本会議会議録
委員会補足文書
平成21年7月新型インフルエンザ対策特別委員会
参考人の意見陳述 県西部浜松医療センター 副院長兼感染症科長 矢野邦夫氏 【 意見陳述 】 発言日: 07/13/2009 会派名: |
○矢野副院長
おはようございます。
県西部浜松医療センター感染症科、矢野でございます。
本日は、新型インフルエンザに関する現場の状況に関して、お話し申し上げるとともに、これからどうなるのかということに関しても、ちょっと話を、触れたいと思っております。
先生方も既に御存じのとおり、浜松市のある高校で集団感染があって、そこの野球部員が感染し、その野球部員と試合をした相手方の高校にも新型インフルエンザが入り込んだという報告がございまして、高校は学校閉鎖とかいうこともやっております。今、こういったことが、日本全国で起こっておりまして、高校生が本来行くべき試合に行けないという状況もございます。彼らは、高校3年間、その試合のために人生をかけていた学生もおりまして、高校野球によりますと、それで一生涯変わるような状況もございます。このまま状況が進みますと、例えば、ことし、秋から冬にかけてもっと流行するはずなんですけれども――そのときのクリスマスはどうなるのかとか、初もうではどうなるのかとか、来年の入学試験なんかどうなるのかというと――経済とか若い人たちの人生に大きな影響が与えられますので、きょう私は、先生方に、今から日本よりも10年から20年進んでおります米国のやり方を少し紹介しながら、ほかの県はどうであれ、静岡県は正しい対応をしていただければと思っております。すなわち、アメリカのように、やるべきことをやって、やる必要がないことはやらない。無駄なことを省いてお金とマンパワーを必要なほうに振り向けるという、そういった手段を、少なくとも静岡県は徹底していただければというふうに思っております。
では、スライドを使いながら、お話し申し上げたいと思います。
きょうは、5つお話し申し上げたいと思います。時間どおり終わりたいと思っております。
まず、インフルエンザの封じ込めは困難でございます。これは、最近の動きを見れば、どんな方でもそれは御存じかと思いますけども、困難です。
それから、新型と季節性、よく昔から言いますソ連型とか香港型、これは私ども、迅速には区別できません。
それから、第2波、今は第1波なんですが、第2波が怖いので、その対応は必要です。市民に正しい知識を持たせること、これはぜひとも必要です。
それから、よく、高病原性と低病原性が混乱しております。米国は、これは見事に分けておりますが、日本はここがまだ、高病原性の対応が残っていて、大混乱を起こしているということでございます。
この1番のほうから順番にいきたいと思います。
封じ込めは困難でございます。4月21日に、初めてアメリカの南カリフォルニアにて――これが初めての報告なんですが――新型の豚インフルエンザが発生したといったのが、24日には米国とメキシコで集団感染があったと。これは土曜日の朝でしたけども、その4日後に、WHOがフェーズを3から4に引き上げて、そしてまた2日後に4から5に引き上げました。そして5月8日には日本に上陸したと。5月16日は国内感染があった。すなわち、世界で始まってから1カ月もたたないうちに日本に上陸して、そしてわずか10日後に静岡県第1例ということで、まず封じ込めというのは、どんなに頑張ったって、検疫したって、難しいことが明らかであります。WHOのフェーズは1から6まであるんですけれども、3だったのがあっという間に6まで飛んだということで、これは新型が始まれば、こうなることがすぐわかると思います。
実は、このスライドは、私の手元には世界地図になっているんですが、先生方にはドットしか見えません。ここに大体アメリカ大陸と思っていただいて、ここにヨーロッパなんですけども、ヨーロッパ、アジアなんですが、申しわけございません、これがアメリカでメキシコなんですが、このドットの数がふえるところだけ見ていただければなと思います。世界で38人、これが4月26日だったんですが、あっという間、1週間後に、もう、すっと世界に広がっているわけでございます。これが1週間ごとに、丸の大きさが、どんどん、どんどん大きくなってきてまいります。現在でも、世界で10万人以上、日本でも2,000人を超えている状況であります。日本も2,000人と言ってるんですが、今、全員を把握しておりませんので、実際にはその数倍いるんじゃないかなと思っております。とにかく、私が申し上げたいのは、封じ込めは困難ですので、そういったことにマンパワーを割くのは早くやめるべきであるというふうに思っております。ですから、学校の閉鎖とかいうことも、有効性は確認されておりませんので、これに関しては、症状がある方は学校に来ない、でも症状がない人は学校に来てもいいんじゃないか、これに関しては、後でまた触れてみたいと思います。
新型と季節性、香港型とか従来型なんですが、迅速には区別できません。我々は、患者さんが来られたときに、鼻の奥をこすって、液をとってきて、こういった迅速キットをやります。これをやりますと、大体15分で結果が出るんですが、この人の場合はAということはわかるんですが、この感度は大体50から70%なんです。すなわち、10人のインフルエンザの方がいて、そのうちの3人から5人は見落とします。これが陰性であるからといって、インフルエンザでないということはとても言えません。ですから――この検査自身が完璧ではないことと――これはインフルエンザがAであることはわかりますが、新型か従来型かは全くわからないということで、私どもは、検査をもって新型であることもインフルエンザであることも確定することはできません。一般の方々は、これをやれば、陰性であれば安心して、家に帰って手洗いもしない、マスクもしないということをされておりますが、それは危険なことであることの啓発が要ると思っております。
症状に関しては、一般のインフルエンザと新型は全く変わりません。下痢とか嘔吐の方もいますけれども、全くこれは識別できませんので、我々は区別できないということを、まず知っていただきたいと思います。
あと、第2波が怖いです。今、第2波の準備をしないといけないです。これ、どのように怖いかと言いますと、実は過去100年の間に、世界で4回の大流行が起こっておりまして、これはスペイン風邪のときにコペンハーゲンで亡くなった方の全部を100%とすると、第1波で何人亡くなったか、第2波で何人亡くなったかという表なんです。このスペイン風邪では、コペンハーゲンでは第1波で亡くなった方は全体のわずか5%しかございません。第2波で60%が亡くなってます。すなわち、第2波は第1波の12倍、人を殺しました。香港風邪は、第1波は15%で、第2波で85%が亡くなっております。すなわち、第2波で5倍、人を殺してます。19世紀では、ロンドンであった大流行なんですが、第1波よりも第2波のほうが、4.5倍人を殺したんですね。アジア風邪だけなんですね、第1波が人をたくさん殺したというのは。ですから今回、確率からいきますと、ことしの秋から冬にやってくる第2波のほうの対応を本当に正しくしないと、犠牲者が出る。無駄なことをすると、経済的なダメージが大きいということになるかと思います。
そこで、市民に正しい知識を急いで持たせる必要がございます。インフルエンザがどのように感染するのかということなんですけれども、飛沫ですね。口とか鼻とかから飛び出してくる飛沫とかを吸い込んで感染するのと、手で感染するということの再教育が要るのではないかなと思ってます。これ、口から飛び出す飛沫の写真なんですが、大体2メートルぐらいまで飛びますので、こういったせきをしたりくしゃみをしたりする人は、マスクをするということの啓発が必要でございます。また、このような症状がある方に2メートル以内に近づく人は、やはりマスクをしないと自分が守れない、こういった飛沫の予防ですね、これが非常に重要であります。
もう1つは、手洗いに関してなんですけども、テーブルの上とかそういう環境表面に、ウイルスが――新型インフルエンザが付着していることがございます。例えばドアノブなんかにもくっついているんですが、一般の方々は、ドアノブなんかをさわりますと、手にウイルスが付着して、その手で目とか鼻の粘膜をこすって感染するわけであります。このように、手が感染経路になっております。
こんな実験がございました。これは、ライノウイルスという鼻風邪ウイルスを、コーヒーカップの柄の部分に塗っていくんです。このコーヒーカップの柄を握って、健康な方々がその手で目と鼻をこすってみたら、50%の人が風邪を引いたという結果もあります。すなわち、こういった環境表面が感染経路になります。そこで、ウイルスがどの程度環境表面に生きることができるかということを知っておく必要がございます。インフルエンザは、でこぼこの表面に8時間から12時間、平滑な表面に24時間から48時間生きてます。これを知ることは、大変重要であります。例えば、きのうの今ごろ、私が新型インフルエンザの方と話をして、その方の口からとか鼻からのしぶきが私の服についたとしても、今の私の服は大丈夫です。というのは、24時間経過しておりますから。ところが、新型インフルエンザの方の鼻水とかが手について、ドアノブにさわった場合、そのドアノブは2日間感染源になるわけであります。ですから、その環境表面にどのくらい生きることができるのかということを、教育する必要があります。
例えば、冬になりますと、健康に大変気をつけている方々がいらして、帰れば、きょうは何となく風邪ぎみだから念のために病院に行こうといって病院に来られるんですけども、でも、病院では本当に風邪を引いた人たちが待合室で待っていて、鼻をずるずるとさせてて、ティッシュペーパーで鼻をかんでいる。ティッシュペーパー二、三枚なんか瞬時に突き抜けて、指にウイルスが付着しています。診察室の内側から、だれだれさん、お入りくださいと言われまして、はいと言ってドアノブ握ります。ここにべたべたべたべたっと、ウイルスが付着するわけでございます。ここに健康な、風邪を引いたかもしれない方の順番がやって参りまして、だれだれさん、お入りください、はいと言って、ここを握りますね。指にライノウイルスを付着させて、無意識のうちに目と鼻をこすって風邪を引くんです。無意識というのもデータが出ておりまして、ある講演会がありますと、その出席者の3分の1が、1時間の間に無意識のうちに目と鼻をこするんですね。目は、2.7人に1人が目をこするんです。このような感覚なんですね。例えば、満員電車に、新型インフルエンザの流行時期に乗ってしまった。そうしたならば、隣りに立った人がごほごほっとせきをした。そうすると、あのしぶきが飛んできて自分が吸い込んで風邪を引くかもしれない、新型インフルエンザにかかるかもしれないということで、マスクする方もおられますけども、もっと重要なのは、今、自分がつかまっているつり革でありまして、そこにほぼ確実にウイルスが付着してますので、手を洗わないと風邪を引くわけでございます。
例えば、先生方が御自宅で掃除をされるときはどうされておりますでしょうか。多分、こうされていると思います。掃除機を出してきて、床とか畳などの掃除をする。そして、周りを見て、テレビの上なんかにほこりがたまっていると、ダスキンなどを用いて除く。2番を先にする方もおられるかもしれませんが、先生方が御自宅で掃除をする理由は、2つの理由のうちのどっちかなんです。1つは、あしたお客さんが来るからですね。もう1つは、もう耐えられないからなんですね。感染に対する考えで掃除はしておりません。新型インフルエンザが流行してるからということで、玄関のドアノブふく方ってなかなかおられないんですね。そんな感覚を、皆さん持っていただかなくては困るんですね。アメリカでは、よくさわるところにターゲットを置けと教育してるわけですね。ですから、これから新型インフルエンザのときの掃除の仕方は、ドアノブとかテーブルとか、そんなところにターゲットを置いて、床とか天井とか壁、さわらないんですね。先生方は、きょう、床は何回さわりましたでしょうか。さわっておられないですね。天井なんかさわるわけないんです。そんなところではなく、先生方が今、手を置いているテーブルの上とかドアノブにターゲットをあわせた掃除をしましょうという啓発が必要であります。
そこで、咳エチケットというのが非常に重要であります。せきをする人には、ティッシュペーパーで口と鼻を覆ったり、それからマスクを装着しましょう、そして手洗いをしましょう。日本人は、マスク、意外とするんですね。でも、手洗いは意外と忘れます。あと、症状がある方からは1メートルの距離を開けましょうと言いますけども、1メートルの距離がどのくらいかという認識によるんですね。大体、我々の病院では、このように写真をあちこちに張ってあって、1メートルはこのくらいなので、これ以下に近寄るときには気をつけようと教育してるんですね。エレベーターなんかですと、1メートル以内なので、ここでせきをしてる人がいたら反対側を向きましょうなんて言ってますけども、このように、1メートルの距離がどのくらいかということを啓発しないといけない。あと、マスクも、ポスターもこのように、あちこちに張って啓発をしてます。マスクをして、手洗いをしましょうと言っているわけであります。
あと、咳エチケットは病院だけではなくて、自宅とか職場でもしていただいて、職場での集団感染を防ぐということも啓発しないといけない。
あと、これはぜひとも、これからの赤ちゃんを守るために啓発しなくてはいけない内容なんですが、よく、新型インフルエンザに罹患したときに、自分の赤ちゃんにミルクをやってはいけないと思いこんでいるお母さん、多いです。医師も、そんな医師が多いんですね。アメリカは逆で、こう言ってます。ミルクを与え続けよと。お母さんが新型になっても母乳の中にはウイルスいないんですよ。ただ、乳房は汚染してますので、お母さんが赤ちゃんに母乳を与えるときには、手を洗ってマスクをして、乳房を洗剤でふき取ってきれいにして、そうしてミルクを与えてくださいと。母乳の中には、免疫を赤ちゃんに与える非常に重要な栄養が入ってます。これをさぼりますと、赤ちゃんに免疫を与えられませんので、何が何でも母乳を与えないといけないということで、乳房は汚染しているが、母乳は汚染していないことを徹底的に啓発する必要があります。
妊婦さんが新型になったときに、タミフルを内服させても赤ちゃんは大丈夫かということなんですが、日本は妊婦さんへの安全性が確認されていないからと書いてあります、効能書きには。でも、アメリカでは、妊婦にタミフルを飲ませろと教育してます。というのは、妊婦さんは重症化するからなんです。もともと、豚インフルエンザだったんですが、豚の場合は、インフルエンザが流行すると、豚が流産するんです。流産のあらしが吹き荒れることがわかってます。大体10から15%の豚が流産します。なので、今回のインフルエンザは妊婦さんがターゲットになりますので、妊婦さんにはぜひともタミフルを飲んでいただきたいと思っております。安全性が確認されていないというのは、単に研究が行われていないだけで、本当に危険であることがわかっておりません。むしろ、妊婦さんが感染すると重症化するので、アメリカは飲ませろと、10年進んでいるアメリカはそう言っています。あと、熱が上がりますと、おなかにいる赤ちゃんの神経系がやられます。ですから無脳児が生まれたり、下半身麻痺の子供さんが生まれたりしますので、妊婦さんにはぜひとも飲ませるように教育しましょうということも、一般市民にも、それからドクターたちにも啓発する必要があります。このタミフルを飲ませる必要があります。
1歳未満の乳児が感染した場合、タミフルを飲ませてもいいのか。日本の効能書きを見ますと、1歳未満の赤ちゃんには安全性が確認されていないと言ってますが、アメリカでは逆です。一般に1歳未満は重症化するので飲ませろということを言っております。
あと、インフルエンザワクチンの目的なんですけれども、これは、一般市民は、自分が感染しないために打ってます。我々医療従事者は、患者さんへの感染源にならないように打ってます。ですから、よく市民病院が職員に無料でワクチンを打とうとすると、医師とか看護師は税金を使って打とうとしてる、けしからんと言われますけれども、そうではなくて、打つ目的が違いますので――市民病院等では患者さんへの感染源にならないために打ってますので――ぜひともそんなことは言われないようにしていただきたいと思いますし、今度は新型インフルエンザのワクチンが始まると思いますが、恐らくそのときに医療従事者が最初に打たれますけれども――その目的は――我々が感染して、患者さんに感染させないためというのが最大の目的であるということを、また啓発したいと思ってます。
あと、妊婦さんにワクチンを打っても大丈夫かということなんですけれども、妊婦は重症化しやすいし、胎児を守らないといけない。お母さんにワクチンを打っておくと、生まれた直後の赤ちゃんに、お母さんが胎盤を通じて抵抗力を与え、守られますので、ぜひとも妊婦さんにワクチンを打ってほしい。アメリカでは打てと言っています。日本でも、私どもの病院では、職員なんですけども、ワクチンを当然のごとく、打っているわけでございます。
あと、肺炎球菌なんですが――実は日本とアメリカで感染症の世界が違うというのが、肺炎球菌というのを――米国では65歳以上の白人の60%接種してます。黒人とヒスパニックは40%です。日本は肺炎球菌ワクチンの存在すら知らない方が結構多いんですね。というのは、日本の65歳以上の接種率は5%だからであります。どうして肺炎球菌ワクチンがここに出てきたかと言いますと、スペイン風邪でたくさんの方々が亡くなった理由は、インフルエンザの後に起こった肺炎で亡くなっております。その肺炎の大きな理由が肺炎球菌なんです。それを防ぐことができるワクチンができておりますので、ぜひとも我々は打つべきだと思っております。これはニューモバックスというワクチンなんですけれども、これを――日本ではこれは自費になってしまいますけれども、保険診療に関しては、2歳以上の脾臓のない方には打てますけども――そういった方々にぜひとも打っていただきたいというふうに思っております。
既に静岡県では、公費助成の市町が4つありました。長泉町と裾野市と清水町と吉田町の4つの市町が、公費助成をしているということでございますので、そういった先進的な市町もございます。これは、県全体でできればなと思っております。第2波で、多くの人が亡くならないために、このワクチンの接種をしたいと思ってます。浜松医療センターでは、この接種のキャンペーンを始めました。
あと、高病原性、低病原性を混乱しないということなんですけれども、高病原性は全身感染症で、死亡率は60%です。低病原性は呼吸器感染症であります。今回の新型は低病原性であります。今、東南アジアで流行している鳥インフルエンザは高病原性なんですが、あれが人間に大流行することは、なかなか考えにくいので、ですから、低病原性である限り、余りの過剰な対応は、ぜひとも避けていただきたいと思います。これは高病原性のインフルエンザにかかった鳥の写真なんですが、腸管出血だとか気道出血だとか大変なことになります。ただ、これは起こらないと思います。ただ、低病原性でもこれはあり得ます。これは胸のレントゲンなんですけども、心臓が真ん中にありまして、肺があるわけなんですけども、これがどんどん、どんどん悪くなって、肺炎になって死亡してしまうと。こういうのを防ぐために、肺炎球菌ワクチンをぜひとも接種しておきたいというふうに思っております。
現場で困ったことを幾つか申し上げて、終わりたいと思っております。
新型が今回始まった直後に、浜松市の高校で、大阪にバレーの試合に行った高校集団がありまして、先生が念のために、調子の悪い子は手を挙げてと言ったら、二、三十人の生徒が手を挙げて、急いで浜松医療センターに来ました。我々、生徒一人一人に聞いたんです。きょうはどんな症状ですかと言ったら、何も症状がないと言うんですね。なぜ来たのと言ったら、先生が、症状がある人は手を挙げてと言ったので、何となく最近、スポーツし過ぎて疲れたからとかって。我々は、来たので、親御さんも納得しないので、一人一人に無駄とわかっていながら、当初だったので、鼻の穴をこすって、インフルエンザキットをむだに30個消耗いたしました。こんなことが起こっておりました。
あと、寮の同僚がインフルエンザになったから来たという人がいました。この方は何も症状がございませんでした。だから、検査はしても無駄だよと言ったんですが、この方はだんだん怒り始めまして、トラブルが嫌だったものですから、無駄にインフルエンザキットを1個消費して、陰性であることを確認して帰っていただきました。
ふだん熱を測っていなかった中年の女性なんですが、午後になれば皆さん活動されます。37.4度なんて平熱なんですが、ふだん測っていない方が、たまたま測って37.4度ということで病院に来られました。なかなか言っても納得していただけませんでしたので、私ども、また無駄にインフルエンザのキットを消耗いたしました。
逆に、最近だるいということで病院の診察室に来られた方がおられて、中に入ってくると熱があるんですね。どうしたのと言ったら、熱があるから来たと言ったんですが、たくさんの人が待っている外来の待合室でマスクもせずに、手洗いもせずに待っている方がおられました。
結局、このような無駄なことをやっておりますと、我々は、新型インフルエンザで症状もないような、今の高校生の方々のために、いつも見ている重症患者を待たせて、軽症の、インフルエンザでもないような方々のところに行って時間を消耗しております。こんなことをすると、本当に医療が必要な方々の命が守れません。
こんなこともありました。インフルエンザの陽性になったと。関西地域に行って陽性になったということで、保健所に受診せよと言われたから受診したんだと。我々は当然診療したので、診察代を請求しましたら、物すごい怒ったんですよ。その方は払わんと言って、払わずに帰宅いたしました。だから今、保健所には、浜松医療センターで受診をしたら、医療費は払わなくちゃいけないよと一言言ってから送ってくださいとお願いしておるわけでございます。
あと、小学校、中学校に皆勤賞というものがございます。あれは、学校へ来ても、保健室さえ行けば出席になります。熱があっても、症状があっても、とりあえず学校に行って、出席だけ獲得して、保健室へ行って帰ってくるわけですね。我々は、症状もないような生徒に対して、学校閉鎖をして、大会に出席させないことをする一方、症状があるかもしれないような生徒さんが、皆勤賞をとるために学校に来てるわけですね。こんなことをしていては、冒頭に申し上げた、本当にすべき感染対策をせずに、意味のないことをやっていることを、今はぜひとも、第2波が来る前に啓発しないといけないというふうに思っております。
最後に、まとめなんですけれども、新型インフルエンザの症状は多彩なので、新型のみを簡単に区別できません。封じ込めできませんので。あと、ことごとく入院させますと、重症患者の入院ができなくなります。我々の外来にもいろいろな方が、肺がんの方とか白血病の方とか来られております。その治療ができなくなります。また、特定の病院が担当せよと言うと、その病院がパンクいたします。その救急システムが崩れます。救急車は受け入れをとめます。ほかの診療ができません。あと、高病原性、低病原性と言いますけども、後からわかるのであって、想定できませんので、これに対する過剰な対応を、今する必要はないというふうに思っております。
以上でございます。どうも、御清聴ありがとうございました。
○大橋委員長
ありがとうございました。
以上で、矢野副院長からの意見陳述は終わりました。
それでは、これより質疑応答をしてまいりたいと思います。
御質問・御意見等がありましたら、御発言願います。
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