はないというのです。我々が言ったとおりホームページに掲げたのと、チラシで最初まいただけなのだと。でも多分口コミは効いたかもしれないという話です。今や、電気自動車の仕事をかなりやるようになったのです。皆さん御存じのとおり県内においても、電気自動車の仕事をとるということはいろんな協議会とか、委員会とかつくって、税金も投入しながらやっているのだけど、なかなかとれない中で、司技研はこんなかたちで電気自動車の仕事をとったわけです。
さらに重要なのは、ここがポイント。司技研の流れを変えた試作特急サービス3DAY、これをやるに当たって一体幾らかかったのかなのです。幾らかかったかというと、チラシ代を除いたらゼロですよ。金をかけてないのわかりますよね。金をかけてないのです。その一方で、重要なものを1個使っているのです。何かというと知恵なのです。知恵を使って流れを変えているのです。中小企業にとって、今何が必要かという、この知恵の部分なのです。我々みたいな支援機関がやらなければならないのは、こういう知恵出しなのです。そういうことなのです。
だから、どんな企業にも必ずセールスポイントがあるのです。セールスポイントのない企業なんて存在するはずがないのです。でもそこに気づいていない企業が多いだろうと。そこに気づきを起こさせて、流れを変えてやったのがこの司技研のケースなのです。我々は現場ではこういうことにこだわっているのです。決して、補助金も必要ないし、助成金も要らないし、でも一方で必要なのは知恵なのです。知恵を使って流れを変えるのです。その結果、どうなったかというと、我々のところに相談に来たとき、正規社員13名だった司技研が、今は16名です。13が16ってこういった中小企業にとって大変ですよ。それが達成できたのです。でもそれが何かというと知恵を生かして、今まであったセールスポイントを抜き出して新規参入したからこうなると。こういう話です。
 あるいはこのケース、これもものづくりになります。増田鉄工所さんというのは、これは金型屋さんになります。富士市の金型屋で、従業員が60名、売り上げ8億円ぐらいでした。我々のところに相談に来たのが2010年の春でございます。
どういうきっかけだったかというと、その前の年、2009年にリーマンショックがございました。皆さん御存じのとおり、リーマンショックの影響を最も受けたものの1つが自動車関係でございます。特に金型屋は非常に厳しいというふうに言われていました。新聞紙上では、金型業界売り上げがリーマン前に比べて7割ダウンということが、よく出ていましたけども、増田さんにとっても、そんなトレンドの中で非常に厳しかったからこそ、厳しいときに増田さんは何やろうとしたかというと、技術の差別化、技術力で生き残ろうとしたのです。
何を考えたかというと、これ、自動車のドアの部分の部品ですよね。この金型なんかは、従来の工法というのは3つぐらいに分けて金型をつくって、最後に1個に合わせたのが従来工法だったのだけれども、増田さんたちはかねてから、こうすれば最初から一発で金型ができるということに気がついたのです。だから、このピンチのときだからこそ、この技術を商品化して売り出そうという、一体構造金型というふうに売り出したわけです。これが実際の物です。これは1つ500万円もするのです。技術的には物すごくすぐれているわけです。彼らはこの技術がセールスポイントだと思っていた。
ところが、どうなったかというと全然売れないのです。全く売れない。1個も売れないのです。さまざまなところにも相談しました。金融機関に相談したところ、メーン取引銀行は経営革新とるといいですねということで、その銀行も手伝って経営革新とりました。売り上げはどうかというと、当然関係ないわけです。経営革新をとっても、売り上げが上がるわけではないのです。いろいろな助成金がついてくるかもしれないけど、売り上げには寄与しない。困り果てて翌年の春、我々のところに相談に来ました。
我々自身は、正直言って技術のことは何もわからないのです。僕も典型的、文系人間なので。でもひたすら彼らの話を聞いていて、1つ気がついたことがあったのです。これはセールスポイントが違ったなということに気がついたのです。何かというと、彼らはこの高い技術が売りだと思ってそれをセールスしていたわけですけども、僕はそうではなくて、この金型がもたらす効果のほうがセールスポイントではないかというふうに考えたのです。増田さんにこう言ったのです。増田さんわかりましたよと。これは金型を売ろうとするから売れないのです。こういうふうに申し上げました。金型を売るのではなく、このもたらす効果を商品にしようと。課題解決型の商品、それを商品ビジネスとして売り出したらどうかというような提案をするのです。
どういうことかというと、増田さんたちはこの一体構造金型を使うと製造費、設計費、事務処理などのコストが軽減される大きなメリットがあると、はっきり僕に言ってたのです。だから、僕は技術そのものではなく、このもたらす効果を売りにしようというような提案をしました。うちのサブマネージャーがそこで名前をつけまして、金型革命5ダウンという名称をつけてくれまして、要するにもたらす効果、課題解決型の商品で売ったらどうなったかというと、全然売れなかったのが、その月で4台、その後の半年で50台売れるわけです。
ここで使ったのは何かと言うと、やっぱり知恵を使っているのです。真のセールスポイントを生かすという知恵を使って、そういうアドバイスがあって、再生していくわけです。こういう話なのです。これが我々にとって、求められていること、我々みたいな公の支援機関がやるべきことだと思うのです。知恵を出して流れを変えていく、中小企業者を再生させていくという話なのです。
 一方、増田さんたちの3回目ぐらいのミーティングで、今度は相談されたというよりも、むしろ我々が、彼らの話の中で気がついたことがあって、1つ提案したことがありました。営業担当の役員がこんなことを言ったのです。小出さん知ってるかと、金型業界というのは本当におもしろい業界で、ふつう物をつくって納めるとメンテナンスってするだろうと。そうですよねと言いました。いや、金型業界って違うのだよ、やらないんだよねと。納めたら納めっ放し、壊れたとか、調子悪いとか言われて、初めてメンテナンスに行くんだよねと言うのです。だけど、うちは違うのだよときたわけです。うちは昔から金型納めたら、必ずメンテナンスするようにしていたと。そうすると、先方の工場で非常に申し訳なさそうに、これは他社の金型なのだけど、増田さん悪いのだけど見てくれないかと言われてしまって、しょうがなくて見てやっているんだよと。こうきたわけです。我々それに対して、気づきようがあったのです。増田さんそれね、新しいビジネスになりますよと提案したのです。
どういうことかというと、要するに、工場のほうは求めているのでしょうと。でもやっているサービスってないのですよね。だから、それをやればいいんじゃない。それやりましょうと。他社カラーでも定期メンテというような、これをサービスにしましょうと、名前をつけました。金型ドックベストコンディションという名前をつけたのです。簡単なチラシでも提示して、これが清書した物です。これを全国の車関係のところにDMやったらどうなったかというと、もう応じ切れないぐらいのオーダーだという話です。
これは新分野です。メンテナンスを売っていく。金型分野でメンテナンス売る話じゃないですか。新分野進出をやったわけです。これだって、幾らかかったかというと、このチラシ代を除いてかかったお金ってゼロですよ。金型革命5ダウンだってゼロ。その一方で、重要なものを使っていて、何かと言うと知恵なのです。この知恵の部分を補うのが公の産業支援がやるべきことなのですよ。ところが今は現状どうでしょうかというような問題提起があるかもしれません。我々がやっていることはこういうことなのです。
 あるいは、このトヨコーさんというのは、これは富士市内のすごくアグレッシブな塗装屋さんなのです。もともとは、蒲原を拠点にしながら鉄橋とか、鉄柱とかを塗っていた人たちです。このトヨコーさん、豊澤さんてアグレッシブな社長なのですけども、何かもっと新しいことができないかと、ずっと常に常に考えている人なのです。
最初の気づきというのが、大きな工場からスレート屋根のふきかえ工事をよく頼まれたのだそうです。富士市内御存じのとおり、スレート屋根の工事がいっぱいあるわけなのですが、スレート屋根には、実は1つ問題がありまして、あの中にアスベストが入っているのです。ですから、単純なふきかえ工事にならないわけです。もう工場をとめ、周辺住民にもケアしながら、物すごい負荷かけてふきかえ工事やるのですけども、これは何とかならないかと、彼考えたのです。トヨコーさんの気づきがすごくて、これは技術開発もやるのですけども、特殊な樹脂を塗り込むことによって、アスベストを抑え込むとともに、スレート屋根の強度を増すという技術を考えたのです。それがまだ開発途中で我々のところに相談に来て、それを本格事業化したいというふうな相談だったのです。     
もう1件は、鉄柱のところ、鉄橋のところの塗装を頼まれたときに、塗装をするには、前の塗装をうまくはぎ取って、はぎ取った上で塗らないと、すぐさびてしまうのだそうです。このはぎ取る負荷が物すごいというのです。物すごいコストになっている。これも何とかならないかと考えた。この2点だったのです。
これは順番に解決してくるのですけども、僕らは何を提案したかというと、この特にスレートのところも、レーザーのところもそうなのですけども、日本国内でまだやっている人がない技術なのです。オンリーワンなのです。それをちっぽけな中小企業者の塗装屋さんがやっているのです。これを1社だけでやるのは、絶対無理なのです。だから、その技術の成果を上げるためには連携体を組まなくてはいけない。国の制度で物すごくいい制度があって、新連携という制度があるのです。異分野が連携して、新技術を開発するときに、国が認定をし、支援をしますよという制度なのです。これを使っていこうと。そのために優秀な中小企業基盤整備機構のプロジェクトマネジャーをつけまして、その連携体の仕組みをつくっていったんです。それを事業化するという形で、今この蘇生工法というのですけども、年間の売り上げが4〜5億ぐらいになったのではないですか。我々のところに相談に来た2009年の段階ではゼロでした。今は4〜5億円、レーザーのものも今大体、技術ができ上がってきて、電力会社と一緒に実験をやっているところなのです。これもだから新連携という国の制度をうまく使うのです。それをうまく使うことによって事業化していく。
これについても、基本的にかかったお金というのは、ほとんどないでしょうね。もちろん開発費はかかるけれども、そのスキームづくりのところで、我々自身が何かを投下したということは全くなくて、むしろ国の認定を持って、国の補助金はもらいましたが、でもこれを我々みたいな支援機でもうまくさばきながら事業化に持っていくというところ。そういうプロデュースをしていくところなのです。
このホト・アグリなんていうのは、浜松の時代にやった話なのです。女性起業家の話なのです。彼女は岩井さんという、非常に優秀な研究者で、当時は浜松ホトニクスさんがつくった光創成大学院大学の学生さんであられました。ホトニクスの社員でもあり、学生さんの彼女が開発した技術がすごくて、特殊なLEDの光をあてることによって、植物の栄養価を数倍にしてしまうという技術なのです。これは実験室では相当やられていますけども、事業化はなかなか難しかったのです。岩井さんはあるきっかけから、こうすればコストを下げて、同じような効果をもたらすことができるということに気がついたのです。それが試験的になのだけれども、安定的にできるようになったということで、どうしたらビジネス化ができるかというと相談だったのです。
もう本当にこんな袋を持ってきて、これは僕も浜松時代です。僕は、これこそが農商工連携だと思ったのです。経済産業省の農商工連携が制度化される半年前ぐらいだったのですけど、これこそが農商工連携のモデルだろうと考えて、農商工連携というのをスキームを使いながら、事業化するのは一人では絶対できませんから、そういう連携体をつくるということ。プロジェクトマネジャーたちに手伝わせながら、連携体を強固にして、この技術をビジネス化していこうというふうに走ったのです。
実は、これが農商工連携の国レベルの第一号認定です。これは浜松の企業なのです。なおかつ、そこから選ばれたベストプラクティス30という、ベスト30にも選ばれた案件なのです。そこで事業化を図っていくのです。連携体というのは、浜松の京丸園さんというような大きな農業生産法人だったりとか、LED光源をつくってくれる会社ですとか、こういう連携体を、こんなちっぽけなホト・アグリがこの農商工連携という制度を使ってつくるのです。スキーム、国の制度をうまく活用しながらできてしまうのです。今や、これがどうなったかというと、野菜については、実は競合が随分できて大変だった一方で、岩井さんはリッチリーフという商品だったのです。リッチリーフの栽培のときに害虫被害に随分遭ってしまったのです。この害虫被害が何とかならないか。光の技術というのを考えて、やはり連携体を使いながら、こういった虫取り機、害虫防除市場に参入したのです。これが実はヒットしました。これは年間数千万売れているのですけど、これをつくるに当たっては、彼女だけではできませんので、清水の会社とか、浜松市内の会社とか連携を組みながら事業化したというものなのです。
こんなこともうまくサポート、アドバイスをしながら、そういう制度を使って展開するというようなアドバイスをしていく。これも我々みたいな仕事なのだろうと思うのです。だから要は、もう今お話した話を振り返りますと、やはり我々みたいな公の産業支援機関、これは当然ながら税金を投入されているわけです。やるべきことは何かということをやっぱり考えたほうがいいだろうと。その前提というのは、今ある状態がどういう状態であるかということを大きく反省すべき、あるいは認識すべきだろうと思うのです。現状認識が必要だと。
国の認識というのは極めて厳しいところにあるというのは冒頭申し上げたとおりです。全くうまく機能していないというのが前提なのです。そういうことがあるから、国はこの8月、僕も法律策定のところからかかわりましたけれども、中小企業経営力強化支援法をつくりました。これは新たな担い手をつくるという話だったのです。既存の支援がうまくいかないから、新たな担い手を認定していこうということで、認定機関とか、全国で2,000選ばれました。これが金融機関と税理士法人を中心としたところだったのです。こういうような流れもある。
だけれども、まずもってして既存の機関をどういうふうに活用するかという問題はあるだろうと。なおかつやるべきことがどういうことなのかということをきちんと方向づけをすべきだと思うのです。残念ながら、僕が公の支援機関に入ってきたころには、公の支援機関がどうすべきかということの具体的なモデルというのがなかったし、具体的にやるべきことというのは明示されていなかったような気がするのです。そんな中で、目を覚ました部分があるだろうと。だから、現状を強く認識するとともに、やるべきことを明確にし、特定すべきではないかというのが、僕の考え方なのです。富士市産業支援センターにおいては、日ごろそんなことをやっているというところでございます。
 話し出すと何時間でもしゃべってしまいますが、そうすると質問を受けられませんので、とりあえずここで僕の話は締めまして、後は先生方からの御質問を受けながら、説明を加えていきたいと思います。どうもありがとうございました。

○吉川委員長
 ありがとうございました。
 以上で、小出様からの意見陳述は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 委員の方にお願いをいたします。質問はまとめてするのではなく、なるべく一問一答方式でお願いをいたします。
 それでは御質問・御意見がありましたら、御発言をお願いいたします。

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